アングル:コロナ下の米国、慈善団体への寄付が異例の水準に
ロイター / 2020年12月31日 8時6分
デトロイト大都市圏では、救貧事業を行う非営利団体(NPO)フォーガットゥン・ハーベストによる毎週の食糧配給日になると、同NPOと提携する食糧倉庫の前には夜明け前から数百台の車が行列を作る。写真は21日、ミシガン州ウォーレンで、非乙用な人に配布する食品などを仕分けるボランティアら(2020年 ロイター/Emily Elconin)
Jonnelle Marte
[24日 ロイター] - デトロイト大都市圏では、救貧事業を行う非営利団体(NPO)フォーガットゥン・ハーベストによる毎週の食糧配給日になると、同NPOと提携する食糧倉庫の前には夜明け前から数百台の車が行列を作る。デトロイトでは今年、配給を受ける人が50%増加した。
新型コロナウイルスによるパンデミックでオフィスその他の事業所が閉鎖されたことで、食糧配給への需要は増大した。だが、需要への対応も強化されている。
フォーガットゥン・ハーベストに対する寄付金額は昨年を上回るペースで、これまでより広い倉庫スペースや、パンデミック下でも食糧を安全に配布するために必要な新たな移動配給拠点を整える財源となっている。
「このパンデミックで唯一良かったことは、人々がこれまでより少しだけ隣人たちを思いやるようになったことだ」と語るのは、ミシガン州で最大規模のフードバンクの1つ、フォーガットゥン・ハーベストでマーケティング担当ディレクターを務めるクリストファー・アイビー氏。
パンデミックによる経済危機は、米国における「持てる者」「持たざる者」の格差を新たな形で拡大した。在宅勤務が可能な人は高所得の職種に多く、問題なく暮らしている。
だが、2000万人を超える米国民は失業給付に頼っており、飢えと貧困は拡大しつつある。
格差が拡大する一方で、各地のフードバンクやクラウドファンディングによるキャンペーン、その他生計に苦しむ同胞に対する支援は急増しつつある。
恐らく最も金額が大きいのは、今月初めに発表されたアマゾンの株主であるマッケンジー・スコット氏が慈善団体に40億ドル(約4150億円)を寄付した件である。だが他にも、10ドル、20ドルと額は少なくとも寄付を行う米国民は多い。寄付するのはこれが初めてという人もいる。
今年はパンデミックにより啓発・寄付促進のイベントやコンサートを行えず、苦労しているNPOも多い。だが、2500近い団体を調査しているファンドレイジング・プロフェッショナル協会による最近の分析では、2020年1─9月、一部の中小規模の慈善団体では前年同期比で7.6%も寄付が増えているという。寄付者の数は11.7%増加している。
暫定データを見る限り、例年米国で最も慈善活動が活発に行われる12月になっても、この傾向は続いているようだ。「ギビング・チューズデー(施しの火曜日)」と呼ばれる感謝祭後の火曜日に当たる12月1日、慈善団体が受け取った寄付金は前年比25増の24億7000万ドルに達した。
慈善団体ギビング・チューズデーの最高データ責任者ウッドロウ・ローゼンバウム氏は、「寄付の勢いは前例がないほどだ」と話している。
ローゼンバウム氏によれば、寄付の大半は少額であり、幅広い所得層の人々が寄付に力を入れている様子がうかがわれるという。
クラウドファンディングサイト「ゴーファンドミー」の広報担当者によれば、同サイトでのキャンペーンにおいて50ドル以下の寄付が全体に占める比率は、昨年の40%に対し、今年は約70%に増えたという。
「これまでよりはるかに集団的な動きになっているということだ」とローゼンバウム氏は言う。
今年発足したアメリカズ・フード・ファンドは、ゴーファンドミー上で4400万ドルを調達した。これは同サイトでのキャンペーンとして過去最高額である。米国郵政公社が長年行っている「オペレーション・サンタ」は、専用の宛先「北極」に手紙を送った困窮家庭と寄付者を結びつける仕組みだが、やはり前例がないほどの支援が集まったと報告している。
地元のコミュニティでの英語教育、相談員派遣、住宅支援を行うために2012年に発足した教会組織リバイブ・サウスジャージーでエグゼクティブ・ディレクターを務めるジョナサン・カミングズ氏によれば、同組織は支援対象家庭の多くが食品の購入に苦労していることを知り、2週に1度のペースで食糧配給を開始したが、ボランティアの登録人数が大幅に増大しているという。
地元の非営利団体を支援しているネブラスカ州の組織シェア・オマハが「施しの火曜日」の寄付金額を調査したところ、今年は2019年に比べ2倍近くに増加し300万ドルを超えた。3分の1は寄付が初めてという人からだったという。同グループが今年前半、ホームレスのための食品パッケージなどの業務にボランティアを募集したところ、これまでは月平均200人だったのに対し、700人もの応募があったという。
シェア・オマハのエグゼクティブ・ディレクター、マージョリー・マース氏は「たとえ失業し、あるいは一時解雇されていても、人々はコミュニティに恩を返したいと思っている」と語る。
クリスマス前の月曜日、ミシガン州ウォレンの駐車場で、フォーガットゥン・ハーベストによる食糧配給を夜明け前から待つ車の列にいた数百人のなかに、ジャネット・マッケイブさんがいた。
マッケイブさんと彼女の夫は最近失業し、食糧配給に頼っていた。このNPOによる食糧配給に通うようになって1カ月半ほどになる。
「ボランティアの人たちは素晴らしい」とマッケイブさんは言う。「彼らがいなかったら、どうすればいいのか分からない」
(翻訳:エァクレーレン)
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