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消費低迷・原油急落でQQE拡大、決定は「薄氷」=14年下半期・日銀議事録

ロイター / 2025年1月29日 8時58分

 2014年下半期、日銀は消費税率の引き上げに伴う消費低迷と原油価格の急落が続く中、物価2%目標の達成への危機感から量的・質的金融緩和(QQE)の拡大に向かった。写真は、日本銀行本店と国旗。2024年3月、東京で撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

Takahiko Wada Takaya Yamaguchi Kentaro Sugiyama

[東京 29日 ロイター] - 2014年下半期、日銀は消費税率の引き上げに伴う消費低迷と原油価格の急落が続く中、物価2%目標の達成への危機感から量的・質的金融緩和(QQE)の拡大に向かった。しかし、大規模な資産買い入れを柱とするQQEをさらに拡大する議論は一筋縄に行かず、同年10月末の金融政策決定会合は5対4という「薄氷」の決定となった。日銀が29日、14年下半期の決定会合の議事録を公表した。(肩書は当時)

QQE拡大へ舵を切ったのは岩田規久男、中曽宏の両副総裁だった。

「金融政策運営上、要注意ではないか」――。岩田副総裁は10月6―7日の決定会合でこう警戒感を示した。消費税率引き上げの影響を除いたベースの消費者物価指数(除く生鮮食品及びエネルギー、コアコアCPI)の伸び率の低迷について「消費増税と天候要因、特に消費増税によって消費が抑制されたことが大きく寄与したのではないか」と指摘。「消費増税による実質所得低下は恒久的なものなので、より重視すべき」と述べた。中曽副総裁も日本経済が夏場にかけてややもたつき、足元の景気の一部に弱さが見られるとして「マインド面あるいはインフレ予想に悪い影響を及ぼすリスクは意識せざるを得ず、そういう意味でQQEは正念場にある」と踏み込んだ。

折しも、新興国や欧州の景気減速の一方でシェールオイルの増産で需給が緩んだ結果、年前半に1バレル=100ドル超で推移していたNY原油先物価格が夏ごろから急落。展望リポートを議論する10月31日の決定会合はQQE拡大がテーマとなった。しかし、政策委員会は賛否が真っ二つに分かれた。

中曽副総裁は、展望リポートで示す15年度の物価見通しが13年4月のQQE開始から2年程度の期間で2%を実現できない可能性を示唆しているとして「今回の物価見通しを示した上で調整を行わなければ、われわれのコミットメントへの信頼は崩れ、これまで積み上げてきたQQEの成果も水泡に帰してしまう可能性があることも、自分としては看過できない」と語気を強めた。その上で「量的・質的金融緩和が成功し、わが国経済が長年続いたデフレから脱却できるか、重大な局面を迎えている」と、強い表現でQQE拡大の必要性を主張した。岩田副総裁、宮尾龍蔵委員、白井さゆり委員も続いた。

これに対し森本宜久、石田浩二、佐藤健裕、木内登英の4委員が反対を表明。木内委員は「市場の観測にも後押しされ、効果と副作用の冷静な判断が十分なされないままに追加措置が繰り返される事態へと発展する可能性がある」と警戒感を示し、「戦力の逐次投入はしない」という当初の方針に反すると述べた。

森本委員は「量的・質的金融緩和は、所期の効果を発揮しながら引き続きしっかりと作用しており、今後も資産買い入れを着実に進めることにより、その効果は累積的に強まっていく」と指摘した。「思い切った異次元緩和をさらに大きく深掘りした対応をとることは、効果が限定的である一方、大きな副作用が懸念される」とも述べた。

賛否両論が展開される中、黒田東彦総裁は「現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまでせっかく着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがある」と指摘。「こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持すべきだ」と述べ、QQEの拡大が決まった。長期国債の保有残高の拡大ペースは年50兆円から80兆円に引き上げ、上場投資信託(ETF)の保有増加ペースは年1兆円から3兆円に拡大した。票決は5対4。薄氷の決定となった。

しかし、NY原油先物の急落は止まらず、12月半ばには一時50ドル台半ばまで下落。市場で追加緩和観測が再燃した。

12月18―19日の決定会合では、中曽副総裁が「先般のQQEの拡大は、原油価格の下落そのものに対応して行ったものではない」などと述べ、賛成多数で現状維持が決まったものの、10月のQQE拡大に反対した木内委員は「追加緩和実施から間もない今の段階で、原油価格の一段の下落と物価上昇率の下振れ予想を背景にさらなる追加緩和観測が市場で浮上していることを大変懸念している」と述べた。

石田委員は会合での議論が「物価は原油価格下落によってかなり下がっていくだろうが、景気自体の方向は上向きだから、来年度からは物価についても回復に向かうだろう、というトーン」だが、このところ同じような議論が続いており「もし、10月31日に追加金融緩和を実施していなくても本日の議論はほとんど同じような議論になったのではないか」と指摘。「今さらながら『あの金融緩和は何だったのか』という思いを禁じ得ない」と語った。

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