アングル:年後半も物価高、時間差で円安反映 経済対策膨らむ可能性
ロイター / 2024年7月30日 17時8分
足元で歴史的な円安に調整が入ったが、エコノミストからは為替由来の物価高は今後も続き、消費下押しに作用するとの見方が出ている。写真は東京都内で2022年10月撮影(2024年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
Kentaro Sugiyama
[東京 30日 ロイター] - 足元で歴史的な円安に調整が入ったが、エコノミストからは為替由来の物価高は今後も続き、消費下押しに作用するとの見方が出ている。年初からの急速な円安進行の影響が時間差を伴って反映されることが見込まれるほか、円安基調の長期化に伴う事業会社の為替予約切れもコスト上昇につながりかねない。個人消費が一段と落ち込めば、政府が予定する秋の経済対策が想定以上に大振りとなる可能性もある。
<160円の円安、価格転嫁はこれから>
食品業界では今秋に大規模な値上げラッシュが発生する──。帝国データバンクで食品の価格改定動向を調査している飯島大介氏は、こんな見立てをしている。世界的な天候不順による原材料高、「2024年問題」を受けた物流コスト増、賃上げに伴う労務費の価格転嫁のほか、一部原材料や包装資材の値上がりが見込まれる。
値上げ品目数は4月に2897品目と今年のピークを付けた後、直近3カ月は400─600品目台に落ち着いたが、年後半は10月にかけて再びピークを付けにいき、年間では1万5000品目程度の値上げが予想されるという。
J─オイルミルズは25日、サプライチェーン全般のコスト上昇を受けて10月1日納品分から家庭用食用油の価格を7─10%引き上げると発表。「無印良品」を展開する良品計画は22日、9月下旬からチョコレートやスナックなど菓子を中心に41品目を値上げするとしている。
帝国データの飯島氏は「今の値上げは昨年秋頃の円安を反映しているケースが多い」といい、年初来の150─160円の円安を見据えた値上げはこれから出てくると指摘する。
<想定レートと開き>
帝国データバンクが5月下旬に行った調査によると、想定為替レートを設定している2466社のうち、直接輸入のみを行っている企業の24年度の想定為替レートは1ドル145.89円だった。一時162円に迫ったドルは足元で155円近辺に調整しているが、想定と実勢では9円以上の開きがある。
あるメガバンク関係者によると、ドルが135─140円のところで3─5年先のレートを予約で固めている企業がある一方、急速な円安進行で「ノックアウト価格」に達し、予約した水準でドルを買う権利が消えてしまった企業もあるといい、為替ヘッジがうまく機能しているのは輸入企業全体の半数程度しかないイメージだと指摘する。
直近のレートを用いるスポット取引で決済している中国地方のある小売企業は、長引く円安が収益を圧迫。為替予約を検討したいが、米国の大統領選の動向や日米金融政策のタイミングなど変数が多く、なかなか予約に踏み切ることはできないという。これまで代替品の使用や大量購入などでコスト低減に取り組み、プライベートブランド(PB)などの店頭販売価格を抑える努力を続けてきたが、それにも限界がきたら「価格転嫁もやむを得ない」(経営企画担当)という。
みずほ銀行のチーフマーケットエコノミスト、唐鎌大輔氏は「100円ショップやPBを展開するディスカウント系などは同じようなことが起きているはず。価格競争力で勝負している商品に対し、いずれ原材料価格や仕入れ価格の上昇分を転嫁せざるを得なくなる」とみる。
<勢いのない消費>
都内に勤める40代女性は、小学生の子どもが夏休みに入り、食費がかさむ時期になったことを痛感している。おやつ用として冷凍庫に市販の箱入りアイスクリームを常備しているが、「感覚的には特売価格が昨年の通常価格」だという。直近の株高による資産効果や定額減税の実施などもあり、物価高の中でも国内旅行を楽しんでいたが、秋以降、さらに食品値上げがあった場合は「レジャーなど生活必需品以外の部分で節約して帳尻を合わせるかたちになるのでは」と話す。
大和証券のチーフエコノミスト、末廣徹氏は、今般の物価高は輸入物価の上昇に伴うもので、賃金と物価の好循環によるものではないと指摘。「消費者は物価上昇率の前年比が鈍化することよりも、安くなって価格が下がることを望んでいる。値上がりの傾向が続いているうちは、個人消費に回復の勢いは出ない」との見方を示す。
政府は、今春闘の力強い賃上げの動きや定額減税、最低賃金引き上げや期間限定で再開する電気・ガス代の補助などが家計を支えるとみているが、秋以降、想定に反して個人消費が落ち込みそうな場合は「秋の経済対策は大振りなものになる可能性もある」(政府関係者)という。
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