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アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術で不法移民の特定容易に

ロイター / 2024年7月27日 8時51分

 7月22日、 マル・モラビラルパンドさんは強制送還の通知を受け取るまで21年間、米国に住み続けていた。オハイオ州コロンバスで3月撮影(2024年 ロイター/Carlos Barria)

Avi Asher -Schapiro

[ロサンゼルス 22日 トムソン・ロイター財団] - マル・モラビラルパンドさんは強制送還の通知を受け取るまで21年間、米国に住み続けていた。通知が届いたのはトランプ前政権が発足してから11カ月目で、モラビラルパンドさんは当局に自宅住所を知られないために必要なあらゆる措置を講じてきたつもりだった。

ところが彼女は、個人情報として保護されていると思っていた自動車登録や公共料金支払いなどの情報を通じて当局が居場所を突き止められるとまでは認識していなかった。

「このデータがパッケージ化されて当局の手に渡されるとは知らなかった。移民・関税執行局(ICE)のエージェントが自宅の外まで来ても、以前はどうやって私たちを見つけ出しているのか分からなかった。今は承知している」という。

<組織のハイテク化>

米国土安全保障省傘下のICEは、組織のハイテク化が進み続けている。

大量のデータに基づく移民の詳細な分類をしているデータブローカーや、顔認識や自動車ナンバー読み取り装置などの監視ツールを使って移民の動向を追跡が可能になっている。またかつてないほどの規模で人工知能(AI)を活用しており、自動的に強制送還対象者リストが作成されたり、難民申請が一斉にはじかれたりする事態も懸念されている。

世論調査でトランプ前大統領が支持率で優位に立つ中で、多くの移民支援団体が心配するのは、これらのハイテク手段がターゲットを迅速に特定し、現在米国で暮らす推定1100万人の不法滞在者がより多く送還されてしまうのでないかという点だ。

国土安全保障省は昨年公表したメモで、組織的で無差別、大規模な個人の監視および追跡という不適切な行為にAI技術を用いることはしないと表明した。

しかし移民問題に取り組む草の根団体のフィールドディレクター、ハシンタ・ゴンサレス氏は「そうしたことを行える巨大なハイテクインフラ自体は存在する」と語る。

一方でシンクタンク、ミグレーション政策研究所の上席研究員を務めるムザファー・チスティ氏は「大量送還は口で言うほど簡単には実行できない」と指摘。トランプ氏が大統領になったとしても、数百万人の強制送還という約束を果たせるほどの人員や予算、施設を確保できるかどうかは疑わしいとみている。

<使用制限の試み>

移民支援団体が力を注ぎ始めたのは、民間企業に対して当局に協力しないよう圧力をかける取り組みだ。

ゴンサレス氏は「強制送還決定の多くは自動化され、彼らの集めているデータは膨大だったことが分かっている」と述べた。

当局はほとんどの移民監視活動をする上で正当な理由を必要とせず、不法滞在者の位置特定に役立つあらゆるデータの収集を強化し続けている。

ジョージタウン大学のプライバシー・テクノロジー・センターが22年に公表したリポートによると、ICEは4人中3人の運転免許にアクセスし、その3分の1に対して既に顔認証技術を使用しているほか、公共料金支払い記録から成人の74%の住所を自動的に割り出せる。ICEは08年から21年までにデータ収集やデータ共有のために28億ドルを費やしたとみられるという。

21年には超党派の議員グループが、公開市場を通じて移民当局が購入できるデータを厳重に制限する法案を提出したが、現在は上院で審議が停滞したままになっている。

<恐怖感>

移民支援団体、ジャスト・フューチャーズ・ローの弁護士、ジュリー・マオ氏は、トランプ氏による2期目の政権が誕生しそうなことに不安を募らせている。

特にトランプ氏が大量送還のための強力な仕組みを新たに立ち上げると約束している点から、既に膨大な量に上るデータブローカーの情報や、監視ツール、AI、アルゴリズムなどがむやみやたらに使われてもおかしくないという。

「監視ツールやデータブローカーのネットワークがあれば、強制送還したい移民が今どこにいるかが分かるリストが簡単に作成できる。彼らがそうする準備は整っている」と話す。

別の支援団体、オーガナイズド・コミュニティーズ・アゲンスト・デポーテーションズ(OCAD)共同創設者のアントニオ・グティエレス氏は、不法滞在者の間でも「トランプ氏2期目政権」を巡る強い恐怖感や、先行き不透明感が広がっていると指摘。「(1期目の)16年よりも懸念は大きい。その一因は新たなツール(の登場)にある」と付け加えた。

複数の移民支援団体が入手した文書からは、移民当局がわずか7カ月の間に100万回以上もデータベースを検索していたことが判明している。

トムソン・ロイター財団の主要な寄付元であるトムソン・ロイターも、移民当局に情報サービスを提供しているが、犯罪捜査への利用に限定している。

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