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アングル:イラン核協議に遅れ、交渉期間延長はハメネイ師にメリットも

ロイター / 2021年5月26日 17時0分

 5月24日。イラン核合意の枠組み再建に向けた協議が遅れ、6月18日に予定される同国大統領選の後にずれ込む可能性が日増しに高まっている。しかし強硬派の最高指導者ハメネイ師(写真)にとって、交渉期間の延長はかえって自らの政治的得点となりそうだ。2007年9月、テヘランで撮影(2021年 ロイター/Morteza Nikoubazl)

[ドバイ 24日 ロイター] - イラン核合意の枠組み再建に向けた協議が遅れ、6月18日に予定される同国大統領選の後にずれ込む可能性が日増しに高まっている。しかし強硬派の最高指導者ハメネイ師にとって、交渉期間の延長はかえって自らの政治的得点となりそうだ。

高官や内部関係者らによると、最終的に交渉の鍵を握るハメネイ師は、ウィーンで続く6大国との核協議が合意に至り、経済制裁が解かれるのを望んでいる。ただし、求めるのは理想的なタイミングでの合意だ。

複雑な権力構造を持つイラン国内では、どの政治派閥が制裁解除を自らの手柄とするかが焦点。トランプ前米大統領が3年前、2015年の核合意を離脱したことで、イランは米国から再び制裁を科されている。

米国との交渉が長引いて合意が遅れれば、制裁解除の手続きは大統領選後に始まることになる。大統領選では保守穏健派の現職ロウハニ大統領が敗れ、ハメネイ師に近い保守強硬派が勝利すると予想されている。

現状でも最終権限はハメネイ師が握っているため、大統領選の結果はイランの外交・核政策にほとんど影響を及ぼさないだろう。しかし強硬派の大統領が就任した後に制裁が解かれれば、国内におけるハメネイ師の実権はさらに強まる可能性がある。

イラン政府高官はハメネイ師について「最終的には米国の制裁解除を望んでいる。しかし交渉が少し長引くことは気にしないだろう。ぎりぎりになって合意にこぎ着ければ、次期大統領が制裁解除による経済好転の恩恵に浴する。ハメネイ師にとって、これが最善のタイミングだ」と述べた。

イランは23日、国際原子力機関(IAEA)がイラン核施設のカメラ映像にアクセスする権利を、期限切れに伴いなくすと表明。しかし24日には査察期限を1カ月延長してウィーン交渉の決裂を回避した。アナリストはこの経緯について、交渉を長引かせるためにイランが意図的に立ち回ったとみている。

<選挙後解除なら英雄視>

ハメネイ師は米国を「一番の敵」と見なし、米制裁による国内経済への打撃を阻止しようと努めてきた。制裁解除の遅れを望むのは、こうした姿勢と相反するように映るかもしれない。

しかし高官やアナリストによると、ハメネイ師にとっては経済の崩壊を回避することも重要だが、同時にいかなる脅威からも自身の権力を守る必要がある。

イランの宗教指導者らは、中・低所得者層による騒乱再発を恐れている。近年、同国では抗議行動が定期的に湧き起こっており、権力者らは、市民が経済的困窮に怒りを噴出させることの脅威を思い知らされてきた。

政府が市民の言論や政治的自由、社会生活に対する抑圧を強めてきたこと対しても、市民の不満はくすぶっている。

活動家は選挙のボイコットを呼びかけており、ここ数週間、ツイッターでは国内外に住むイラン人によって「#NoToIslamicRepublic(イスラム共和国=イランにノーを)」のハッシュタグが拡散された。

これはハメネイ師の強大な権力に対する抗議の表明だ。師は司法のほか、治安部隊、公共放送、経済の大半を所有する各種財団を掌握している。

イランの元高官は、大統領選で予想通り強硬派が勝てば、「最高指導者(ハメネイ師)の強硬派らが国を完全掌握すると言っていいだろう」と指摘。「選挙後に制裁が解除されれば、ハメネイ師に近い強硬派は国の英雄と見なされることになる」と語った。

ある欧州高官は、イラン核合意ではスピードが非常に重要だとし、「選挙前に合意にこぎ着ける必要がある」と述べた。

<国民生活向上が課題>

大統領選で争点があるとすれば、次期大統領が景気を急回復させられるかどうかだろう。

米国の制裁と経済運営の失敗が相まって、イランでは人口8300万人の半分以上が貧困線を下回り、物価の高騰や高い失業率と格闘する日々を過ごしている。

5月にイラン国営テレビが実施した世論調査などによると、大統領選の投票率は30%程度と、過去の選挙を大幅に下回る可能性がある。

強硬派に近いイラン高官は、選挙後に制裁が解除されれば、暮らし向きが良くなる希望が生まれて騒乱再発のリスクが和らぐと予想。「選挙後は国民の生活水準を引き上げるために景気を良くすることが不可欠になる。経済的困窮を巡る社会騒乱が起これば、イスラム共和国(イラン)に著しい打撃をもたらしかねない」と語った。

(Parisa Hafezi記者 John Irish記者)

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