1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

アングル:ゆうちょ銀、「七人の侍」の過半が退社 リスクテイク姿勢に変化か

ロイター / 2020年2月27日 17時53分

 2月27日、ゆうちょ銀行が収益力の強化を目指してゴールドマン・サックスなどから登用した運用プロフェッショナル「七人の侍」のうち、過半数が既に退社したことが分かった。写真は都内で2016年8月撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

植竹知子、佐野日出之

[東京 27日 ロイター] - ゆうちょ銀行<7182.T>が収益力の強化を目指してゴールドマン・サックスなどから登用した運用プロフェッショナル「七人の侍」のうち、過半数が既に退社したことが分かった。同行は来年度末までにオルタナティブ投資残高を8.5兆円に拡大するとの目標を既に大幅に引き下げており、市場部門のリスクテイク姿勢の後退と見る向きも少なくない。

ゆうちょ銀行は、同じく日本郵政ホールディングス<6178.T>傘下のかんぽ生命<7181.T>と並ぶ郵政グループの稼ぎ頭。民間銀行と異なり融資業務ができないことから、収益の大半を市場での資金運用益に頼る「一本足打法」の構造となっている。

215兆円と莫大な運用資金をもつ世界有数のアセットオーナーのゆうちょ銀行だが、世界的な低金利や日本銀行のマイナス金利政策の影響で、従来の日本国債を中心とした投資からはもはや運用収益はほとんど見込めない状況だ。

そのため郵政グループ3社が上場した2015年、株式や外国債券といったリスク性資産や、ヘッジファンド、プライベートエクイティ(PE)などのオルタナ資産に投資対象を広げて高度な運用を行うことで収益力強化を図ろうと、黒澤明監督の映画作品になぞらえて「七人の侍」と名付けた運用プロフェッショナルを外部から登用し、急ピッチで運用改革に取り組んできた。

ところが2018年6月、運用改革の旗頭として七人の侍を率いたゴールドマン出身の佐護勝紀副社長(当時)が電撃退社し、ソフトバンクグループ<9984.R>に副社長として移籍。続いて昨年7月末にゴールドマンとシンガポールのヘッジファンドを経て入行した星野泰一専務執行役員が、さらに先月末にはゴールドマン出身の宇根尚秀常務執行委員と、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)で基本ポートフォリオの策定に携わった清水時彦常務執行役員が、相次いで同行を去った。

ゆうちょ銀行の運用の高度化をめぐっては、佐護氏が最高投資責任者だった2017年初めにロイターのインタビューで、米大統領選の前後にドル円のロングのポジションを大きくとったトレードでかなりの利益を上げたと明かしていたが、金融市場では「最近のゆうちょは随分静か」(東京在勤の外銀トレーダー)との声がもっぱらだ。

佐護氏はまた、ゆうちょ銀行が「戦略投資領域」と呼ぶオルタナティブ投資(ヘッジファンド、不動産、PE、ダイレクトレンディング)の残高について、2017年度末時点の1.6兆円から2020年度末までに8.5兆円に拡大する意向を示していたが、同氏が去った後の昨年5月にゆうちょ銀はこの目標を当初の半分に引き下げると発表した。

複数の関係筋によると、先月退社した宇根氏が戦略投資部長としてヘッジファンド投資の体制づくりに主導的な役割を果たしてきたが、同部は昨年4月の組織変更で消滅。その後ヘッジファンド投資は、ロックアップ期間にあるものを除いて大半が解約された。

さらに、佐護氏が一昨年退社する直前にロイターのインタビューで示した、インハウスチームによる日本株のアクティブ運用の拡大や、デリバティブを活用した運用の高度化についても、「当初の期待ほどには進展していない」(関係筋)という。

「運用の高度化・深化を通じた収益力強化」をビジョンに掲げた佐護氏は、金融庁参与を務めた経験もあり前長官の森信親氏の信頼が厚かったが、その司令塔の退社をきっかけに組織の求心力や行政からのバックアップが失われ、「行内ではかつての官僚的体質が息を吹き返しつつある」(複数の関係筋)との声も上がる。

「オルタナ資産の残高目標を引き下げたことや改革派が去ったことで、やはり改革の腰折れ感は否めない」(関係筋)との見方に加えて、リスクテイク姿勢の変化により同行の今後の収益力を危ぶむ声もある。

JPモルガン証券の西原里江シニアアナリストは「戦略投資領域の残高目標を半減する一方、外国証券等の資産を積み増していく方針だが、この戦略変更により減益リスクが高まる可能性があり、また中期的な利益成長ドライバーが見えにくくなった」と指摘する。

ロイターの取材に対し、ゆうちょ銀行広報部は「ヘッジファンドについては、ちょうど当時パフォーマンスが低迷していたこともあり、リスクの大きさと総合勘案して削減を決めた。一方で、戦略投資領域の中でもPEや不動産、ダイレクトレンディングについては残高を積み増している」と回答した。

(編集:石田仁志)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください