信越化は通期据え置き、市場予測下回る 4―12月期は4.5%増益
ロイター / 2025年1月29日 15時38分
Ritsuko Shimizu
[東京 29日 ロイター] - 信越化学工業は29日、2024年4―12月期の連結営業利益が前年同期比4.5%増の5844億円になったと発表した。半導体関連材料を含む電子材料事業が大幅増益となったことが主因。25年3月期見通しは前年比4.8%増の7350億円で据え置いた。IBESがまとめたアナリスト20人の予想平均値7825億円を下回っている。
4―12月期決算では、2つの主力事業のうち、電子材料が前年同期比21%増益となった。ただ、四半期ベースでみると、7―9月期の972億円に対し10―12月期は737億円にとどまっている。笠原俊幸執行役員は説明会で、10―12月期の電子材料が増収減益となった理由について、品種構成の差が大きかったこと、固定資産繰り入れに伴う償却費の増加、棚卸資産の内容精査による一過性の調整などがあると説明した。
半導体市場は用途や分野により回復がまだら模様となる中、300ミリウエハについては、4―6月期からの回復を期待しているという。斉藤恭彦社長は「露光材料は引き続き好調。25年の半導体市場が12―15%伸びるという業界予想に違和感はない」と述べた。
一方、生活環境基盤材料事業は前年同期比11%減益だった。塩化ビニルの価格が10―12月期に値下がりに転じた。斉藤社長は「米国内の需要は12月からⅤ字回復しており、2月の値上げを打ち出した。継続して値上げに取り組む」との考えを示した。
トランプ米政権の政策の事業への影響について斉藤社長は、インフレ退治、ハリケーンやロス火災の復興需要、米インフレ抑制法(IRA)下での投資がAIインフラに置き換わること、という3点を挙げた。
中国の新興企業ディープシークが低コストの人工知能(AI)モデルについて、半導体を担当する轟正彦専務は、個人的な見解として「いろいろな産業がAIを導入する契機になる。個人的にはマイナスには捉えていない」と述べた。先端半導体の需要についても「増産が間に合わない状況がしばらく続きそうで、これによって先端品の需要が腰折れすることも考えにくい」とした。
同社は、自社株の公開買い付け(TOB)を実施した。斎藤社長は「手持ち資金は買収を含む大型投資案件、経済的ショックへの備え、株主還元に充てる」とした上で、「手持ち現金はこれ以上増やさない」との姿勢を示した。
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