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アングル:フロイドさん暴行死事件から4年、停滞する米警察改革

ロイター / 2024年5月28日 18時3分

 5月25日、 2020年、米国で黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人警官の暴行により死亡した事件を受けて、人種差別の是正を求める抗議行動が世界中に広がった。写真は2020年6月、ミネアポリスで、フロイドさんの死を追悼するパネルの前に佇む男性(2024年 ロイター/Lucas Jackson)

Bianca Flowers Stephanie Kelly

[25日 ロイター] - 2020年、米国で黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人警官の暴行により死亡した事件を受けて、人種差別の是正を求める抗議行動が世界中に広がった。このとき、スティバント・クラークさんは微かな希望を抱いていた。

弟のステフォンさんは18年3月、カリフォルニア州サクラメントの祖父母宅の裏庭にいたところを、警察官が発射した20発の弾丸により殺害された。警察はステフォンさんが銃を所持している疑いがあったと主張。だが、実際には携帯電話を持っていただけだったことが判明した。

当時22歳のステフォンさんの死は、改革を求める抗議活動を引き起こし、カリフォルニア州では武器の使用に関する従来に比べ厳格な法律が新たに制定された。だが、全米レベルでは包括的な改革は実現していない。

スティバントさんは、20年にフロイドさんら複数の黒人が警察により殺害された一連の事件を受け、自分たちが何年も求めてきた実効性のある刑事司法改革がついに実現するのではないかと期待した。

だが、人種間の平等と公正を求める声は高まったものの、それから4年を経て、包括的な警察改革の実現はまだ見えていない。改革の勢いは衰え、立法面での取り組みは停滞している。人種コミュニティーや啓発活動家、愛する家族を失った遺族らは、警察の説明責任が軽視されているとしていら立ちを見せている。

「第2、第3のジョージ・フロイド事件を予防するための包括的な政策や法制面の改革が行われていないことは、ジョージ・フロイドさんの生命と彼が遺したものを軽視することだ」とスティバントさんはロイターに語った。「この危機に対して、バイデン政権は積極性が足りないと思う。これは黒人だけの問題ではなく、あらゆる人にとっての問題だ。警察による殺人に対して人々が鈍感になっている」

当初は改革を求める声が高まったものの、広範な改革に向けた連邦レベルでの取り組みは、大半が失敗に終っている。

バイデン大統領は24日、「法執行の説明責任を確保するためのジョージ・フロイド警察活動正義法を、署名のため私のデスクに届けるよう、今後の連邦議会に働きかける」と述べた。

共和党のトランプ前大統領の選挙陣営の広報担当者はロイターに対し、トランプ氏は移民及び暴力犯罪に対して厳格な態度で臨むと述べ、大統領選で再選を果たしたら「法と秩序を回復する」と続けた。

<頓挫したジョージ・フロイド法>

ジョージ・フロイド警察活動正義法案は、攻撃的な取締り手法や違法行為、人種的偏見を防ぐことを目的に2021年に初めて提出された。だが連邦議会では何度も障害に直面し、いまだに前進していない。

警察改革に向けた超党派の合意に向けた努力は21年に頓挫。バイデン大統領は共和党に責任があると非難した。連邦議会で紛糾した問題の1つが、過剰な実力行使に対する訴訟から警察官を保護する「免責資格」法の改正だった。シーラ・ジャクソン下院議員(民主党)は23日、この法案を再提出した。

専門家によれば、刑事司法改革が20年の大統領選挙を白熱させた面はあるが、24年の大統領選挙で主要な争点になる可能性は低いという。

イェール大学ロースクール司法共同研究所で政策ディレクターを務めるジョージ・カマチョ氏は、「特にイスラエルとパレスチナの紛争、ウクライナにおける紛争、経済など他の問題が前面に出ている」と語る。

一方でカマチョ氏は、この問題がバイデン氏に対する黒人有権者の支持が盛り上がらない1つの理由になっている可能性がある、と指摘。黒人コミュニティーは警察活動の改革を求めていると述べた。

非営利の世論調査会社アフリカン・アメリカン・リサーチ・コラボラティブが先日行った世論調査では、黒人コミュニティーは今のところ、生活コストの上昇や雇用といった経済問題に関心を注いでいるという結果が出ている。

連邦議会でジョージ・フロイド法が不成立となった後、バイデン大統領は22年5月に全米の警察による違法行為に関する新たなデータベースの創設を含む大統領令に署名した。連邦法執行機関に対し、殺傷性武器の使用や拘置中の死亡例に関する捜査を義務付け、首を圧迫して身柄を制圧したり、呼び鈴を押さずに家宅捜索に入ることを制限するものだ。

それでもフロイドさんの命日である5月25日の前日、長年人権擁護活動に従事してきたアル・シャープトン牧師は連邦議会に対し、ジョージ・フロイド法の可決を求めた。

「ジョージ・フロイド警察活動正義法は、フロイドさんの遺族、そして法執行機関により殺害された黒人男女すべての遺族に対して4年前に我々が約束したことを実現するものだ」とシャープトン牧師は述べ、同法の成立すれば「我々が数十年にわたるデモや抗議行動、啓発活動で求めてきたこと」が実現する、と続けた。

<「不十分」>

米国自由人権協会のニーナ・パーテル上級政策顧問は、「警察活動に関する説明責任という点ではいくつかの成果があった。だが、私たちが納得できるものに比べれば影響力ははるかに小さい」と語る。

パーテル氏によると、目撃者が撮影した動画によって警察による暴力の実態が明るみに出ることが多いにもかかわらず、ルイジアナやアリゾナ、ジョージアといった州では、警察官の活動を撮影することが難しくなりつつあるという。

「改革は不十分、というのが私たちの立場だ」と語るのは、ブラック・ライブズ・マター・グローバル・ネットワーク・ファウンデーションのシクリー・ゲイ理事長。「多くの遺族から、それぞれの経験だけでなく、政策変更における進捗の不足について直接声が寄せられている」と述べ、前進的な改革では不十分だと指摘した。

全米150以上の指導者・組織によるネットワークであるムーブメント・フォー・ブラック・ライブズは現在、昨年コリ・ブッシュ下院議員が提案した「ピープルズ・レスポンス法」を後押ししている。

この法案は、公共の安全に対する「包摂的・総合的で健康を軸としたアプローチ」のために州や地方自治体レベルの財源を確保し、保健福祉省を通じて、警察による介入に代わる手段を生み出そうという趣旨だ。

専門家らは、同法案は共和党及び民主党中道派からかなりの抵抗を受けると予想している。

ムーブメント・フォー・ブラック・ライブズで政策・研究担当ディレクターを務めるアマラ・エニヤ氏は、「あれほどの悲劇的な出来事に刺激されて世界中で抗議の声が上がったが、あれは氷山の一角。私たちのコミュニティーは、警察による殺人や暴力に対して、長年にわたって注意を喚起し、何とかしようと戦ってきた」と語る。

「私たちは努力を続けてきたが、それは私たちだけのためのものではない。いつ終るとも知れぬ、もっと大きな正義という取り組みの一部なのだ」

(翻訳:エァクレーレン)

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