FRB、経済の「力強い」回復確認 緩和縮小議論「時期尚早」
ロイター / 2021年4月29日 7時4分
米連邦準備理事会(FRB)は27─28日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利の据え置きと債券購入プログラムの月額購入額の維持を全会一致で決定した。写真は2018年8月撮影(2021年 ロイター/Chris Wattie)
[ワシントン 28日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は27─28日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利の据え置きと債券購入プログラムの月額購入額の維持を全会一致で決定した。米経済の力強さは増していると認める一方、新型コロナウイルス禍の影響でなお失業者があふれる中、量的緩和の縮小に関する議論は時期尚早と強調した。
パウエル議長は記者会見で、政策変更の議論開始について「まだその時期ではない」とし、完全雇用への道のりは程遠いとの見解を改めて表明。その上で「就業者数は昨年2月の水準を850万人も下回っており、目標の達成にはしばらく時間がかかるだろう」と語った。
また、インフレ率は今後上昇する見通しだが、そうした動きはほぼ確実に一過性のものであり、FRBが想定よりも早く利上げに動かざるを得ないような持続的な問題には発展しないと明言した。
会合後に出された声明では「ワクチン接種の進展や強力な政策支援により経済活動や雇用の指標が強まった」と指摘。ただ「経済の道筋はワクチン展開など新型コロナウイルスの動向に大きく左右される」とし、「現在進行中の公衆衛生危機が経済活動を引き続き圧迫しており、見通しにはなおリスクがある」との認識を示した。
FRBは3月の声明で公衆衛生危機が「経済見通しに著しいリスクをもたらしている」としていたが、今回の声明ではウイルスに関するネガティブな表現が多少和らいだ。
アナリストらは、ウイルスに関するネガティブな表現の緩和と経済に関する力強い文言が並んだことは、FRBが新型コロナ危機に対応する経済支援策の縮小に関する議論に向けて少なくとも小さな一歩を踏み出したことを示唆していると指摘した。
F.L.パトナム・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、スティーブン・バイオリン氏は「テーパリング(量的金融緩和の段階的縮小)や最終的な利上げを正当化できるような、より力強い経済的状況に向かう中で、非常に慎重な動きと捉えられる」と述べた。
ただ、経済状況の改善が示されているにもかかわらず、FRBはコロナ危機対応の緊急支援策終了を検討する前に満たさなければならない一連の条件については手をつけなかった。この条件は昨年12月に初めて示され、債券購入プログラム終了前の物価と雇用の目標達成に向けた「実質的な一段の進展」が含まれている。
ウィズダムツリー・ファンズの債券戦略部長、ケビン・フラナガン氏は「FRBの超ハト派姿勢に変化はなく、積極的な緩和政策はまだまだ続くだろう。しかし当社の見立てでは今年や来年のインフレ高進が一過性に終わるとは考えにくく、この点でパウエル議長の意見には賛同できない」と話した。
米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントを巡る巨額損失問題に関連し、パウエル議長は、アルケゴス問題のリスクは構造的でないとした上で、リスク管理の問題を検証していると表明した。また、中銀デジタル通貨については、早く導入できるかでなく、正しく導入できるかが重要になると述べたほか、中国のデジタル通貨は米国では機能しないだろうという考えを示した。
今回のFOMCでの金融政策据え置きは予想通りで、金融市場の当初の反応はおおむね限定的だった。S&P総合500種は小幅安、米長期債利回りは低下、ドル指数は下落した。
声明を受け、フェデラルファンド(FF)金利先物市場では薄商いながら2023年3月に利上げが実施されるとの見方を完全に織り込んだ。
ユーロ/ドル先物市場では引き続き23年3月の利上げを完全に織り込んでいる。また、22年12月の利上げ確率は90%以上となった。
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