焦点:金投資に走る世界の超富裕層、株価の急伸に警戒感
ロイター / 2020年6月25日 12時39分
6月18日、株式市場が新型コロナ危機を受けた暴落から急速に持ち直しているにもかかわらず、世界の富裕層に投資助言するプライベートバンク(PB)が、金の持ち高をもっと増やすよう勧めている。株高がどれほど強いか、世界の中央銀行による惜しげもない資金供給の影響がどれだけ長く続くかについて懐疑的なためだ。写真は2017年6月、シンガポールで撮影(2020年 ロイター/Edgar Su)
Brenna Hughes Neghaiwi Simon Jessop
[チューリヒ/ロンドン 18日 ロイター] - 株式市場が新型コロナ危機を受けた暴落から急速に持ち直しているにもかかわらず、世界の富裕層に投資助言するプライベートバンク(PB)が、金の持ち高をもっと増やすよう勧めている。株高がどれほど強いか、世界の中央銀行による惜しげもない資金供給の影響がどれだけ長く続くかについて懐疑的なためだ。
コロナ危機以前、大半のPBが顧客に推奨する金の保有比率はゼロか、ほんのわずかだった。今や、一部のPBは顧客のポートフォリオの最大10%を金に向かわせている。中銀の大規模な資金供給による債券利回りの低下ぶりで、利息を生まないはずの金の魅力が相対的に向上したほか、中銀の資金供給がインフレリスクにつながり、金以外の資産や通貨の価値を減じかねないからだ。
金価格は既に1オンス=1730ドルと、年初来の上昇率は14%に達しているが、PBの多くは金の一段の値上がりを見込んでいる。金はインフレとデフレの両方のヘッジに使える。
モルガン・スタンレー
ロイターが取材したPB9社はいずれも顧客に金への配分増加を助言していた。このうち4社は金価格の見通しも回答、今年末の価格は現時点を上回ると予測した。
PB世界最大手のUBS
UBSのPB責任者、キラン・ガネシュ氏は「最近の株価急伸で人々は警戒感を強めている。さまざまなシナリオでもうまく機能しそうなヘッジ手段を積極的に求めようとしている」と述べた。
モルガン・スタンレーは3月末に、同社の全ての投資モデルで金を含むコモディティーの比率を5%引き上げた。同社のシャレット氏によると、コモディティーの推奨比率が10%を超えることは考えにくいが、可能性はゼロではなく、特にインフレが実質的に上昇した場合はそうなるかもしれないという。
債券と株式の市場規模は合わせて最大200兆ドルと推定されており、ここから金市場へのいかなる資産配分の変更も、より小さな金市場にとっては影響は多大になる。金市場の規模は推計で5兆ドルに満たない。
<嵐の中の安全な港>
PB関係者によると、金についての顧客からの問い合わせも増えている。大々的に金に動くことを求める顧客は極めて少ないし、以前であれば、そんな行動はやめるように助言しただろうという。ただ、年配の顧客にはインフレリスクの懸念が最も強い傾向があるとも指摘する。
モルガン・スタンレーのシャレット氏は「こうした顧客らは資産保全に強い関心を持っている。多くの意味で他の一部の顧客よりも長い歴史的な見方で投資を考えており、彼らが懸念するのはインフレなのだ」と話した。
ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュートのリアル・アセット・ストラテジー部門責任者、ジョン・ラフォージ氏によると、金についての顧客からの電話の問い合わせは、昨年は週当たり2件ほどだったが、今では1日当たり2件のペースで、金相場が上昇した日には10件もの電話が来ることがあるという。
JPモルガン・プライベート・バンクの英・アイルランド部門責任者、オリバー・グレッグソン氏によると、金は利息を生まないにもかかわらず顧客からの問い合わせが増えているのは、「嵐の中の安全な港」との見方を顧客が強めているため。同氏は年末の目標金価格を1750ドルとしている。
金に投資を移すことでポートフォリオのヘッジを考える人にとって、選択肢は4つある。(1)産金会社の株購入(2)金の現物価格に関連した動きをする上場投資信託(ETF)(3)金のオプションや先物(4)金地金や金貨などの現物─だ。
ヘッジ目的なら最初の3つの選択肢で事足りる。リスクへの警戒感がより強ければ、投資家は通常、現物を選ぶ。大半のPB大手は金地金の保管サービスを提供しており、ロイターが取材した8社は特にスイスとシンガポールで、そうした需要が高まっていると回答した。
バークレイズ・プライベート・バンクの共同投資責任者、アンドレ・ポーテリ氏によると、一部の顧客は新型コロナの流行発生を受けて今年初めに金現物を買い増し始めていたが、この流れがなお続いている。「3月と4月は大手の金地金製造業者が操業を休止し、国際的な出荷能力も不足したため、金現物の供給が混乱した。これが新たな顧客の引き合いをかき立てた」という。
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