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焦点:投資銀がM&A手数料収入確保へ対策、大型案件成立のハードル上昇で

ロイター / 2024年7月24日 11時47分

 7月22日、投資銀行業界が、企業合併・買収(M&A)の助言手数料体系見直しに動きつつあることが、十数人のディールメーカーを取材して明らかになった。ロンドンで2023年7月撮影(2024年 ロイター/Yann Tessier)

Anirban Sen

[ニューヨーク 22日 ロイター] - 投資銀行業界が、企業合併・買収(M&A)の助言手数料体系見直しに動きつつあることが、十数人のディールメーカーを取材して明らかになった。具体的にはM&A不成立の際に支払われる違約金の取り分をより多く求めたり、取引が完了するかどうかにかかわらず提供されるサービスである「公正な意見」の提供に伴う手数料を引き上げたりしている。

背景には、規制当局が大型M&Aに対してより厳しい姿勢で臨み、成立のハードルが上がる中でも、手数料収入を維持・拡大しようという狙いがある。

実際米国では、司法省と連邦取引委員会(FTC)が公表した最新データによると、2022年9月末までの1年間に独占禁止当局がM&Aに異議を申し立てた件数は50件と、過去20年で最多を記録した。

欧州連合(EU)欧州委員会は22年に2件、23年に1件のM&A差し止めを決定したが、21年と20年の差し止めはゼロ。ホワイト・アンド・ケースの弁護士は今年の顧客向けノートに「欧州委はかつてないほど合併阻止に動く公算が大きくなっている」と記した。

保護主義が台頭する中でM&Aに対する政治的な反対もリスクとして大きくなり続けている。例えば日本製鉄が149億ドルでUSスチールを買収する計画を巡り、労組の反発を受けて米政府当局者の間からも手続き完了に懐疑的な見方が出ている。

このため今年のM&A市場は件数が横ばいで、新規案件への逆風が強まっているが、投資銀行は手数料体系変更のおかげで収益が上向いた、と複数のディールメーカーは語った。

ディールメーカーの話では、ゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェース、モルガン・スタンレーといった投資銀行最大手は、一部の案件ではM&Aの規模に応じて違約金における自分たちの取り分を最大で25%にすることを要求している。従来の比率は平均で約15%だったという。

身売りする企業に対して金額が妥当かどうかの判断を「公正な意見」として投資銀行が提供する際の手数料も、助言手数料全体の約20―25%と、従来の平均5―6%よりも大幅に高い比率に設定されるようになっている。公正な意見の手数料は、M&Aが成立するかどうかに関係なく支払われる。

<個別事例>

個別事例を見ると、米格安航空会社(LCC)のジェットブルー航空が同業スピリット航空の買収を断念した件では、スピリットのアドバイザーだったバークレイズとモルガン・スタンレーが違約金のおよそ25%を得る交渉を行っていたことが、事情に詳しい関係者の話で分かった。数年前なら、同規模案件の違約金における投資銀行の取り分は20%弱だった。

米プライベートエクイティ(PE)会社GTCRが、フィデリティ・ナショナル・インフォーメーション・サービシズ(FIS)傘下の決済サービス事業ワールドペイの株式55%を取得した取引では、ワールドペイの主任アドバイザーだったJPモルガンとゴールドマンは、助言手数料全体のうちの約25%を「公正な意見」提供の対価として得たもようだ。

関係者によると、数年前の同規模案件ならばこの比率は5―6%程度だった。

ホーガン・ロベルズの反トラスト・競争・経済規制慣行グローバル共同責任者を務めるローガン・ブリード氏は「独占禁止当局による取引監視が強化され、独占禁止法の運用を巡る不透明感が存在することが、M&A(手数料の)取り決めを巡る交渉のやり方に大きな変化をもたらした」と指摘した。

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