アングル:中国企業が株主還元を拡大 株式市場「文化」に変化
ロイター / 2025年1月27日 17時36分
Jiaxing Li Ankur Banerjee
[香港/シンガポール 24日 ロイター] - 低迷する中国の株式市場で、政府の要請を受けて新たな資本主義の潮流が生まれている。相場の回復を待ちくたびれている投資家に対し、企業が過去最高の自社株買いと配当を実施しているのだ。
これは中国における株式市場文化の変化であり、日本で進行中のコーポレートガバナンス(企業統治)改革と同様に、株主への利益還元が脚光を浴び始めたと投資家はみている。
中国株の配当利回りは3%前後と、2016年以来の高水準に達した。
BNPパリバのアジア太平洋地域株式およびデリバティブ戦略部門責任者、ジェイソン・ルイ氏は「中国の規制当局と政策当局者は株主還元の文化を創出しようとしている」と解説。「成功すれば資本市場の構造が変化するだろう。すでに初期の兆候がいくつか見られる」と語った。
自社株買いと配当は、昨年9月に中国当局が打ち出した株価押し上げ、消費者心理改善策の一部として提案された。
主要株価指数のCSI300指数はここ数年低迷しており、2021年以来で27%下落した。この間、米国のS&P500種総合指数は65%上昇している。中国の株式時価総額はこの10年間、11兆ドル前後で横ばいのままだ。
不動産業の債務問題、デフレ圧力、大規模な景気刺激策の欠如、地政学的な緊張が市場心理を悪化させ、外国からの投資の流出を引き起こしている。トランプ米大統領が関税をちらつかせていることも懸念材料だ。
9月に中国政府が市場活性化の意欲を示した後でさえ、株価には勢いがない。CSI300指数は最初の景気刺激策発表後の2週間で40%上昇したが、その規模と実施ペースに失望が広がり、今では上昇分の半分が失われた。
ジュリアス・ベアのアジア担当最高投資責任者、バハスカー・ラクシュミナラヤン氏は「簡単に言えば、配当金が十分に支払われるべきだということだ。(中略)株価自体は回復しないかもしれないという事実に耐えるために」と言う。「その忍耐の代償(配当)が支払われている。支払われないなら(株を保有する)価値はない」と語った。
<ビッグデータ>
規制当局のデータによると、中国企業が2024年に支払った配当は合計2兆4000億元(3297億ドル)、自社株買いは1476億元と、いずれも過去最高に達した。
中国証券監督管理委員会(CSRC、証監会)の呉清主席は22日、12月と1月に310社を超える企業が計3400億元以上の配当金を支払うとの見通しを示した。前年同期に比べて企業数は9倍、金額は7.6倍だ。
市場が成熟し、株主リターンが投資の決め手になりつつある兆候として、配当をテーマにした上場投資信託(ETF)への資金流入は2020年以降で約80億ドルに達している。LSEGリッパーのデータによると、それ以前の5年間はわずか2億7300万ドルだった。
配当利回りの高い従来型エネルギー、金融、素材企業で構成されるCSI配当株指数は過去5年間で20%上昇しているのに対し、優良株のCSI300指数は約8%下落した。CSI成長株指数は同じ期間に25%下がっている。
<文化の変化>
政府は、自社株買いの資金を融通する3000億元のプログラムや、本土企業に株主還元とバリュエーションの改善を求める指針を導入。これらが高配当利回り企業への注目を強めるのに役立った。
フランクリン・テンプルトンの中国株式ポートフォリオマネージャー、ニコラス・チュイ氏は「中国は決して全般に配当利回りの高い資産クラスではなかった。常に成長志向の投資先と見なされていたからだ。しかし今では成長と利回りを兼ね備えた絶妙な立ち位置にあると思う」と語る。
チュイ氏のポートフォリオにある株式の約3分の2は現在、配当利回りが2%以上だ。これは「私が意図的に配分しただけでなく、市場全体の利回りが上がっている」とチュイ氏は話し、「文化の変化だ」と指摘した。
本土の投資家は数カ月にわたって利息収入目当てで債券に殺到していたが、配当金の増加により、それも防げるようになった。配当利回りは10年物国債利回りの1.7%を大幅に上回る。
電気自動車(EV)用電池メーカーの寧徳時代新能源科技やネットサービス大手、騰訊控股(テンセント・ホールディングス)の株価は、自社株買いや配当金の支払いが発表された後に上昇した。
ゴールドマン・サックスは、2025年には国内外で上場している中国企業の株主還元が、前年比17%余りも増えて総額3兆5000億元に達する可能性があると推計している。
HSBCのアジア太平洋地域株式戦略部門責任者、ヘラルド・バン・デル・リンデ氏は「企業は資金をどこに投資してよいか分からず、株主に還元している。これは非常に大きな考え方の変化だ」とし、「10年前には予想できなかっただろう」と続けた。
この記事に関連するニュース
-
青山商事【8219】配当金の倍増&自社株買いを公表、株主還元の強化が評価 PBR1倍は達成できるか
Finasee / 2025年1月27日 6時0分
-
高配当株ランキング~2024年に大幅上昇したものの、依然として高配当利回り水準を誇る銘柄群
トウシル / 2025年1月22日 7時30分
-
穀物メジャーや船舶リース大手など、5万円で買える米国高配当株5選!2025年2月権利落ち分を解説
トウシル / 2025年1月17日 7時30分
-
金利のある世界、動き出す日本の銀行株
トウシル / 2025年1月9日 7時30分
-
新NISA「2年目枠」開幕買いは高配当株?増配予想で利回り4.5%以上の中小型株13選
トウシル / 2025年1月6日 17時16分
ランキング
-
1「しれっと訂正した文春」フジとの"ズルい共通点" 批判の矛先が次は週刊文春に向かっているが…
東洋経済オンライン / 2025年1月30日 15時45分
-
2《日本で最初の大規模ニュータウン》大阪の「千里ニュータウン」が限界化しない理由 1970年万博をきっかけに開業した鉄道
NEWSポストセブン / 2025年1月31日 7時15分
-
3「ポケット型Wi-Fi」「ホームルーター」「光回線」インターネット回線で一番コストがよいのはどれ?比較して解説
ファイナンシャルフィールド / 2025年1月30日 10時30分
-
4高速道路が「無料」になる日が来るというのは本当?利用料は何に使われているのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2025年1月29日 4時10分
-
5「無料Wi-Fi」利用時の落とし穴…スマホの安全対策は大丈夫? 安心して使うためのポイントを解説
ファイナンシャルフィールド / 2025年1月30日 10時10分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください