「給料払い続けられない」=経営者が悲鳴、補助金に不備も―最低賃金、大幅上げの徳島
時事通信 / 2025年1月4日 15時25分
徳島県では2024年11月、最低賃金が896円から980円に一気に引き上げられた。上げ幅の84円は全国で最大。24年夏に引き上げが決まった際、後藤田正純知事は「他県との(人材獲得)競争や若者の流出を防ぐ観点からも評価できる」と強調したが、中小・零細企業の経営者からは「これだけの給料を払い続けられるほど利益はない。今のままでは人は雇えない」と悲鳴が上がる。
県北西部、清流・吉野川に面するつるぎ町で200年以上の歴史を持つ「半田そうめん」。生産者らでつくる協同組合は、主力商品を25年3月から1~2割値上げすると決めた。「原材料や包装紙、そうめんを乾燥させるボイラーを炊く費用などあらゆるコストが上がっている。(対応に)走り回っているうちに引き上げの期限が来てしまった」と、代表理事の北室淳子さんは肩を落とす。
省力化設備の導入など生産性向上を通じて中小企業の賃上げを後押しする国の制度もあるが、北室さんは「半田そうめんの製造に関わる機械は特殊なものが多く、補助を受けられなかった」と指摘。「賃上げをしたくないとかではない。収益力の強化へ助けを求めており、助成金や補助金はもっと柔軟でシンプルにしてほしい」と訴える。
「良く言えば革命的なことだが、ペースを抑えてほしい」。県内で清掃業を営む40代男性は賃上げに一定の理解は示すが、急激な引き上げに不安を隠せない。「何年もかけて頑張って昇給してきた人と新人の給料差がほぼなくなってしまった」と話し、ベテラン従業員の中には「辞めてしまう人がいるかもしれない」と懸念する。
賃上げ原資の確保のため値上げ交渉に奔走するが、ベテラン分までは確保できなかったと言い、県が中小企業の賃上げ原資の不足を補うため、正社員1人当たり5万円、非正規社員は3万円支給する一時金の申請を検討している。ただ、「金額も知れている。経営者の不満を一時的に解消するための手段ではないか」と懐疑的だ。
[時事通信社]
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