トランプ氏、責任回避に躍起=発足直後の米政権に試練―航空機事故
時事通信 / 2025年1月31日 14時42分
【ワシントン時事】29日に米首都ワシントン近郊で起きた旅客機と軍用ヘリコプターの衝突事故は、乗客ら67人全員が生存を絶望視され、発足からわずか10日のトランプ政権に試練を突き付けた。トランプ大統領は30日、民主党政権が航空管制官などに資質の足りない職員を登用したことが事故につながったとする自説を展開。悲劇に政治を持ち込み、責任回避に躍起となった。
事故の翌朝に開かれた記者会見。トランプ氏は冒頭、民主党批判をぶちまけ、記者団をあぜんとさせた。
トランプ氏の主張は、少数派の職場参画を促す「多様性、公平性、包括性(DEI)」をバイデン、オバマ両政権が重視した結果、「精神的、身体的に問題のある職員」が雇用されていたというものだ。会見後には、連邦航空局(FAA)に「資格を満たさない職員」を交代させる行政命令を出した。
さらに、運輸安全委員会(NTSB)が原因調査に着手した直後にもかかわらず、「ヘリが間違った時に間違った場所にいた」などと断定した。会見に同席したヘグセス国防長官も、「悲しいミスが起きた」と軍の過失をあっさり認めた。ヘグセス氏は25日、航空行政をつかさどるダフィー運輸長官は28日に就任したばかりだ。
米メディアは事故当時、通常2人の管制官が担当する業務が1人で行われていたというFAAのリポートを報じている。ブティジェッジ前運輸長官(民主)はSNSで、「トランプ氏の初仕事は、空の安全維持に貢献した主要職員を解雇することだった」と怒りをあらわにした。
ワシントン・ポスト紙は事故の前日、進路に現れたヘリを避けるため、旅客機が着陸やり直しを余儀なくされる事案が発生していたと伝えた。事実関係があいまいな中で大統領が収束を急ぎ、閣僚がそれに追随するさまは、真相究明に不安を残す。
事故は29日午後9時ごろ発生。ワシントン近郊のロナルド・レーガン空港付近で着陸のため滑走路に進入しようとした旅客機が軍用ヘリと空中衝突し、2機ともポトマック川に墜落した。旅客機の乗客乗員64人と、ヘリに搭乗した兵士3人は全員死亡したとみられる。米メディアによると、米国で多数の死者を伴う民間機墜落事故が起きたのは2009年以来。
[時事通信社]
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