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焦点:米財務長官人事、日本政府に安堵の声 通商面では新たな課題

ロイター / 2020年11月27日 14時37分

 11月27日、バイデン次期米大統領が政権の核となる財務長官に米連邦準備理事会(FRB)のイエレン前議長(写真左)を起用する方針を固めた。写真右は日本の麻生財務相。ワシントンで2017年4月撮影(2020年 ロイター/Yuri Gripas)

[東京 27日 ロイター] - バイデン次期米大統領が政権の核となる財務長官に連邦準備理事会(FRB)のイエレン前議長を起用する方針を固めた。日本政府も事前に想定していた閣僚人事で、クリントン政権来の「旧知の仲」と安堵の声が出ている。一方、米国の政治空白を突いて中国が環太平洋連携協定(TPP)への参加意欲を表明したことで、通商面では難しい舵取りを迫られそうだ。

<麻生財務相と接点>

財務長官人事に先立つ24日、麻生太郎財務相は「きわめて常識的な人」とイエレン氏の人物像を語った。併せて麻生財務相は「発言もしっかりしているし、能力も高いと思う」と述べ、同氏を評価する考えを示した。現地の先行報道を受けて国会内で記者団の質問に答えた。

イエレン前FRB議長は2014年に女性として初めて同職に就いた。麻生財務相とは、18年までのイエレン氏のFRB議長時に国際会議などの場で、互いに接点がある。年明けの政権移行後にも新型コロナウイルス対応を含めた日米連携を再確認する構えだ。

イエレン氏は1993年から01年にかけたクリントン政権時にホワイトハウスへの助言業務を担う大統領経済諮問委員会(CEA)の委員長も務め、米経済界や政界にとどまらず国際的に広く人脈を築いてきたとされる。

日本政府関係者の間でも「旧知の仲」と好感する声が多く、「上下両院のねじれ状態を見通せば次期財務長官候補はイエレン氏かブレイナード氏(FRB理事)のいずれかと想定していた。順当な人事だ」と、関係者の1人は指摘する。

「基本的に労働経済学者として知られているが、それまで『秘匿主義』だったFRBのコミュニケーションストラテジーを変革させ、金融政策の有効性を確保した意義は大きい。安定感にも定評がある」と、別の政府関係者は言う。

<米中にらみのジレンマ>

16年の米大統領で勝利したトランプ氏は、移民問題や貿易赤字を盾にメキシコへの強硬姿勢を強め、北米自由貿易協定(NAFTA)に代えて米、メキシコ、カナダの3カ国で合意した新協定USMCAを発効させた。USMCAに為替介入を念頭に置いた為替条項を盛り込み、日本側にもこれをベースとする交渉を迫ってきた経緯もあるが、今回は、そうした事態は想定されていない。

バイデン氏は通商政策を見直す貿易交渉以前に労働市場の立て直しを優先する考えを崩しておらず、民主、共和党ともに議会が新たな自由貿易協定(FTA)に慎重とされる中で、「反発を招くFTA交渉はハードルが高い」(外交筋)との見方が背景にある。

もっとも、通商面では中国の習近平国家主席がTPPへの参加を「前向きに検討する」と先のアジア太平洋経済協力会議(APEC)で表明し、日本にとっては新たな課題を突き付けられたかたちだ。

習主席は、今年9月の国連総会でも、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量を2060年までに実質ゼロにすると先んじて表明していた。前出の外交筋は「いずれも空白状態の米国をけん制する狙いは明らか」と指摘する。

TPPに関し日本政府には「参加への意欲を示している英国や、米国の参加を促すことが先」(経済官庁幹部)との声がある一方、米国と並んで有力な輸出先である中国とも自由貿易圏を確保すべきとの指摘がある。対立する米中両国とどう通商関係を構築していくか、新たなリスクを抱え込む懸念もある。

(ポリシー取材チーム 編集:久保信博)

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