物価下振れリスクの妥当性、次回会合で点検必要=日銀会合主な意見
ロイター / 2021年12月27日 10時48分
12月27日、日銀が16―17日に開催した金融政策決定会合で、民間部門の資金繰りを支援する新型コロナ対応特別プログラムについて、コロナ禍が終われば手仕舞うべきものだが、全て手仕舞ったとしても、現行の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の下での金融緩和の縮小を意味するものでは全くないとの意見が出ていたことが明らかになった。東京都で2020年5月撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
[東京 27日 ロイター] - 日銀が16―17日に開催した金融政策決定会合で、物価上昇圧力の高まりを指摘する声が複数出ていたことが明らかになった。来年1月の決定会合で議論する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、物価は下振れリスクが大きいとの従来のリスク評価の妥当性を点検する必要があるとの指摘が出され、物価見通しとリスク評価が次回会合の焦点の1つになりそうだ。
<物価上昇圧力、「先行き高まっていく」>
日銀は27日、決定会合で出された「主な意見」を公表した。消費者物価について委員からは、原材料価格の上昇などで企業物価が歴史的な伸びを続ける中で「消費者物価についても、基調的な上昇圧力が徐々に高まってきているようにうかがわれる」との指摘があった。
予想インフレ率が中長期を含めて足元で上昇しており、「物価上昇圧力は、先行き高まっていくと見込まれる」との意見もあった。この委員は、政府が賃上げを推進する中で来年以降の賃金上昇率が注目だと述べた。
ある委員は、12月の日銀短観で企業の物価見通しが上方修正されるなど「価格設定行動に変化の兆しがうかがわれる」と話した。
もっとも、ある委員は「日本の物価上昇は原油・資源価格上昇を受けた部分が相応にあり、中長期の予想物価上昇率は2%の物価安定目標にアンカーされていない」と指摘。「現段階での金融緩和政策の修正は、コロナ禍からの回復に水を差し、景気後退と物価下落をもたらしかねず、時期尚早だ」と述べた。
<円安を巡るトーンの変化>
ここに来て、円安を巡る日銀幹部の発言のトーンに変化が出てきている。黒田東彦総裁は23日の講演で「円安は基本的にはプラス効果の方が大きい」とする一方、円安にはプラス・マイナス両面の影響があり、「個々の経済主体の事業内容や支出構造によって表れ方が様々であることには十分な留意が必要だ」と述べた。
12月の決定会合では、委員から「日本企業が海外での地産地消を進めてきた結果、円安が企業業績や株価にもたらすプラスの効果はかつてより小さくなってきている」との指摘があった。
国内景気については、供給制約が根強く残り、変異株に関する不確実性はあるものの「公衆衛生措置が段階的に解除される中で、消費者マインドは改善しており、日本経済の持ち直し基調は強まっている」との指摘が出ていた。
<特別プログラム全面終了でも「緩和縮小にあらず」>
日銀は12月の決定会合で、民間部門の資金繰りを支援する新型コロナ対応特別プログラムについて、制度を縮小して中小企業支援の部分を残した上で期限を2022年9月末まで延長することを決めた。委員から「資金繰りに不安を抱える中小企業向け支援に集中し、翌年の事業計画の検討を始める年内に延長を決定すべきだ」との指摘があった。
日銀が早めに来年度以降の方針を明らかにすれば「中小企業や金融機関に安心感を与えられる」との声も出た。
コロナプログラムのうち、CP・社債買い入れの増額措置は22年3月末で終了する。委員からは「市場機能や年金・生保等の運用に与える影響にも配慮し、平常化することが適当だ」との意見が出ていた。
この委員はコロナオペについて「中小企業向け貸出の多くの部分が、信用リスクが国に移転される実質無利子・ 無担保融資となっている」と指摘。「金融機関へのインセンティブを引き下げることが妥当だ」と述べた。
新型コロナプログラムの縮小で、マネタリーベースには一時的に減少圧力がかかる。委員からは、短期的にマネタリーベースが減少しても「長期的な増加トレンドは維持されるため、オーバーシュート型コミットメントとは矛盾しない」との指摘が出ていた。
特別プログラムはコロナ禍が終われば手仕舞うべきものだが、全て手仕舞ったとしても、現行の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の下での金融緩和の縮小を意味するものでは「全くない」との意見が示された。
(和田崇彦 編集:山川薫)
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