「被爆者の物語に出合って」=血まみれの学生服が伝える原爆―ノーベル平和賞に期待寄せ・都内の資料館
時事通信 / 2024年12月11日 5時10分
焼けた瓦、血まみれの学生服―。被爆の苛烈さを物語る遺品や関連書籍2000冊超が「八王子平和・原爆資料館」(東京都)に収められている。「無残に未来を奪われた人たちの物語に出合って」。運営に携わる人たちは、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞を機に来館者が増えることを願う。
八王子市役所そばの民間ビル2階。1997年にオープンした資料館には、被爆直後の街を捉えた写真や、高温で表面が泡立った被爆瓦などが所狭しと並ぶ。
展示の中には、当時14歳だった豊嶋長生さんの学生服もある。
広島県立広島第二中学校(広島市)の1年生だった長生さんは、学徒動員の作業中に爆心地付近で被爆。全身に大やけどを負って帰宅し、翌7日息を引き取った。身に着けていた学生服の上下やシャツなどには焼け焦げた跡や血の染みが、79年たった今も見て取れる。
資料館は「原爆のむごさを克明に伝えている」と、学生服を外部の平和イベントなどに積極的に貸し出しており、18日からは赤十字国際委員会(ICRC)などが横浜市で主催する企画展で公開される。
広島で被爆し、後に八王子市に住んだ元中国新聞記者の故永町敏昭さんの蔵書を中心とする原爆関連本も充実している。他では手に入らない珍しい資料もあり、研究目的で来館する学生や大学教員も多い。
だが、開館から27年がたち、長く運営を支えてきた被爆者や元市職員らは高齢化。資料の劣化への不安も募る。そんな中、同市在住の一橋大大学院生、佐藤優さん(23)が収蔵品の保存整理に手を挙げた。「資料が失われてしまっては、被爆者たちの『証言』がなかったことになる」との危機感からだ。
「日本被団協のノーベル賞受賞は、平和の思いを広げるチャンス」と語った佐藤さん。「被爆者たちはどういう人で、どう生きてきたのか。この資料館で被爆者の物語に触れてほしい」と力を込めた。
[時事通信社]
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