焦点:外交で論戦、「改革者」小泉氏は継続重視 石破・高市両氏なら波風も
ロイター / 2024年9月26日 19時1分
日本の次期指導者を事実上、決めることになる自由民主党総裁選挙では、有力候補の3人と目されているうち小泉進次郎元環境相(43)は「改革」を掲げているが、外交政策に関しては継続重視の姿勢を示す。一方、対抗馬の石破茂元幹事長(67)と高市早苗経済安保相(63)の政策は、日本外交を揺さぶりかねない「変化」をもたらす可能性がある。東京都内で14日、代表撮影(2024年 ロイター)
Tim Kelly
[東京 26日 ロイター] - 日本の次期指導者を事実上、決めることになる自由民主党総裁選挙では、有力候補の3人と目されているうち小泉進次郎元環境相(43)は「改革」を掲げているが、外交政策に関しては継続重視の姿勢を示す。一方、対抗馬の石破茂元幹事長(67)と高市早苗経済安保相(63)の政策は、日本外交を揺さぶりかねない「変化」をもたらす可能性がある。
総裁選は、日本の外交にとっては極めて重要なタイミングで行われると言える。米国との同盟の深化や韓国との関係改善により、域内での中国の存在感のさらなる高まりを阻止する努力を続ける中、実施されるからだ。
元首相の純一郎氏を父に持ち政治家一家で育った小泉氏は自民党の世代交代の象徴になると期待されているが、対外政策では日本の外交を形作ってきた米国との関係に安住するとみられる。
シンクタンク・ランド研究所の政治学者ジェフリー・ホーナン氏は「米国に発言権があるとしたら、小泉氏は(有力視されている)3人の候補者の中ではおそらく最も有利だろう」とロイターの取材で述べた。「小泉氏は若く、政治経験も少ない。最も簡単な方法は、すでにうまく進んでいる道をそのまま進むことだ」。
米国留学経験もある小泉氏は、7月には米国のエマニュエル駐日大使とサーフィンを楽しみ、親密さをアピールした。
小泉氏が継続性を重視するとみられる一方で、有識者らは石破氏は米国からより独立した外交政策を模索し、高市氏は韓国との間で歴史問題を再燃させかねないとみている。
もっとも、誰が総裁選で勝ったとしても、11月の米大統領選が日米関係により大きな影響力を持つことになる。トランプ前大統領が再び政権を取り、同盟国に防衛費負担の増額を求めたり貿易に高関税を課したりすればなおさらだ。
米国務省の広報官は、米国は日本の次期指導者と協力することを楽しみにしていると述べた。
韓国の尹錫悦大統領は、日本との安全保障協力を推進したことで内政上の反発を招いたものの、岸田首相の後任者が「二国間関係のさらなる発展に賛同する」ことを確信しているとロイターに語った。
中国外務省の報道官は、「安定的な中日関係」を促進する首相と働く意思があるとしている。
<論点と課題>
どの候補者も、中国の東アジアでの軍事力抑止のために岸田首相が打ち出した防衛費倍増計画を撤廃することや、これまで何十年にもわたって日本の安全保障を守ってきた日米同盟から手を引くことなどは選択肢にはないとみられる。
しかし、党内では「反体制派」とされる石破氏も、過激とも言える保守派思想を持つ高市氏も、現在のような微妙な時期においては日米関係を複雑にしてしまう可能性がある。
日米両政府は7月、自衛隊と米軍の指揮統制の連携を強化するため、在日米軍を再構成して新たに「統合軍司令本部」を設けると発表した。米国にとっては日本における数十年ぶりの軍事司令構造の拡大で、安全保障協力を半導体や軍事技術に広げ、日韓の緊張緩和を中国の軍事力抑制につなげる狙いがある。
シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)日本部上席研究員でアジア担当副部長のニコラス・セーチェーニ氏は「石破氏は、争点となる課題について限界に挑もうとするのかもしれない」とみる。
その一つが、海外最大の米軍基地を抱える在日米軍基地の地位協定だ。石破氏は9月、沖縄・那覇市で行った演説で、米国がどのように米軍基地を利用しているのかについてより強い監視を求め、地位協定の見直しにも言及した。アジアにおける核兵器の使用についても、日本に発言権を与えるよう求めた。
石破氏は「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」創設の構想も示しているが、これはクリテンブリンク国務次官補(東アジア・太平洋担当)が時期尚早として退けた。
また、石破氏はロイターとのインタビューで、日本製鉄によるUSスチールの買収提案に反対する米政権を批判している。日本を米国の安全保障上のリスクと位置付けるもので、不公正だと指摘した。
この買収案件は、米大統領選の激戦州を中心に非常にセンシティブな問題とされており、岸田首相は関係する企業間で解決されるべきとして言及は避け、小泉氏は大統領選に干渉していると見なされかねないとして、党内の議員にコメントを控えるよう求めている。
高市氏については、首相になっても続けると公言してる靖国神社参拝が、米国主導で進んだ日韓関係改善に水を差すことになる可能性がある。
米国や中国、韓国の批判を受け、日本の現職首相による参拝は2013年の安倍晋三首相(当時)以来、行われていない。
日本国際問題研究所・主任研究員の小谷哲男氏は「高市氏は、自民党保守派の希望になっている」と指摘する。「彼らは依然として、日韓関係の未来に対して懐疑的なのだろう」と小谷氏は語った。
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