アングル:近づく「決戦の火曜日」、注目の加州は大混乱か
ロイター / 2020年2月29日 10時2分
米大統領選の民主党候補選定は、14の州の予備選・党員集会が集中する3月3日の「スーパーチューズデー」が一つのヤマ場だ。写真はサウスカロライナ州チャールストンで行われた民主党候補者のディベート。2月25日撮影(2020年 ロイタ/Randall Hill)
Tim Reid
[ロサンゼルス 25日 ロイター] - 米大統領選の民主党候補選定は、14の州の予備選・党員集会が集中する3月3日の「スーパーチューズデー」が一つのヤマ場だ。特に注目を集めるのは大票田のカリフォルニア州だが、州の投票制度が今回、大幅に変更されたことから、アイオワ州党員集会での大混乱の二の舞になるのではとの不安が広がりつつある。
気が気でないのは選挙運営に携わる人々だ。カリフォルニア州オレンジ郡の民主党の選挙責任者ニール・ケリー氏も眠れぬ夜を過ごしている。心配するのも無理はない。何しろ2月3日に全米で最初に行われたアイオワ州の民主党党員集会は、集計アプリの不具合その他から最終結果公表が何日も遅れてしまった。そのため、他州の担当者たちは同じ過ちを繰り返すまいと必死になっている。
カリフォルニア州の場合、予備選の結果が全体に及ぼす影響が際立って大きい。民主党の大統領候補を決める第1回投票で当選のために獲得が必要な代議員は1991人。カリフォルニア州予備選に勝てば、この2割強に相当する全米最多の415人が手に入る。
さらに今回、同州の予備選は開催時期も4年前の6月からスーパーチューズデーに前倒しされた。言い換えれば、もし同州予備選で大規模なトラブルが発生すれば、混乱の度合いはアイオワとは比べものにならない。
そのカリフォルニア州で人口が多いいくつかの郡が、独自の新たな投票システムを導入。郵送による投票や期日前投票の利用拡大への期待のもと、予備選当日の投票所は何千カ所も減らす構えだ。
<新システムに伴う問題>
カリフォルニア州で投票制度が変わったのは、2016年に州が制定した法令に由来する。全58の郡が参加するかを選べるとされた新制度は、登録有権者2050万人にとって投票しやすくなり、投票手段も融通が効くような選挙を実現するのが狙いだ。18年の選挙で5郡が新制度を導入、今年さらに10郡が加わろうとしているため、同州の有権者の半分近くをカバーする格好となっている。
同州で最大となる540万人もの有権者を擁するロサンゼルス郡は、独自に同様の制度を採用し、新たな投票機械も導入した。しかし、既に厳しい目にさらされている。
ビバリーヒルズ市は今年1月、1度に4人しか候補者名を表示できないタッチスクリーンシステムの修正を求める裁判を起こした。有権者が他の候補者名を見るには煩雑な手順を踏まなければならず、有権者が全候補者を見ようとしないリスクが生じるという理由だ。
市の司法長官によると、判決が下されるのは3月3日よりも後になる見通し。ロサンゼルス郡の広報責任者は裁判についてコメントを拒否した一方、自分たちが昨年9月に模擬選挙を実行して新しい機械を試し、候補者リストを見るためのボタンを利用者からの意見を踏まえて手直しするなど、改良を加えたと説明した。
オレンジ郡も、別メーカーではあるがやはり新しい投票機械を導入している。責任者のケリー氏は、全候補者名を認識するための操作は分かりやすいと強調した。
ややこしいことに、ロサンゼルス郡とオレンジ郡の新しい投票機械自体では、票の集計ができない。有権者が特定の候補を選ぶと、選択結果を記した紙が印刷され、問題がなければ機械内の箱にその紙を投じる。担当者たちがその用紙を回収し、セキュリティーが確保された場所に移動した上で、中央集票システムを通じてカウントされる仕組みだ。また有権者は投票機械を使わず、最初から投票用紙に候補者を記入することもできる。
こうした新技術だけでなく、従来の投票所にとって代わる形で、もっと大規模でスタッフ人員が充実しているとされる「投票センター」が設置される。こうしたセンターの一部では期日前投票も実施されるようになった。センターは、投票する日に同じ場所で有権者登録をすることも可能にした。有権者は自宅近くで、そこだけと決められた投票所に行くのではなく、郡内であればどこの投票センターも利用できるようになる。
また選管担当者たちは、新制度に参加している郡の全登録有権者に投票用紙を送り、郵便投票の積極活用も呼び掛けている。
<投票場所は激減>
その代わり、投票場所は著しく減少する。例えばロサンゼルス郡では、予備選で約970カ所の投票センターが設置されるが、16年の予備選で稼働した投票所は4500カ所と、この4倍以上だった。選管担当者たちの見込みでは、郵便投票の利用や期日前に投票センターに行く人が増えるので、選挙当日の投票場所は少なくて済むことになるというのだ。
ロサンゼルス郡の選管の広報担当者は、各世帯へのダイレクトメールやメディアを通じたお知らせなどで有権者に対する活発な啓蒙活動をしていると主張した。
それでもある市民団体の幹部は、広く告知するのは難しいと指摘。有権者数が膨大で選挙期日が迫っている中で、昔の投票所に行ってしまったり、投票システムが変わったと知らないままになったりするケースが出てくる恐れがあると述べ、制度変更をまだ聞いたことがないという有権者を個人的に数多く知っているとも警告した。
ロサンゼルス郡ラハブラハイツに住むコンサルタントのリー・ジャクソンさん(45)も困惑する1人だ。民主党の予備選に足を運ぶつもりだとしながらも、制度変更に関しては「漠然と」耳にしただけで、最も近い投票センターの場所もはっきりしないと嘆く。
また自身は「無党派」として登録されている。カリフォルニア州の民主党は州有権者の約25%を占める無党派層にも予備選参加を認めるが、参加する無党派の人々には大統領選本選でも民主党候補に投票することが義務づけられる。「もう、どうして良いか全く分からない」という。同州では有権者の約4人に1人が無党派とされている。
<軍事作戦>
カリフォルニア大アーバイン法科大学院で選挙問題を専門に研究するリック・ハセン氏は、そもそもこれほど重大で注目を浴びている予備選に、これほどたくさんの選挙制度変更を適用しようとしているのが不適切だとみている。
ハセン氏は「投票場所や選挙期日、投票機械の変更で、有権者が混乱する事態が現実味を帯びている。誰もアイオワの再現は望んでいない。理想的には、こうした変更はもっと格の低い選挙で導入されるものだ」と語った。
オレンジ郡のケリー氏は、自分たちのチームが今回の予備選に向けて、4年かけて綿密に準備を進めてきたと強調し、作業は民間の世界にいながら軍事作戦を遂行する感覚に近いと打ち明けた。
それでもカリフォルニア州の有権者の多さそのものが、落とし穴になりかねない。パディラ州務長官も22日、今年の投票者数は過去最高に達し、当日の投票までの待ち時間は普段よりも長くなると予想するとともに、期日前投票をしてほしいと訴えた。
カリフォルニア州立大のジャスティン・レビット教授(政治学)は、とりわけ道路の渋滞がひどく公共交通機関があまり充実していないロサンゼルスで、投票場所が大幅に減った点に懸念を表明。「ロスの交通問題は伝説的でさえある。多くの人はどうやって(投票場所に)たどり着けるか戸惑っている」と付け加えた。
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