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アングル:落日の香港、北部が深センの「裏庭化」

ロイター / 2021年4月30日 12時32分

4月23日、中国の不動産開発業者が今、本土とつながる香港の北部地域に目を付けている。写真は2019年10月、深センから香港を臨む(2021年 ロイター/Tyrone Siu)

[香港 23日 ロイター] - 中国の不動産開発業者が今、本土とつながる香港の北部地域に目を付けている。隣接する深センの住民から、安価な住宅の供給源と見なされるようになったからだ。かつて世界的な金融ハブだった香港が、かつてへき地だった深センの「裏庭」と化す転機を迎えたとの見方もある。

香港の不動産市場は活況を保っているが、2019年の民主化要求デモや昨年の国家安全維持法導入で国際的な地位が圧力にさらされている。

対照的に深センは成長が続く。昨年10月には習近平国家主席が同地を訪れて「モデル都市」と称賛し、外国投資の誘致計画を表明した。わずか数十年前には活気の乏しい場所だったが、今や約1300万人が暮らすハイテク産業の拠点に変貌。かたや養魚池や農地が点在する香港北部には、本土から毎年数十万人が流入している。

深センはハイテク大手テンセント(騰訊控股)が拠点を置く南山など主要区で、住宅価格が既に香港北部を上回る例が出ている。香港北部は不動産価格の高い中心部から1時間余りの距離。

中国の不動産開発業者の幹部は「深センが中心になり、香港は周縁になるというのが長期的な見通しだ」と話した。この業者は、以前は人気のなかった香港北部で土地を取得した。「深センで働いている市民は、住宅価格が割安になる香港から通勤することを選ぶようになるかもしれない」と言う。

香港地政総署のデータによると、2019年以来、北部で6カ所の住宅地が入札に掛けられ、このうち3カ所を中国の不動産開発業者が落札した。

このほかに昨年、中国の不動産大手の中国恒大集団が香港の同業大手、ヘンダーソン・ランドから、深センに隣接した香港北部の土地25万平方フィートを6億ドルで取得した。

複数の不動産業者によると、中国恒大は香港北部に200戸の開発を計画しており、本土の顧客が主な買い手になると見込んでいる。中国恒大と関連のある不動産業者によると、1平方フィート当たりの取得価格は1万香港ドルで、販売価格は2万香港ドルを見込んでいる。

ひとたび深セン側に入れば、土地の価格は1平方フィート当たり3万香港ドルに迫る。

中国恒大は2018年にも、南山から車で15分の距離にあり、ビーチに近い香港・屯門の土地をヘンダーソン・ランドから8億3300万ドルで取得し、現在アパート2000戸を販売中だ。

深センの不動産会社、カイサ・グループ・ホールディングス(佳兆業集団)は昨年、4億5100万ドルで1区画を手に入れ、大手のチャイナ・バンカ(万科企業)は既に1100戸超を建設済みだ。

万科によると、建設地は広東省珠海市と香港新界離島区などを結ぶ海上橋、港珠澳大橋に近い。このため、グレイターベイエリア(粤港澳大湾区)内の都市の統合が進むことによって恩恵を受けそうだ。

<商品価格も値上がり>

不動産関連サービスのミッドランドによると、今年1-2月の中国本土市民による香港の住宅用不動産購入は前年同期比40%増加した。新型コロナウイルス危機が収まって深センと香港の間の移動制限がなくなるとの期待感からだ。

香港の新築住宅販売に占める本土市民の比率は、昨年第2・四半期に8.7%まで下がった。だが、今年第1・四半期には11%に上昇した。

ミッドランドによると、今年は価格が5000万香港ドル(640万ドル)を超える物件の取引が全体の80%超を占めた。

ミッドランドの香港住宅部門のトップ、サミー・ポー氏は「中国の不動産業者は香港市場に前向きだ。北部地区は中国の投資家が購入している地域の1つだ」と述べた。

屯門と元朗では、2019年に反政府・反中国のデモが頻繁に行われた。反政府行動が再発することはなさそうだが、緊張は残っており、昔からの住民は富裕な新規転入者によって生活スタイルを乱されていると感じている。

ウォンさん(50歳)は「屯門は、香港中心部よりも消費者向け商品の値段が高い。異常なことだ」と話した。

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