米関税発動、大統領に強大な権限=歯止め利かない懸念も
時事通信 / 2025年1月25日 16時8分
【ワシントン時事】トランプ米大統領が中国やメキシコ、カナダなどに対し、高関税で脅しながら要求を突き付ける発言を繰り返している。背景にあるのが、関税政策に関する強大な大統領権限だ。米憲法は、関税の賦課や徴収の権限は議会にあると規定するが、議会はこの一部を政府に委譲。権限行使に歯止めが利かないと懸念する声も出ている。
米議会は、1930年代から70年代にかけ、不公正な貿易慣行への対応や安全保障などを理由に、複数の法律を通じて政府の権限を強化。大統領は「関税発動の幅広い選択肢」(米ブルッキングス研究所)を持つ。
トランプ氏は第1次政権で、不公正な貿易慣行があると判断した場合に一方的に制裁措置を講じられる通商法301条を使い、中国からの多数の品目に追加関税を発動。「米中貿易戦争」に発展した。
また、通商拡大法232条を活用し、安保上の懸念を理由に外国製の鉄鋼やアルミニウムに追加関税を課した。これらの法律では、省庁による実態調査や意見公募が義務付けられているが、議会の承認は必要ない。
今回、トランプ氏が主張するメキシコとカナダへの関税や、全輸入品への一律関税で活用が取り沙汰されるのが、国際緊急経済権限法(IEEPA)。安保上の「異例かつ重大な」脅威があるとして緊急事態を宣言すれば、関税や為替取引制限など広範な措置が可能になる。議会との協議や報告が求められているが、事前調査や意見公募は不要だ。
米ケイトー研究所によると、議会ではこれまでも大統領の関税権限を制限する法案提出の動きがあったが、支持を得られず、実現していない。ブルッキングス研究所のアダム・ルーニー氏はリポートで「歯止めがない関税権限は、経済や外交関係を不安定にする恐れがある」と警鐘を鳴らしている。
[時事通信社]
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