富裕層の地方誘致が課題=訪日消費額、都市部に集中
時事通信 / 2025年1月15日 18時23分
2024年の訪日客の消費額が8兆円を超え、過去最高となった。円安を追い風に訪日客の消費意欲が旺盛だったほか、宿泊費の高騰なども寄与した。ただ、人気観光地を抱える諸外国の観光収入と比べるとまだ消費額は少なく、地方への波及も十分ではない。政府が目指す30年に15兆円という目標達成には富裕層の地方への誘客が課題となる。
消費額の内訳は、コロナ禍前の19年と比べ、宿泊費や娯楽サービス費などの割合が高まった一方、買い物代は減った。日本旅行業協会の高橋広行会長は「爆買い」に象徴されるモノ消費から「体験を含めたコト消費に大きくかじが切られた」と分析。今後もコト消費は強まるとの認識を示す。
都市部への集中も目立つ。23年7月~24年6月の訪日客消費額のうち、東京、大阪、京都の3都府は約4兆円と全体の6割を占めた。3都府などを周遊する「ゴールデンルート」の人気は高く、観光客の集中地域ではオーバーツーリズム(観光公害)も顕在化。高橋氏も「地方分散は必須」とし、新たな観光ルート開発の必要性を指摘する。
消費額拡大と地域分散へカギを握るのが外国人富裕層の地方への誘客だ。日本政府観光局の調査では、1回の日本滞在で100万円以上を消費する高付加価値旅行者は、19年に人数では全体の約1%だったが、消費額では約14%を占めた。
こうした状況を踏まえ、政府は北陸や東北海道など全国14地域を複数年、集中支援するモデル地域に選定。また、全国35カ所の国立公園に高級リゾートホテルを含む宿泊施設の誘致を目指す。
民間企業も相次ぎ地方で高級ホテルを開業。森トラスト(東京)は昨年、長野県軽井沢町の歴史あるホテルを改修し再オープンした。札幌市では今年、北海道で初めて高級ホテルのインターコンチネンタルが開業。米マリオット・インターナショナルは28年の開業を目指し、鳥取砂丘の近くに最高グレードのホテルを建設する予定だ。
三菱総合研究所の宮崎俊哉主席研究員は旅行にある程度お金を使う「ミドル富裕層」を地方に呼び込むためには、「1泊10万~15万円程度の宿が不足している」と指摘。全国にある宿の事業再生を含め、地域の金融機関や観光地域づくり法人(DMO)などが連携し、地域で取り組むことが重要との見方を示した。
[時事通信社]
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