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焦点:日本の財政再建は時間との戦い、高齢化で対外純資産縮小へ

ロイター / 2021年12月24日 14時13分

 12月24日、日本政府の2022年度一般会計予算案は、社会保障費や防衛費が膨らみ10年連続で過去最大となった。都内で8日撮影(2021年 ロイター/Issei Kato)

金子かおり

[東京 24日 ロイター] - 日本政府の2022年度一般会計予算案は、社会保障費や防衛費が膨らみ10年連続で過去最大となった。財政規律の緩みが指摘される一方、一部の途上国のように長期金利が急上昇することもなく、それが国債発行額の累増につながるという日本的な安定を形作っている。

背景にあるのは、世界一の規模を誇る対外純資産残高による「信用」の存在とエコノミストは指摘する。ただ、止まらない少子高齢化の流れによって、その信用は将来的に大幅に縮小するとみられ、日本に残された時間は10年から20年との見方もある。限られた時間内に成長パワーを取り戻し、財政健全化の道筋を描くことができるのか。日本の財政は、時間との戦いを強いられている。

<緩い補正予算の規律>

日本経済は、新型コロナウイルスの感染拡大による打撃から立ち直っておらず、コロナ前の国内総生産(GDP)水準を回復していない。このため政府は35.9兆円の歳出規模となった2021年度補正予算を成立させ、岸田文雄首相はコロナ禍からの経済再生を優先し、その上で財政健全化を図るとの方針を繰り返してきた。

だが、エコノミストなどからは財政規律の緩みを指摘する声が上がっている。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の稲留克俊・シニア債券ストラテジストは、当初予算は厳しく査定されるが、補正予算はそれほどではないため歳出が膨らみやすいと指摘。「補正予算は審議時間が短いためか、いろいろなものを入れ込む傾向が続いている印象がある」と述べる。

歳出を賄う財源は多くが国債発行で占められ、2000年度に367.5兆円だった普通国債残高は、2020年度に984.8兆円と倍以上に膨らんだ。今年度末には初めて 1000兆円を突破する見通しだ。

日本の債務残高(対GDP比)は2020年末で266%となり先進7カ国(G7)の中で最悪の水準だ。

<財政赤字膨張と日本の「なぞ」>

財政赤字の膨張する国では、中南米の国々が代表例だが、長期金利が大幅に上昇し、国家予算の編成に支障をきたすケースも少なくない。ところが、日本では日銀によるイールドカーブコントロール政策(YCC)の下で、長期金利はゼロ%前後に誘導され、市場が混乱する様子は全く見えない。

この日本の「なぞ」について、ある外資系証券の関係者は「確かに日銀のYCCの存在が大きいが、その裏には日本が抱える膨大な対外純資産の存在がある。この対外純資産があるため、海外勢が日本国債売りを仕掛けようにも、成功すると思って追随する投機筋が現れない」と説明する。

財務省によると、日本の企業や政府、個人が海外に持つ資産から負債を差し引いた対外純資産残高は、2020年末で356兆9700億円となり、30年連続で世界最大の対外純資産国となった。今は、国内の余剰資金で政府の財政赤字を吸収できている状態だ。

だが、日本では少子高齢化が進み、人口構成比の大きい「団塊の世代」のほとんどが75歳以上になる2025年以降、医療費や社会保障費が急増し、マクロ的には対外純資産も徐々に取り崩され、将来的にはこの「お宝」が枯渇する時期がやってくるとみられている。

対外純資産がなくなる時期について、正確な試算を出している例はないが、複数のエコノミストは今後、10年から20年の間に対外純資産が食いつぶされる可能性が高いとみている。

このため、今のうちに財政再建の道筋を描くべきだと力説する専門家も少なくない。東短リサーチの加藤出・チーフエコノミストは「対外純資産の残高が大きいと日本への信頼が失墜しにくいかもしれないが、だからといって財政赤字を無制限に増やせるわけではない」と説明する。「日本は高齢化・人口減少が進んでいくので、先行き納税を中心的に担う世代の人口が減っていく。どう考えてもサステイナブルな財政状況ではない」とその理由を挙げる。だからこそ「中長期的な財政再建のターゲットを設け、取り組む必要がある」と述べている。

<あいまいなPB達成時期>

ムーディーズ・インベスターズ・サービスは今年11月、日本の格付けをA1に据え置き、見通しは「安定的」を維持した。その背景として、民間貯蓄を理由に挙げている。「日本政府の多額の債務が、新型コロナウイルス対策向けの大規模な財政出動によってさらに増加したが、民間貯蓄の増加と強いホームバイアスが支える安定した調達条件によって、高い債務水準を中期的に支えられるだろう」とコメント。

一方で「人口高齢化が長期的に財政・経済面に与える影響に対処するための改革の方向性は、不明確のままである」とした。

もし、日本が格下げとなれば、国の信用が落ちることになり民間金融機関の格付けも下がる可能性がある。その場合、邦銀のドル調達コストにも影響し企業の経済活動にも影響する懸念がある。

岸田首相は今週の会見で「財政は国の信頼の礎であり、中長期的に財政健全化に取り組む必要があると考えている」と述べ、財政悪化を放置しない姿勢を示した。

ただ、政府は今年の骨太の方針で2025年度基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化目標を堅持した一方、年度内に目標年度を再確認するとした。先送りの布石ではないかとの思惑に対し、岸田首相は会見で「文字通りです」と答えだけで、それ以上の明言を避けた。

エコノミストの中には、感染症の影響への対応や来年の参院選を考慮すると、財政緊縮には向かいにくいという声が根強くある。

<国債バブルと日銀の出口政策>

もう1つの難題は、日本でも上がり始めた物価と金融政策の行方、国債費との関連だ。総務省が24日に発表した11月全国消費者物価によると、コアCPI(除く生鮮)は前年比0.5%の上昇だった。携帯電話料金引き下げ効果が1.5%ポイント程度あり、それを除くと日銀が目標にしている2%上昇にほぼ到達したことになる。

日銀は現行の超緩和政策の継続を強調しているが、物価が上がれば金融政策の調整時期もいずれ来ることになる。

この点に関連し、東短リサーチの加藤氏は、政府の財政政策は、暗黙のうちに日本銀行が低金利政策の継続を前提にして行っているともいえると指摘。「今後、本格的に日銀が出口政策に向かう際、財政との摩擦が出てくる可能性がある。逆にいうと、これだけ政府の国債発行が増えると日銀の出口は容易ではない」と見通す。

加藤氏は「今、国債バブルなので、長期的にみれば日本の財政はサステイナブルではない。いまだに10年国債の金利がゼロ%近辺というのは、中央銀行も加担したバブルになっている。バブルはいつ壊れるか見通すのは難しい」と述べた。

いちよし証券の上席執行役員チーフエコノミストで元日銀幹部の愛宕伸康氏は「政府の国債増発分を日銀が金融機関を通じて吸収している。その結果、長期金利が安定しているので、財政赤字に警鐘を鳴らす市場の機能を日銀が結果的につぶしてしまっている」と分析。

財政規律への姿勢が緩んでいる状況について「欧米のようには日本でインフレが起きていないし、長期金利も落ち着ているので、財政を拡大しても問題ないという弛緩状態なのだろう」と語った。

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