焦点:米大統領選「第3の候補」切望論、本命2人の不人気で
ロイター / 2023年11月24日 12時47分
11月17日、2024年米大統領選でバイデン大統領とトランプ前大統領の二者択一を迫られそうな事態を前に、多くの米国民は、もっと若くて国を分断しない別の選択肢を切望している。写真は16日、サンフランシスコで火開かれたAPEC首脳会議に出席したバイデン氏(2023年 ロイター/Brittany Hosea-Small)
Jarrett Renshaw
[ニューヨーク 17日 ロイター] - 2024年米大統領選でバイデン大統領とトランプ前大統領の二者択一を迫られそうな事態を前に、多くの米国民は、もっと若くて国を分断しない別の選択肢を切望している。
第3の候補者に巨大な「市場」が開かれ、出馬すれば大きな影響力を持ち得る現状は、民主・共和2大政党のバイデン、トランプ両氏が飛び抜けて不人気だという事実を突きつけている。
米国は現在、経済問題と格闘し、政治は完全に二極化し、米国が支持するイスラエルがパレスチナ自治区ガザを攻撃して物議を醸す中、次世代の指導者を求める声が広がっている。
ギャラップが最近実施した調査では、米国の成人63%が「第3の主要政党が必要」という考えに同意した。共和・民主両党は民意を代弁するという仕事をまともに果たせていない、とみている。この割合は1年前から7ポイント上昇し、ギャラップが最初にこの質問を行った2003年以来で最も高かった。
バイデン、トランプ両氏はいずれも党の予備選で対立候補の挑戦を受けそうだが、結局は大統領候補に選ばれる可能性が高い。バイデン氏は高齢が憂慮され、トランプ氏は数々の刑事訴追を受けているにもかかわらず、だ。
現代の米大統領選で第3の候補が勝利した前例はない。しかし主要政党の候補者から大量の票を奪うことで、非常に大きな役割を果たした事例は数件ある。
1992年の大統領選では、大富豪で実業家のロス・ペロー氏が19%の票を獲得。民主党のビル・クリントン氏が現職のジョージ・H・W・ブッシュ氏を破る要因になったと言って差し支えない。
2000年の大統領選に出馬した政治活動家のラルフ・ネーダー氏は、全体の得票率こそ3%に満たなかったが、フロリダ州で民主党のアル・ゴア候補から十分な票を奪い、同州及び全国で対立候補のジョージ・W・ブッシュ氏を勝利に導いた。
現在、ロイター/イプソスの世論調査を見ると、反ワクチンの陰謀論者で民主党の名門ケネディ家のロバート・ケネディ・ジュニア氏が、バイデン、トランプ両氏との三つどもえ選挙となった場合に20%の票を獲得する可能性がある。ケネディ氏は10月に無所属出馬の意向を表明した。
ケネディ氏を支持する特別政治活動委員会(スーパーPAC)「アメリカの価値2024」は、元トランプ氏支持者を含む富裕な献金者から1700万ドル余りの資金を調達している。
この委員会は14日、ニューヨークのマンハッタンで黒人や中南米系有権者に訴えるためのイベントを開き、約40人が集まった。
出席者の1人で、ニューヨーク州知事選に出馬したことのあるリバタリアン(自由至上主義者)、ラリー・シャープ氏は「(元大統領の)バラク・オバマ氏が出てきて以来、われわれは反逆者を求めてきた。われわれはオバマ氏を反逆者だと思い、次にバーニー・サンダース(上院議員)を反逆者だと考えた。続いてトランプ氏を反逆者だと考えた。今はもちろん、RFK(ケネディ氏)が反逆者だと知っている」と語った。
共和・民主両党はともにケネディ氏の無所属での出馬に懸念を表明している。民主党は、名門ケネディ家の名前と、環境重視、反企業といった政策が同党有権者の心をつかむことを恐れている。共和党側は、反ワクチンを唱え保守派層に人気のあるケネディ氏が、同党有権者から一定の支持を奪うことを警戒する。
ロイター/イプソスなどの世論調査によると、三つどもえ選挙となった場合、ケネディ氏は両党からほぼ等しく票を奪いそうだ。しかし民主党は油断していない。
中道左派の民主党団体「第三の道」の共同創設者、マット・ベネット氏は「反トランプ氏陣営を分断するものは全て悪影響をもたらす、というのがわれわれの得た教訓だ。トランプ氏にだけは投票できないと考える有権者にとって、だれであれバイデン氏以外の選択肢ができるのは問題だ」と明かした。
一方、「米国の価値2024」の共同創設者であるトニー・ライオンズ氏は、ケネディ氏を単にバイデン氏もしくはトランプ氏にとっての脅威と考えるべきではない、とロイターに述べた。マンハッタンのイベントでライオンズ氏は「この部屋にいる人々を助ける仕事をやっていない腐敗した2大政党制にとっての脅威なのだ」と語った
トランプ陣営の報道官スティーブン・チュン氏は「世論調査では、全国でも激戦州でも、たとえ別の候補がいてもトランプ(前)大統領がバイデン氏を完全に打ち負かしている」と自信を示した。
バイデン氏の陣営はコメントを控えた。
<もっと良い選択肢>
第3の候補に資金が流れる中でも、バイデン、トランプ両陣営はさらに大きな額を調達している。バイデン氏の陣営は第3・四半期に7100万ドルを、トランプ氏の陣営は4550万ドルをそれぞれ集めた。
超党派の政治団体「ノー・レーベルズ」は来年の大統領選向けに既に6000万ドルを調達し、アリゾナ、ネバダ、ノースカロライナなどの激戦州を含む12州で候補者を出す資格を満たした。まだ候補者は決めていない。
ノー・レーベルズのチーフストラテジスト、ライアン・クランシー氏は「過去2年間、有権者の気持ちに耳を傾けてきたが、聞こえてくるのはずっと同じ話、つまり国民はもっと良い選択肢を求めているということだ」と語る。
ノー・レーベルズはここ数年間、議会選で穏健派候補を支持しており、今回初めて大統領選に臨もうとしている。メリーランド州前知事のラリー・ホーガン氏(共和党)や保守派のジョー・マンチン上院議員(民主党)に出馬を打診してきた。
来年の上院選で再選を目指さないと表明したばかりのマンチン氏は15日、NBCニュースで大統領選出馬を検討しているかと聞かれ「わが国を助けるためなら、できることは何でもする」と答えた。
クランシー氏は、バイデン氏とトランプ氏の再対決が避けられない情勢になり、ノー・レーベルズが推す候補の勝利に自信が持てるなら、来年4月に大統領選の候補者指名大会を開く計画だと語った。
第3の候補者はこの他にもいるが、いずれも上述の人物らに比べて大きな脅威にはならないとみられている。
バイデン大統領は最近のインタビューで、元側近のジョー・リーバーマン元上院議員(民主党)がノー・レーベルズによる第3の穏健派候補探しに協力していることについて、民主主義に基づいてその権利はあるとした上で、「それは別の男(トランプ氏)を利することになるし、彼(リーバーマン氏)もそのことは分かっている」と述べた。
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