「それでも珠洲に」=中規模半壊、大雨で浸水も―幼子抱え、再建目指す一家・能登地震
時事通信 / 2024年12月31日 15時22分
能登半島地震で、石川県珠洲市の藤部巴さん(33)は母と長女と約120キロ離れた町に避難した。自宅は津波に襲われ、2024年9月の豪雨にも見舞われた。「それでも珠洲で暮らしたい」。避難先で出産した長男も連れ、夫の待つ地元に帰ってきた。
1年前の元日は、同居の両親と、長女ふみちゃん(6)と市外に出掛けていた。地震後、珠洲市宝立地区の海近くにある木造2階建ての自宅には大量の海水が押し寄せ、1階は泥まみれになった。中規模半壊だった。
同県野々市市に避難した巴さんたちは、民間の賃貸物件を活用したみなし仮設住宅に入居。珠洲市上下水道係の夫裕太さん(37)は浄水場や配水管の復旧作業に当たるため市役所近くのアパートに住み、週末になると車で約3時間かけて仮設に通った。6月10日、長男麦ちゃんが生まれた。
「なんでここにおるの? 早く帰りたい」。ふみちゃんは時折、そう訴えた。当初は避難生活のストレスから、肌が荒れるなどしていたという。巴さん自身も「珠洲の方が落ち着いて過ごせる」と考えていた。8月末、裕太さんがいる珠洲に戻った。
3週間後、記録的な大雨が降った。自宅は床下浸水し、再建は遠のいた。秋には周辺で被災家屋の公費解体が進み、生まれ育った町の風景は一変。更地が目立つようになり、気さくに声を掛けてくれた近所のおばあちゃんの姿も見なくなった。
それでも、珠洲で暮らす選択をした。平日は両親が入る仮設住宅にふみちゃんを預け、裕太さんと約5キロメートル離れたアパートで麦ちゃんを育てる。夜は仮設に行き、一家6人で食卓を囲む。
初雪が降った12月8日、津波の痕が残る自宅に一家が集まっていた。汚れた内装の張り替え、水圧で壊れた扉の修理、給湯器の交換―。改修に向けた話し合いが続いた。春には、ふみちゃんが小学1年生になる。「人は少なくなっちゃったけど、伸び伸び育ってくれれば」と巴さん。初雪は翌日、雨に変わり、空に虹がかかった。
[時事通信社]
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