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焦点:「ドル大放出」で膨れるFRB総資産、臨界点はまだ先か

ロイター / 2020年4月24日 12時11分

4月24日、米連邦準備理事会(FRB)は、新型コロナウイルスの世界的感染拡大を契機に水面下から突如姿を現した信用収縮とドル不足に対して、前代未聞の金融緩和と信用緩和で挑んでいる。ワシントンのFRB前で2019年3月撮影(2020年 ロイター/Leah Millis)

森佳子

[東京 24日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は、新型コロナウイルスの世界的感染拡大を契機に水面下から突如姿を現した信用収縮とドル不足に対して、前代未聞の金融緩和と信用緩和で挑んでいる。銀行間取引では緊張緩和の兆候が見られるものの、米国を超えて世界の「最後の貸し手」となったFRBのバランスシート(B/S)は急激に水膨れしている。こうした政策の延長線上には深刻な問題が控えていないのか、金融界では危ぶむ声が上がっている。

<B/Sはいずれ臨界点に>

FRBによると4月22日時点のB/S(総資産)は6.57兆ドル(707兆円)と、3月3日の緊急連邦公開市場委員会(FOMC)の直前と比べ1.6倍に膨らんだ。

主要項目で伸びが目立つのは、5.5兆ドル台(596兆円)に突入した証券保有残高や過去1カ月で9100倍の4097億ドル(44兆円)まで膨れ上がった他国中銀とのドル流動性スワップだ。

急膨張の原因は、FRBが最後の貸し手として世界中にドルを供給しただけでなく、その取引先が過剰債務を抱える非金融部門にまで及んでいること、米景気対策に伴う大型財政支出をFRBが事実上ファイナンスしていることだ。

「米国では現在、FedのB/Sと財政赤字が両建てで拡大している。ウィルスの感染拡大が終息し経済が平時に戻っても、それらの規模は元には戻らないだろう。赤字を減らしてB/Sを圧縮するには大幅な増税が不可欠だが、コロナ危機後のぜい弱な経済はそれに耐えられないからだ」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券のシニア・グローバル投資ストラテジスト、服部隆夫氏は話す。

トランプ米大統領は3月27日、新型コロナウイルス対策として2.2兆ドル(米国内総生産(GDP)の約1割)の米国史上最大規模の救済法案に署名し、きょうにも4840億ドルの追加対策に署名する。

しかし、米国経済は3月下旬から完全に停止している状態で、GDPの1割を大幅に上回る付加価値が失われていると考えられ、1割程度の財政手当では経済の縮小を食い止められそうもない。景気悪化の渦中では財政支出の乗数効果も望み薄だ。

「景気のV字回復を狙って米国が追加的財政措置を講じ続ければ、いずれは赤字もB/Sも臨界点に達し、米国債の信用が失墜し、ドルは減価するだろう」と服部氏は予想する。

<過剰な信用緩和と過小な資本>

米国の歴史経済学者のチャールズ・キンドルバーガー氏は「過剰取引は熱狂の一形態である」とした。今回の過剰取引は長年の金融緩和を背景に借入れを増やした米国内外の非金融部門(企業、個人)にあるが、現段階の過剰取引の主役はFRBかもしれない。

「バランスシートに巨大なリスクをため込みながら、政府の子会社のように財政ファイナンスを請け負い、企業金融にまで手を染めだしたFRBの姿は日銀に酷似している」とある金融機関幹部はいう。

同幹部は、日米ともに、財政の持続性が失われている状態で、中銀が大量の国債を買い入れて貨幣量を増やしてしまうと、物価を大幅に上昇させることなしに、貨幣余剰を解消することは難しいと指摘する。

FRBは今月9日、中小企業向けに民間銀行を通じた最大6000億ドルの無利子の融資と最大5000億ドルの地方債買い付けを柱とする最大2.3兆ドルの信用供与パッケージをまとめた。中銀であるFRBが従業員1万人以下の企業に直接融資するのは前例のない実験的な政策だ。

FRBはまた、投資不適格級に最近格下げされた社債の一部を社債購入ファシリティの対象に加えるなど信用緩和策を拡充した。

「企業金融においてコロナ災禍が今後さらに降りかかる事態になれば、一息つけた民間企業も、民間から含み損を付け替えられたFRB・財務省も共倒れすることになるだろう」と三井住友銀行チーフストラテジストの宇野大介氏はみている。

FRBの資本は保有資産のリスク量に比べて非常に少なく、現在388億ドルしかない。

また「信用供与を行っても、リセッション中には低格付け企業での大規模なデフォルトが発生するとみられる。米国の企業債務(非金融法人の社債とローン)の対GDP比は19年末の46.6%から20年末には50%台に上昇しているだろう」とSMBC日興証券のグローバル金融ストラテジスト、村木正雄氏は予想する。

一方、銀行間取引では、FRBのドル大放出が一定の効果を上げている。

銀行セクターの緊張度合いを表すLIBOR―OISスプレッドは、緊急大幅利下げや無制限の量的緩和後も100ベーシスポイント台で高止まりしていたが、最近は2ケタに低下した。ただ、米銀大手行の1―3月決算ではクレジットコスト(不良債権の処理に備える貸倒引当金)の急増で減益が相次いでおり、安心はできない。

クロスカレンシー・スワップ取引では、FRBが他中銀と実施する流動性スワップ協定の恩恵を受け、自国通貨との交換によってドル資金を調達する際のコストが大幅に低下し、円やユーロから割安にドルを調達できるようになっている。

(編集:石田仁志)

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