「協調望めず」「ロ大統領に魅了」=トランプ氏対応に苦慮―前独首相回顧
時事通信 / 2024年11月24日 14時7分
【ベルリン時事】ドイツのメルケル前首相が16年間の首相在任時を含む半生を振り返った回顧録が26日、出版される。一部を先行公開した週刊紙ツァイトによると、対峙(たいじ)した1期目のトランプ次期米大統領に関して、「国際協調に向けて力を合わせることはありえない」「ロシアの(プーチン)大統領に非常に魅了されている」などと率直な印象を明かしている。
2017年3月のトランプ氏との初会談の回想では、報道陣のために握手を促したが無視されたエピソードを紹介。日本の安倍晋三首相(当時)とは「19秒も握手していた」と苦々しく振り返った。またトランプ氏は国際関係を不動産ビジネスの視点で捉えており、「一方の成功は、他方の失敗」と見なしていると嘆いた。
米独関係は当時、北大西洋条約機構(NATO)の防衛費負担の偏りや貿易摩擦などで冷え込んでいた。トランプ氏との対応に苦慮していたメルケル氏は、フランシスコ・ローマ教皇に「根本的に異なる意見」にどう向き合えば良いか助言を請うたという。回顧録の脱稿時は今月の米大統領選の結果が出ておらず、「(民主党候補の)ハリス氏の大統領選出を心から願う」とつづっていた。
メルケル氏に対しては、ロシアへの融和政策がその後のウクライナ侵攻を招いたとの批判もある。2008年4月のブカレストでのNATO首脳会議でウクライナ加盟に反対したことについて、同国のゼレンスキー大統領から名指しで非難された。しかしメルケル氏は、プーチン大統領がウクライナ加盟実現を座視するとの考えは「幻想だ」と反論。加盟を急げば、無防備な状態で侵攻を受ける恐れがあったと正当化した。
回顧録は「自由」と題され、700ページ超に及ぶ。メルケル氏は調整能力の高さや安定感から「欧州の盟主」と評されたが、退任後は対外的な発言を控えており貴重な証言となる。日本語訳も刊行される予定。
[時事通信社]
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