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情報BOX:イスラエルとヒズボラ、対立の経緯と今後の見通し

ロイター / 2024年9月26日 11時45分

 9月24日、イスラエル軍によるレバノン全土への空爆で、レバノン当局によるとわずか1日で500人余りが死亡した。 写真.は25日、イスラエルの空爆を受けたレバノン・ジエの現場を捜索する人々(2024年 ロイター/Amr Abdallah Dalsh)

[24日 ロイター] - イスラエル軍によるレバノン全土への空爆で、レバノン当局によるとわずか1日で500人余りが死亡した。イスラエル側は、レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラの拠点を標的にしたと主張しているが、ほぼ1年前から続いてきたイスラエル軍とヒズボラの戦闘が激化したことで、中東地域ではイランを巻き込んだ大規模な戦争が勃発するのではないかとの懸念が高まっている。

イスラエルとヒズボラの対立が深まった経緯と今後の見通しをまとめた。

<戦闘の背景>

ヒズボラは、パレスチナのイスラム組織ハマスがイスラエル南部に奇襲を仕掛け、ガザで戦闘が始まった翌日の2023年10月8日にイスラエルと交戦状態に入った。ヒズボラはハマスと同盟関係にあり、対イスラエル戦はガザのパレスチナ人を支援するのが目的だと主張する。

ガザの戦争にはイランが後ろ盾となっている各地の武装勢力が関与しているが、ヒズボラはこの中で最も強力な勢力と見なされている。イスラエルとの戦闘経験が豊富で、前回最後に大規模な交戦が起きたのは2006年だ。

イスラエルは以前からヒズボラを国境地帯における最大の脅威と位置づけ、その武装強化とシリアにおける影響力拡大に強い懸念を抱いてきた。

ヒズボラは1982年にイランの革命防衛隊によって、この年レバノンに侵攻したイスラエル軍と戦うために設立されており、イスラエルとの対立が思想の中心となっている。

<戦闘エスカレートの背景>

イスラエルのガラント国防相は9月10日、ガザにおける対ハマス戦がほぼ完了し、間もなく北部国境に焦点を移すと発表。数千人のイスラエル人避難民の帰還を目指すと述べた。

9月17日、18日にヒズボラが使用していた通信機器が爆発し、多数が死傷。仕掛けたのはイスラエルとされる。

20日にはイスラエルがベイルート南部を攻撃し、ヒズボラ幹部などを殺害。ヒズボラが報復としてイスラエルの北部都市ハイファなどにロケット弾を発射した。

23日にはイスラエルがレバノンに対して激しい爆撃を行い、南部のほか北部のベカー高原やベイルートも攻撃した。

<事態悪化の可能性>

事態がさらに悪化する可能性はかなり高い。これまで激しい戦闘が続いてきたが、紛争がさらに拡大する余地は十分にある。

イスラエルのネタニヤフ首相は昨年12月、ヒズボラが全面戦争を開始すれば、ベイルートをガザのようにする、と警告した。

ヒズボラは、紛争を拡大するつもりはないとのシグナルを送りつつ、戦争を強いられれば戦う用意があり、まだ戦力の一部しか使っていないと警告を発している。

過去の戦闘では双方に大きな被害が発生している。

2006年の戦闘では、イスラエルの攻撃によりヒズボラの支配下にあるレバノン南部郊外が広範囲に破壊された。ベイルート空港が閉鎖され、道路や橋などのインフラも攻撃を受け、約100万人が避難を余儀なくされた。一方、イスラエルでもヒズボラのロケット弾攻撃を避けるため約30万人が避難し、約2000軒の家屋が破壊された。

ヒズボラは2006年当時よりもはるかに多くの兵器を備蓄しており、ロケット弾でイスラエル全土を攻撃できると主張している。

イスラエル軍は過去に何度もレバノンに侵攻し、1982年には首都ベイルートに進軍した。

<外交的解決は可能か>

イスラエルは北部住民が安全に帰宅できるまでレバノンでの軍事作戦を継続する方針を掲げており、そのためにはヒズボラのロケット弾攻撃を止めなければならない。一方ヒズボラは、イスラエルがガザへの攻撃を続ける限り戦闘を止めるつもりはないとしている。

しかしガザ紛争は停戦交渉が停滞しており、すぐに進展する兆しはない。

米国務省高官によると、米国はイスラエルとヒズボラの戦闘の激化を支持していない。しかし米政府は公然とイスラエルに対して圧力を掛け、爆撃を控えるよう働き掛けることまではしていない。

外交交渉を担う米国のホッホシュタイン特使は、2022年にレバノンとイスラエルの海洋境界を巡る対立で合意を仲介した実績を持つ。

ヒズボラは今年初めに、レバノンに有利な合意については最終的に受け入れ可能との姿勢を示しつつ、イスラエルがガザでの攻撃を停止するまで交渉に入れないと説明した。

ホッホシュタイン氏は5月30日に、ヒズボラとイスラエルの間に平和が訪れるとは考えていないが、一連の合意によって対立が弱まり、両国が納得する形で国境が確立される可能性があると述べた。

フランスが2月にレバノンに示した案では、ヒズボラのエリート部隊が国境から10キロ撤退し、陸上国境を巡る紛争を解決する交渉に入るという内容が含まれていた。

しかし今回戦闘が激化する前でさえこうした合意は難しいと見られており、今では見通しが一段と厳しくなっている。

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