アングル:解消に向かう米国債逆イールド、今回は景気後退指標として有効か
ロイター / 2024年7月30日 18時52分
7月29日、 景気後退のシグナルとされる米国債の長短利回り逆転(逆イールド)は過去最長かつ最大となっているが、解消が近づいている可能性がある。写真は3月、パウエルFRB議長の記者会見が中継されたニューヨーク証券取引所で撮影(2024年 ロイター/Brendan McDermid)
Davide Barbuscia
[ニューヨーク 29日 ロイター] - 景気後退のシグナルとされる米国債の長短利回り逆転(逆イールド)は過去最長かつ最大となっているが、解消が近づいている可能性がある。
ドイツ銀行によると、70年の歴史で起きた10回の景気後退のうち9回で、この逆イールド現象が必ず先行していた。しかし今、米経済は長い痛みを回避できるとの楽観論が広がっており、景気後退の予兆としての逆イールドの信頼性を疑問視する声も出ている。
オザイクのチーフ市場ストラテジスト、フィル・ブランカート氏は「現段階で景気後退の様相は見えない。今回は非常に異なる局面ではないかと思う」と語った。
昨年、複数の米大手金融機関は借り入れコスト上昇を理由に景気後退が発生すると予想したにもかかわらず、経済は底堅さを維持。ロイターが今月実施したエコノミスト調査では、向こう2年間で景気拡大が続くとの見通しが示された。今年の債券ストラテジストに対する調査でも、イールドカーブはもはや景気後退のシグナルとして信が置けないとの意見が多数派を占めた。
LPLファイナンシャルのチーフ債券ストラテジスト、ローレンス・ギラム氏は「データが示唆するほど完璧な指標ではないのかもしれない。目下、逆イールドは解消に向かっているが、それは景気後退のせいではなく、単に正常な右肩上がりのカーブに戻りつつあるだけだ」と述べた。
2年債と10年債の逆イールドは2022年7月序盤から続いており、その期間は1978年の最長記録を更新している。ただ逆イールドの幅は縮小し、24日にはマイナス14.5ベーシスポイント(bp)と発生以来で最小となったことが、トレードウェブのデータから分かる。
景気が減速すると市場は米連邦準備理事会(FRB)が利下げに動くと予想し、短期ゾーンの利回り低下幅が長期ゾーンよりも大きくなるので、イールドカーブは右肩上がりになるのが一般的。足元でも、景気が緩やかに鈍化する兆しが出ている中で、逆イールドが解消に向かってもおかしくない。
それでも一部の市場関係者は、近年のイールドカーブの歴史からは、まだ景気後退の可能性が残されていることがうかがえると警告する。
ドイツ銀が調べた全てのケースでは、景気後退が始まる前にイールドカーブは右肩上がりに戻っている。
2020年、2007─09年、2001年、1990─91年という直近4回の景気後退を見ると、2─10年のイールドカーブは景気後退発生までに右肩上がりに転じた。逆イールド解消から景気後退の開始までの時間差は、直近4回の場合約2カ月から半年までばらつきがある。
ペン・ミューチュアル・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジョージ・チポローニ氏は「われわれは重要なポイントに立っている。なぜならイールドカーブは右肩上がりの方向に進みつつあり、それは通常何らかのトラブルに突入する局面だからだ」と述べた。
デューク大学のキャンベル・ハーベイ教授によると、2─10年のほかに注目される3カ月─10年の期間でも直近4回の景気後退開始前に逆イールドは解消された。ハーベイ氏は、イールドカーブが景気先行指標になるとの考えを唱えた先駆者だ。
3カ月─10年は22年11月に逆イールド化し、26日時点でもなおマイナス109bpと幅が大きい。一方、このゾーンの逆イールド解消から景気後退開始までの最長時間差は22カ月なので、まだ逆イールドが景気後退シグナルとして間違っていると切り捨てるには早過ぎるという。
この記事に関連するニュース
-
トランプ次期大統領の財政政策への期待値だけではない…〈利下げ開始〉後も米金利が上昇し続けるワケ【マクロストラテジストが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月23日 9時15分
-
NY市場サマリー(22日)株・ドル上昇、長期ゾーン利回り低下
ロイター / 2024年11月23日 7時22分
-
NY市場サマリー(12日)ドル上昇、利回り上昇 株反落
ロイター / 2024年11月13日 7時31分
-
米追加利下げでドル/円は152円まで円高。これからの個人投資家のドル/円戦略は?
トウシル / 2024年11月8日 10時22分
-
米金利オプション市場、共和党の大統領・議会選「完勝」を想定
ロイター / 2024年10月30日 8時10分
ランキング
-
1副業を探す人が知らない「看板広告」意外な儲け方 病院の看板広告をやけにみかける納得の理由
東洋経済オンライン / 2024年11月23日 19時0分
-
2【独自】所得減税、富裕層の適用制限案 「103万円の壁」引き上げで
共同通信 / 2024年11月23日 18時57分
-
3《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン / 2024年11月23日 16時15分
-
4ローソンストア100「だけ弁当」第12弾は「イシイのミートボール」とコラボした「だけ弁当(イシイのミートボール)」
食品新聞 / 2024年11月23日 20時40分
-
5ドーミーイン系4つ星ホテル「3300円朝食」に驚愕 コスパ最高、味も絶品!極上のモーニングがここに
東洋経済オンライン / 2024年11月23日 8時40分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください