アングル:「挑戦への欲求」が原動力、パラ銅メダリスト宇宙へ
ロイター / 2024年8月28日 17時42分
パラリンピックのメダリストである英国人外科医、ジョン・マクフォールさんは、身体障害者として初めて、欧州宇宙機関から将来の宇宙飛行士になることを認められた人物だ。28日開幕のパリ大会では英国チームの応援に駆けつけ、パラアスリートがスポーツ以外でも強大な壁を打ち破っていけることを示す存在となるだろう。写真はパリで2022年11月撮影(2024年 ロイター/Benoit Tessier)
Tim Hepher
[パリ 27日 ロイター] - パラリンピックのメダリストである英国人外科医、ジョン・マクフォールさん(43)は、身体障害者として初めて、欧州宇宙機関(ESA)から将来の宇宙飛行士になることを認められた人物だ。28日開幕のパリ大会では英国チームの応援に駆けつけ、パラアスリートがスポーツ以外でも強大な壁を打ち破っていけることを示す存在となるだろう。
マクフォールさんは2008年北京大会の100メートル走で銅メダルを獲得した。
「今はパラリンピックへの注目度がずっと高まり、障害がある人の能力を示す、本当に素晴らしく、強力な舞台になった」と語る。
マクフォールさんは19歳の時、訪問先のタイでバイク事故により右脚の膝上まで切断。軍隊に進む希望は絶たれた。
「最初は暗い日々を過ごしたが、大きな部分を占めていたのはフラストレーションだ。挑戦し、達成したいという欲求を満たしてくれる何かが必要だったからだ。私にとって、自然な選択はスポーツだった。肉体面で挑戦し、それが報われたことは、社会復帰に向けた極めて強力な手段になった」と振り返る。
「脚を失ってから北京大会に出場するまでの8年間で、私は自分自身について多くのことを学んだ。おそらく最も重要なことは、努力をすれば自分が望むことは何でも、本当に実現できるということだ」
<宇宙飛行士へ>
マクフォールさんは今、次の大きな挑戦に向かっている。
3年前、ある大学から宇宙飛行士志願者向けの広告が送られてきた。身体に障害をもつ人が国際宇宙ステーション(ISS)の長期滞在クルーになることの可否を調べるESAの研究への参加者の募集も含まれていた。
「個人的な観点からだけでなく社会学的な観点からも、途方もなく興味深く、わくわくする機会に思えた。ESAが何を提案し、何に挑戦しようとしているのかと、強く興味を引かれた」とマクフォールさんは言う。
彼は先月、軌道上での緊急処置能力や、無重力状態で移動し体を安定させられるかについて調べる数カ月間の厳しい試験に合格し、世界初の「パラストロノート(パラ宇宙飛行士)」となることが認められた。
骨密度への影響や、無重力状態で体液がどう動くかも調べられた。これらは、ISSにおいて装着し続ける必要がある人工関節のフィット感に影響を与える可能性があるからだ。
まだ具体的な飛行を保証されたわけではないと彼は言う。ただESAは7月、年内に完了予定のこの研究によって、身体に障害がある宇宙飛行士が宇宙へ行くことが技術的に可能であることが実証されたと発表した。
マクフォールさんは、自身の経験、そして今週のパラリンピックに出場する4000人の選手たちの経験が、何であれ人生を左右するような状況に直面している人々に励ましのメッセージを送ることを望んでいる。
「私のようなトラウマや、人生を変える出来事に直面した人々に言いたいのは、何であれ自分が情熱を注げるものを見つけてほしいということだ。それこそがあなたを報い、あなたを助けるから」という。
「私は1人の人間に過ぎない。だがこれから数週間で、何百人もの選手たちがトップレベルの戦いを繰り広げるのを目撃できる」と、パリ大会に熱い期待を寄せた。
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