アングル:灰に苦しむトンガ、大噴火から1週間 癒えぬ心の傷
ロイター / 2022年1月24日 19時7分
1月23日、海底火山の大噴火と津波の襲来から1週間、南太平洋の島国トンガでは今なお住民が火山灰に苦しみ、心の傷も癒えていない。写真は火山灰が積もったカノクポルの家屋の様子。提供写真(2022年 ロイター/Tonga Red Cross Society)
[23日 ロイター] - 海底火山の大噴火と津波の襲来から1週間、南太平洋の島国トンガでは今なお住民が火山灰に苦しみ、心の傷も癒えていない。インターネットはほぼつながらず、電話も依然として利用が制限され、外部と連絡を取るのが難しい状況が続いている。
国際赤十字は首都のあるトンガタプ島に住む173世帯にテントや食料、水、トイレなどを供給しているほか、住民への心理的なケアも行っている。
トンガ赤十字のドリュー・ハベア副代表は「今はまだ誰もが苦境にあえいでいる」と話す。灰のために「どの家も子どもを外で遊ばせず、いつも屋内にいるようにしている」
最も被害が大きかったハアパイの離島からトンガタプ島に避難した住民もいるが、逃げるのを拒んで残った人もいる。村は津波が押し寄せて壊滅状態にあり、バベア氏はしばらく心理的な影響が島民の生活に影を落とすと見ている。
ハベア氏によると、トンガの人たちが共通して抱えている心配事がほかにもある。
「子どもたちは皆、地理の授業で、私たちは環太平洋火山帯に住んでいると教えられ、育ってきた。今は不安が強まり、『この地域はどれくらい(火山活動が)活発なのか』を考え始めていると思う」
フンガ・トンガ・フンガ・ハアパイ火山は、活動が活発な環太平洋火山帯にある。今回は太平洋全域に津波が押し寄せ、約2300キロ離れたニュージーランドでも噴火の音が聞こえた。
噴火が極めて強力だったため、人工衛星で巨大な噴煙のほかにも、同火山から衝撃波が大気中を放射状に音速に近いスピードで広がる様子が観測された。
<振動するような恐ろしい音>
バカロアビーチリゾートのオーナー、ジョン・トゥクアフ氏は噴火が起きた際のことを振り返り、「世界が終わるかと思った」と語った。このビーチはトンガタプ島で最も被害が大きかったカノクポルにあり、今は根こそぎ倒された木やがれきが一面に広がっている。
ニュースサイト「マタンギ・トンガ・オンライン」の編集長、メアリー・リン・フォヌア氏は23日、ロイターの電話取材に、「島全体が衝撃を受けていると思う」と話した。
多くの人たちは「振動するような、恐ろしい」音から立ち直るのに1週間かかった。「音は大き過ぎて耳には入ってこなかったが、体で感じることはできた。家が、窓が震え、それがどんどん大きくなり、爆発音がした」と証言する住民もいる。
フォヌアさんによると、住民は雨が降り、「不愉快で苛立たしい」火山の粉塵を洗い流してくれるのを心待ちにしている。木の葉は茶色く変わり、枝から落ちている。
フォヌアさんは津波に襲われた時に海沿いの事務所にいた。ニュージーランドにいる息子と電話で話していた。
通話が途切れ、息子はフォヌアさんが津波で流されたのではと不安を募らせた。海外在住のトンガ国民の多くは、国際電話の通信がわずかながらも復旧するまで、数日間にわたり家族の安否が確認できない状況に置かれた。
フォヌアさんは、世界から切り離された住民はすぐに救助活動に取り掛かったと話した。スマートフォンが使えなくなったことで、若者は画面を見る代わりに行動を起こしたと証言する年配者もいたという。
電気が1週間ぶりに復旧し、マタンギ・トンガのウェブサイトは22日に噴火と津波の発生後初めて記事を掲載。火山礫が降ったことや、津波が車を飲み込んだニュースを取り上げた。
それでも、フォヌアさんのオフィスはいまだに電子メールを送ることができず、衛星通信容量の拡大が必要だ。
生活に欠かせない物資や通信機器は外国軍の船舶や航空機が運んだという。
(Kirsty Needham記者)
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