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アングル:株式と債券、世界的な品薄感は来年も解消期待できず

ロイター / 2020年12月25日 7時11分

 12月23日、株式と債券はいずれも世界的に品薄状態が続いており、来年も変化が生じる気配は乏しい。フランクフルトの証券取引所前で2019年2月撮影(2020年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

[ロンドン 23日 ロイター] - 株式と債券はいずれも世界的に品薄状態が続いており、来年も変化が生じる気配は乏しい。企業と中央銀行がそれぞれの市場で大口の買い手として、引き続き一般投資家の直接の競争相手になるだろう。

こうした需給ひっ迫は、10年にわたる株式の強気相場を維持し、債券利回りを超低水準に抑え込む一助になってもおかしくない。

ディールロジックのデータからは、一連の華々しい新規株式公開(IPO)や、タイミングを狙って急いで二次上場する動きが相次いだことを受け、今年の株式発行を通じた資金調達額が約1兆ドルに達したことが分かる。しかしそうした新株は供給不足緩和につながらなかった。合併・買収やプライベートエクイティ(PE)企業の取引が市場から株式を吸収し続けたからだ。

JPモルガンのアナリスト、ニコラオス・パニギルツォグロウ氏の見積もりに基づくと、来年の株式需給は約1兆1000億ドル分だけ需要超過になる。需要が今年に比べて6000億ドル増え、自社株買いとPE主導のレバレッジド・バイアウト(LBO)によって供給は5000億ドル減ってしまうという。

自社株買いは今年、規制当局の指示と、企業自身が資本を確保する必要があったことから抑制された。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(S&P/DJI)のデータによると、米国の7-9月期の自社株買いは前年同期をおよそ42%下回った。

しかし最近、米連邦準備理事会(FRB)がストレステスト(健全性審査)の結果を踏まえて銀行の自社株買いにゴーサインを出し、早速幾つかの大手行が来年の自社株買い計画を発表。S&P/DJIのアナリスト、ハワード・シルバーブラット氏は、消費の回復や新型コロナウイルスワクチン登場、さらには低金利が企業支出拡大のきっかけになる可能性があり、それは自社株買いの増加につながるはずだとみている。

<需要拡大>

需要面でも品薄に拍車を掛ける要素が出てきている。それは新型コロナ対策のおかげで手元資金が潤沢になった多数の個人投資家が、ロビンフッドなどの投資アプリ経由で株式取引に参入していることだ。シタデル・セキュリティーズの試算では、株式売買に占めるこうした個人投資家の割合は、昨年の10%から今年は25%にまで上昇した。上場初日の銘柄が高騰する裏で、彼らが活発に買っているケースも多い。

サクソバンクの株式戦略責任者ピーター・ガーンリー氏は「株式の好リターンと市場の勢いがどんどん参加者を呼び込んでいる」と語り、今年に入って顧客数が記録的な高水準に達したと付け加えた。

<中銀の買い入れ拡大>

需給要因の株価押し上げ効果についてはさまざまな意見がある。パニギルツォグロウ氏は、直近でこれほど需給格差が大きくなったのは2018年以来で、当時世界の株価は25%上がったと指摘する。

ただリーガル・アンド・ゼネラル・インベストメント・マネジメントの資産配分責任者エミール・ファンデンハイリゲンバーグ氏は、新型コロナウイルスワクチンと景気回復、中央銀行の流動性供給の方が株価押し上げの寄与度が高いとし、需給要因はわずかなプラス効果にとどまるとの見方を示した。

品薄感は、国債市場でより強烈に感じられるかもしれない。各国政府の借金は過去最大規模に膨れ上がっているものの、その大半は中銀による買い入れプログラムに吸い込まれていく。英国、ユーロ圏、日本においては、今や国債発行残高のおよそ半分を中銀が保有している。

さらにユーロ圏、スウェーデン、オーストラリア、英国の中銀は最近、債券買い入れの拡大を表明しており、主要中銀の中で比較的債券保有比率が低い米連邦準備理事会(FRB)も今後購入額を増やす可能性がある。

そうした事態についてシティのアナリストチームは、主要先進国で来年投資家の手に入る債券は全く増えないという意味だと解説する。特にユーロ圏の場合、来年のユーロ建て債の民間保有減少幅は約7500億ユーロと、今年見込みの4600億ユーロを上回るという。

ゼネラリ・インベストメンツのシニア債券ストラテジスト、フロリアン・スペーテ氏は、来年のユーロ圏債券の供給は差し引きで900億ユーロ減ると予想。今年見込みの1250億ユーロ減よりややましな程度であり、「純粋な供給の観点から、利回りが非常に低い水準にとどまる1つの理由になる」と分析した。

一方で、社債を買えばよいと期待する向きにも残念な話がある。JPモルガンの見通しでは、米企業が来年供給する高格付け債は、今年に比べて5割も減ってしまうようだ。

(Sujata Rao記者)

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