共産、反転へ妙手見えず＝田村委員長、就任から１年

　共産党の田村智子委員長が１８日、就任から１年を迎えた。同党機関紙「しんぶん赤旗」は自民党派閥裏金事件を巡るスクープを連発し、昨年１０月の衆院選で自民大敗の素地をつくったが、共産自体は低迷を抜け出せなかった。夏の参院選に向けて退潮傾向を反転させる妙手は見いだせておらず、同党初の女性党首、田村氏の正念場が続く。

　「１年前、私の役割は自民党政治を終わらせることだと言った。衆院選で与党を過半数割れに追い込む上で大きな役割を果たせた」。田村氏は１６日の記者会見で、１年間の成果をこう強調した。

　田村氏は与党の「補完勢力」とみる日本維新の会、国民民主党と距離を置き、与党への対決姿勢を貫いてきた。安全保障法制の即時見直しを否定する野田佳彦元首相が立憲民主党代表に就任すると、「共闘の土台が損なわれた」と立民とも一線を画し、衆院選候補擁立を加速させた。

　一方、赤旗は２０２２年１１月、自民５派閥が政治資金パーティー収入２５００万円分を収支報告書に記載していなかったと特報。報道は神戸学院大の上脇博之教授による調査と告発を経て、東京地検特捜部の捜査につながった。赤旗は衆院選公示後、自民本部が非公認の「裏金候補」側に２０００万円支給したことも先んじて報じた。

　一連の報道は衆院選での与党過半数割れの原動力になったとの見方が強い。ただ、国民民主やれいわ新選組が躍進する中、共産は１０議席から８議席に減らした。田村氏は「裏金問題を暴いたが、支持は来なかった」と危機感を隠さない。

　共産は１０、１１両日開いた中央委員会総会で、夏の参院選に向け、改選７議席を上回る８議席以上の獲得を目指す方針を決定。若年層を重視してＳＮＳでの発信を強化し、「市民と野党の共闘の新しい発展」に努めるとの方針も打ち出した。

　ただ、立民は野田代表の下で保守・中道路線に傾斜。共産との溝は広がっており、参院選勝利のカギとみる野党共闘の再構築は容易ではない。共産に付きまとう「強権体質」とのイメージも拭えておらず、党勢回復の道のりは険しい。　

［時事通信社］