NTTがドコモをTOBで完全子会社化、「グローバル環境に対応」
ロイター / 2020年9月29日 19時13分
NTTは29日、NTTドコモの完全子会社化に向け公開買い付けを実施すると発表した。買い付け価格は1株3900円で、総額4兆2540億円。写真は昨年9月の東京ゲームショウで撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)
[東京 29日 ロイター] - NTT<9432.T>は29日、NTTドコモ<9437.T>の完全子会社化に向け、株式公開買い付け(TOB)を実施すると発表した。買い付け価格は1株3900円で、総額4兆2540億円。ドコモ株は上場廃止となる見込み。競争環境の変化やコロナ後の社会を見据え、先端技術への投資などの取り組みをグループで効率的に進め、グローバルな経営環境の変化に対応する。
NTTの澤田純社長は同日のオンライン会見で、ドコモの競争力強化と成長が目的だと説明したほか、「NTTグループとして、グローバルレベルでダイナミックな経営環境に対応していく必要がある」と述べた。
完全子会社化の決断を後押しした要因として「ドコモが(利益面で)3番手になり、GAFAなり、海外の強豪が出てきている市場に対する危機感が一番」と述べた。ドコモの吉澤和弘社長は、ドコモはモバイルの視点が強いとし、「視点を広くして領域を広げないと競争に打ち勝てない」と述べた。NTTの澤田社長がドコモに打診したのは4月の後半という。
TOBの買い付け期間は30日から11月16日まで。買い付け予定数は10億9089万6056株、下限は1468万6300株。
買い付け資金として、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、農林中央金庫、三井住友信託銀行、日本政策投資銀行から総額4兆3000億円の枠内で借り入れを実施する。財務レバレッジ、資本効率にも配慮し、債権流動化や資産売却も検討するとした。一時的に有利子負債の水準は高まるが、「着実に低減することで財務の健全性を維持する。株主還元方針に変更はない」(NTTの澤田社長)とした。
現時点で未定としながら、NTTコミュニケーションズ(東京・千代田)やNTTコムウェア(東京・港)のドコモへの移管など、グループ会社との連携強化についても検討していく方針を示した。上場子会社のNTTデータ<9613.T>については「完全子会社化する考えはない」(NTTの澤田社長)とした。
ドコモが「グループの中核を担う」(NTTの澤田社長)という位置づけとし、今後の取り組みとして、グループの経営資源を活用した通信事業の競争力強化のほか、法人ビジネスやスマートライフ事業の強化、グループ全体のリソース活用による研究開発体制の強化を挙げた。R&D(研究開発)部門が連携し、第6世代(6G)通信システムや、NTTが次世代通信技術として提唱する「IOWN」構想などの先端技術の研究開発を強化する。
菅義偉首相が携帯電話料金の値下げに意欲を示しているが、NTTの澤田社長は、今回の取り組みは料金値下げと直接的なリンクはないと説明。ただ、結果として「値下げ余力は当然出てくる」とした。公正競争の側面では「NTT東西は法律に従って動きながら、今回はそれ以外の競争領域でドコモを強くしていくと総務省に説明した」という。澤田社長は、競争が活性化して料金が下がるということが必要だと主張。NTTが一方的に強いのではなく、完全子会社化は競争する上での「方法論」とし、「法制度上の問題はないと受け取っている」と述べた。
ドコモは、公開買い付けの成立を条件に、期末配当予想を無配に修正する。吉澤社長は12月1日付で退任し、井伊基之副社長が社長に昇格する。
井伊副社長は「ドコモ口座」問題からの信頼回復と補償、再発防止策を早期に打つことの優先度が高いとした。その上で「移動通信だけでなくトータルでサービスが提供できる会社への変革の優先度を上げたい」と抱負を述べた。
*内容を更新しました。
(平田紀之 編集:内田慎一)
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