有権者とリアルな接点を=SNS選挙、規制には限界―逢坂駒大准教授に聞く
時事通信 / 2025年1月12日 5時12分
2024年の東京都知事選や兵庫県知事選などをきっかけに、SNSの選挙への影響力が日本でも注目を集め始めた。メディアと政治の関係を研究する駒沢大准教授の逢坂巌さんに課題や対策を聞いた。
―SNSの存在感が増している。
2000年代のiPhone(アイフォーン)登場後、活字と電波中心の従来の「マスコミ」が、電気エネルギーに支えられた高速、膨大なネット上の情報に飲み込まれていった。近代ヨーロッパで絶対王政に対し、印刷手段を持った市民が「表現の自由」を要求した。現代はSNSを使う個々人が「マスコミが情報を管理している」と不満を抱く。
一方でネット上の検索順位などは「GAFA」と呼ばれる米巨大IT企業に全て管理され、ファクトよりそれぞれ個人の興味に応じた情報が求められる。SNSによって飛躍的に巨大化した情報空間で、新聞・テレビは「ワン・オブ・ゼム(多くの中の一つ)」の位置付けとなった。
―選挙結果への影響も指摘される。
24年は世界各国でも選挙イヤーとなった。全体的な傾向では、現職が劣勢となり、右派が伸長した。国内では7月の都知事選、11月の兵庫知事選でマスメディア批判も加わり、コロナ禍でネットに親しんだ年配者もSNSに熱狂する状況が見られた。
ただ、欧米などでは選挙での戸別訪問が認められ、街では各政党や候補者がブースを出して有権者と話し合う「選挙小屋」も設けられる。双方向でのリアルなコミュニケーションが盛んだ。選挙カーが一方的にがなり立てる日本は政党のメディア機能が未発達で、バランスに欠けるのではないか。
―選挙でのSNS対策も議論になっている。
うそや誤情報の事後的チェックは当然必要だ。他国からの情報操作の危険もある。しかし規制がSNSのスピードに直ちに追い付くのは限界がある。管理を徹底しているのは中国やロシアだが、われわれが目指す社会ではない。企業や労働組合といった中間団体の存在感が低下する中、ネット経由の「電気エネルギーに基づく認知」に左右される不安定な政治状況を避けるためにも、戸別訪問の解禁といったリアルな接点を有権者との間に広げることでバランスを取っていくべきだ。
2000年代までの「テレビ政治」全盛期、「テレビ映え」しない政治家は次々つぶれていった。今度はネット上で同じことが起き得る。リアルなコミュニケーションで揺るがない支持層を固めることが民主主義の安定にもつながるだろう。
[時事通信社]
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