半導体立国、復活へのろし=試作ライン稼働、生産開始続々
時事通信 / 2025年1月2日 14時44分
かつて世界を席巻した日本の半導体産業が、復活ののろしを上げようとしている。生成AI(人工知能)の普及や地政学的リスクの増大とともに、半導体の重要性は飛躍的に高まった。先端半導体の国産化を目指すラピダス(東京)をはじめ、メーカー各社は2025年に試作ラインの稼働や生産を続々と始める。
「日本から世界に最先端の半導体を届ける確実な第一歩だ」。ラピダスの小池淳義社長は昨年12月、北海道千歳市で開いた極端紫外線(EUV)露光装置の搬入記念式典でこう語った。同装置は半導体の性能アップにつながる回路の「微細化」に不可欠で、今年4月の試作ライン稼働に向けた準備が整いつつある。
ラピダスにはトヨタ自動車やソニーグループなどが出資。政府も最大9200億円の支援を決定したほか、1000億円を出資する方針。千歳市に建設中の工場で、次世代の自動運転システムなどに利用が見込まれる回路線幅2ナノメートル(ナノは10億分の1)の最先端半導体の量産を27年に始める計画だ。
熊本県菊陽町に進出した受託製造世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は昨年12月、第1工場でデータ処理に使うロジック半導体の量産を開始した。隣接する第2工場も既に土地の造成工事を始めており、今年3月までに工場建設に着手する。
データセンター向けに需要が伸びると見込まれるメモリー大手のキオクシア(旧東芝メモリ)は今年9月、岩手県北上市にある工場の新棟を稼働させる。米マイクロン・テクノロジーも年内に最先端メモリーの製造を広島工場(広島県東広島市)で開始する予定だ。
家電製品などの電力制御に使われるパワー半導体も、各社が生産能力の増強を急ぐ。三菱電機は熊本県菊池市で工場を建設中。当初は26年の稼働を予定していたが、自動車や産業機器用の引き合いが強く、25年11月に前倒しした。
経済安全保障の強化を進める政府は、今後も巨額の支援を継続する方針だ。昨年11月に決定した総合経済対策には、30年度までに半導体・AI関連産業へ10兆円以上の公的支援を行うと明記。25年度予算案には次世代半導体の量産支援などに3328億円を計上した。半導体立国として復権を目指す官民にとって、今年は大きな節目の年になりそうだ。
[時事通信社]
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