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アングル:米金融政策、緩和方向への転換うかがえる5つのサイン

ロイター / 2024年1月29日 9時40分

米連邦準備理事会(FRB)の政策担当者は今のところ、早期の利下げはないというシグナルを発している。写真はFRBのパウエル議長。ワシントンで2023年12月撮影(2024年 ロイター)

Ann Saphir

[26日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)の政策担当者は今のところ、早期の利下げはないというシグナルを発している。大半のエコノミストの考えでは、消費の強さが続いていることなどを踏まえると、利下げ開始は最も早くても6月だろう。

しかしFRBは既に、政策運営姿勢の緩和方向への転換を始めている。

物価上昇圧力は明確にクールダウンしてきた。FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数は2023年12月の前年比上昇率が2.6%だが、半年や3カ月単位で見た基調的な物価上昇率はもはや、FRBが目標とする2%より低い伸びだ。

FRBは、物価情勢の進展はまだ十分でないとの姿勢は崩していないが、最終的に利下げに動く場合にサプライズとなることも望んではいない。

ウィルミントン・トラスト・インベストメント・アドバイザーズのチーフエコノミスト、ルーク・ティリー氏は、FRBが緩和方向に舵を切っているとの考えを披露。発信されるメッセージは過度のタカ派姿勢から、利下げ開始の地ならしへと変わり始めたとの見方を示した。

30─31日の連邦公開市場委員会(FOMC)後に公表される声明や、パウエル議長の会見では、そうしたメッセージの変化がより鮮明になるかもしれない、と複数の市場関係者は予想している。

FRBが軸足の微調整に乗り出しているサインとみなせるのは以下の5つだ。

(1)「痛み」から「黄金の道」へ

政策担当者は当初、インフレとの戦いが失業率を押し上げ、家計に「痛み」をもたらすとかなり確信していた。22年8月にはパウエル氏もそう警告している。

しかし23年半ばまでの段階で、物価上昇率の鈍化が顕著になっても、失業率はなお4%未満で推移し、シカゴ地区連銀のグールスビー総裁は、物価抑制に動いても失業率を上昇させず、経済に打撃を与えない「ゴールデンパス(黄金の道)」の可能性に言及し始めた。

今月にはアトランタ地区連銀のボスティック総裁も同じ表現を用いて、そこに向かっている流れのために自身が想定する利下げ開始時期は以前より早まったと述べた。

パウエル氏はまだ黄金の道という言い回しを使っていない。ただ23年9月には、米経済がソフトランディングへの道筋が広がったかもしれないと認めた。

ウォラー理事は最近、低い失業率と物価上昇率の組み合わせという面で現状は「ほぼ最善の形」になっていると指摘した。

(2)「追加的引き締め」の文言削除も

パウエル氏は23年11月、「われわれが犯し得る最大のしくじりはインフレを制御できなくなることだ」と発言した。

ただ7月以降FRBが利上げを見送り続ける中でも、物価上昇率が予想以上のスピードで下振れており、この言い回しも手直しされつつある。

パウエル氏は12月、「われわれは引き締め期間を長引かせ過ぎるリスクを承知している。それはリスクであり、その間違いをしないことを非常に重視している」と語った。

シティやバンク・オブ・アメリカなどのエコノミストチームは、30─31日のFOMCでFRBが23年3月からずっと声明に盛り込んできた「追加的な金融政策の引き締め」という文言が削除され、政策運営の柔軟性を高めてもおかしくないとみている。

(3)タカ派さえ利下げ視野に

23年のFRBは、利上げを実行し、またさらなる利上げ余地を残し続ける作業に追われる展開だった。

しかし今月、FOMCメンバーでもタカ派最右翼の一人と目されるボウマン理事が、追加利上げの必要がなくなる可能性が出てきたと認め、物価の下振れが続くならば利下げも正当化され得ると述べた。

やはりタカ派のクリーブランド地区連銀のメスター総裁も、3月のFOMCで利下げするのは「恐らく」時期尚早としつつも、他のFOMCメンバーの大勢と同じく年内に数回の利下げを見込んでいることを明らかにしている。

ダラス地区連銀のローガン総裁は今月、金融環境が緩和的になっているので利上げはなお議論の対象だとくぎを刺したが、より持続可能な経済と緩やかな均衡の回復に向かう上で「大きな進展」があると強調した。

(4)リスク「均衡」と判断

22年3月に今回の利上げサイクルが始まって以来、ほとんどの政策担当者はFRBが議会から達成を義務付けられた「物価の安定」にほぼ全力を注いできた。ただ23年末にかけては、もう一つのFRBの使命である「雇用最大化」への注目度も高まった。

パウエル氏は23年12月に、過度な利上げで必要以上に景気を減速させるリスクと、インフレ抑制のための利上げが足りなくなるリスクは「より均衡している」と述べた。

サンフランシスコ地区連銀のデーリー総裁も最近、経済と金融政策の双方で、リスクは「均衡している」と説明した。

(5)利下げペースに触れる可能性

直近のFOMCは24年中に利下げが実施される可能性に言及した半面、その時期やペースを巡る議論には踏み込んでいないことが、議事要旨から分かる。市場関係者は、30─31日のFOMCでそうした議論が深まると予想している。

ここ数カ月、政策担当者から想定される利下げの姿を巡る発言も見受けられる。例えばウォラー理事は、利下げは慎重に調整し、急ぐべきでないと主張した。

今後の利下げについて一つ明らかなのは、利上げが22年中は何度か75ベーシスポイント(bp)の幅になったように「前倒し」で進められたのとは全く違う展開になる公算が大きいという点だ。

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