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アングル:上昇止まらぬ長期金利、疑心暗鬼の投資家が「売り材料探し」

ロイター / 2024年5月30日 18時4分

 5月30日、 円債市場で、長期金利の上昇に歯止めがかからない状態となっている。日銀本店前で3月撮影(2024年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

Tomo Uetake

[東京 30日 ロイター] - 円債市場で、長期金利の上昇に歯止めがかからない状態となっている。日銀の金融政策正常化プロセスを巡る不透明感から、疑心暗鬼に陥った投資家による「売り材料探し」の様相を呈しており、市場では日銀が来月13─14日の政策決定会合で国債買い入れ等に関する何らかの方針を示すまでは金利上昇基調が続くとの見方が多い。

長期金利の指標となる新発10年債利回りは30日、2011年7月以来約13年ぶり高水準となる1.1%に上昇。海外金利の上昇に追随した側面があるものの、円債市場の地合いがこのところ悪化している影響も大きい。

JPモルガン証券の山脇貴史債券調査部長は「10年の1%や30年の2%など、従来、節目と見られていた水準をあっさりと、大きな押し目買いなく上抜けしたことで、金利上昇がどこまで進むのか分からないという不安心理が広がっている」と指摘する。

山脇氏は、13日の定例の国債買いオペ(公開市場操作)で市場が想定していなかった残存「5─10年」ゾーンのオファーが減額され、「(日銀が)ステルス・テーパリング(秘密裏に行う緩和縮小)」を始めたことが発端となり、債券投資家の間で需給不安が高まったと話す。

<「売り材料」探し、買いが入らず>

投資家の疑心暗鬼を象徴するのが今週のイベントを受けた国債市場の値動きだ。

日銀の金融研究所が開催した国際コンファレンスで内田真一副総裁が行った基調講演は「国債買い入れ減額や追加利上げについてのヒントや衝撃的なコメントはなく、ニュートラルな印象」(国内運用会社)との感想が複数聞かれたが、市場は国債売り・金利上昇で反応した。値動き的には、講演を「タカ派的な内容」と受け取ったことになる。

もう1つの事例は、29日に日銀の安達誠司審議委員が熊本県金融経済懇談会で行った発言だ。「拙速な利上げは絶対に避けなければならない」、「予見性を持って(国債買い入れを)減額していくのはまだ早いのではないか」といったハト派的と受け取れる発言もあったが、マーケットはこれを無視するかのように、またしても国債売り・金利上昇で反応した。

三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは「それだけ地合いが悪いということ。違う局面であれば買いで反応したような材料が無視され、売り材料を探しているようだ」と指摘する。

投資家にとっては国債買い入れの減額の有無というより、減額の規模やペースといった進め方が見えないために「積極的に売られているというより、買いが入らない状況」という。

<日銀の回答は2週間後>

ただ、この不透明感を晴らす日銀の回答は、6月13─14日開催の金融政策決定会合まで得られない可能性が高い。このため、30日は2年利付国債入札の結果が好感され、いったん1.100%から1.055%まで低下した長期金利だが、向こう2週間は上昇圧力がかかりやすいと予想する向きが多い。

明日31日は午前中に日銀による定例の国債買いオペがあるほか、夕方には6月分の「国債買入れ予定」(通称「オペ紙」)の公表が予定されている。いずれも金額据え置きを見込む向きが多いが、23日の定例オペで応札額が予定額に届かない「札割れ」が起きたこともあり、「残存1─3年に近い中長期ゾーンが減額される可能性には一応警戒しておきたい」(みずほ証券の鈴木優理恵マーケットアナリスト)との声もある。

三井住友TAMの稲留氏は「投資家にとっては、日銀からの回答が(買い入れ)減額でも、不透明さがクリアになるだけでもいい。そうすれば金利水準に着目した買いが一定程度入り、金利は幾分低下するだろう」との見方を示した。

(植竹知子 編集:平田紀之)

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