焦点:世界の大手企業、通期予想引き下げ 高金利と中国低迷が重し
ロイター / 2024年7月31日 6時51分
世界の大手企業が通期の業績予想を引き下げている。高金利と中国経済の低迷が消費者心理を圧迫していることが背景で、第2・四半期の増益決算に暗い影を落としている。写真はニューヨーク証券取引所で7月撮影(2024年 ロイター/Brendan McDermid)
Medha Singh
[30日ロイター] - 世界の大手企業が通期の業績予想を引き下げている。高金利と中国経済の低迷が消費者心理を圧迫していることが背景で、第2・四半期の増益決算に暗い影を落としている。
投資家はマクドナルド、日産、テスラ、ネスレ、ユニリーバなど多くの大手企業の決算に失望。米欧企業の約40%が決算を発表したが、利益はほぼ予想通りだった。ただ、世界的に株価が大幅に上昇した後だけに「ほぼ予想通り」の決算が投資家の失望を招いているようだ。
ザックス・インベストメント・マネジメントのクライアント・ポートフォリオ・マネジャー、ブライアン・マルベリー氏は「今シーズンの決算は、これまでのところ非常にまちまちだ」と指摘。金利の高止まりが企業を圧迫し、持続的な業績拡大が難しくなりつつあるとの認識を示した。
今週はアップル、マイクロソフト、サムスン電子、トヨタ、エクソンモービル、シェル、ロレアル、アディダスなどが決算発表を予定しており、市場が大きく動く可能性がある。
<高金利と中国経済の低迷>
企業は高金利と中国経済の低迷が利益を圧迫していると説明している。
マクドナルドは中国経済の低迷が響き、世界の既存店売上高が13四半期ぶりに減少。ユニリーバ、ビザ、アストン・マーチンなども中国経済の低迷を指摘した。アナリストは、長引く不動産不況と雇用不安が中国の消費を圧迫する限り、同国の需要拡大は見込めないと分析している。
DWSのポートフォリオマネジャー、ステファン・グエンター・バウクネヒト氏は「中国人は将来に不安があるため、消費に消極的だ」とし、中国は経済成長が上向くまで「主要地域で最弱の国、少なくとも最も予想を下回る国」になるだろうと述べた。
LSEGのデータによると、米国企業の1株利益は前年同期比で12%近く増加し、過去10四半期で最大の伸びを記録。バンク・オブ・アメリカ・セキュリティーズによると、欧州企業は市場予想をわずかに上回る4%の増益と、2022年以来初の増益を確保している。
同社によると、さまざまな業種で消費低迷が報告されており、業績予想の下方修正が増えている。LSEGのデータによると、米国企業は第3・四半期の予想を7月初め時点の前年同期比8.6%増から今月26日時点で7.3%増に引き下げた。
バンク・オブ・アメリカのアナリストはリポートで「第2・四半期決算は全体的にまずまずだが、市場は消費者のストレスの兆しに動揺している」と指摘する。
ネスレとユニリーバの上期の増収率はともに予想を下回った。ユーロ圏の2大経済国でも企業が悲観的な見方を強めており、ユーロ圏経済の回復の鈍さに対する懸念が強まっている。
ネスレのマーク・シュナイダー最高経営責任者(CEO)は電話会見で「消費者の間に割安な商品を求める動きが見られる。特に低所得層はプレッシャーを感じている」と語った。
自動車メーカーは米国で困難に直面しており、高水準の在庫と物流の問題がフォード・モーター、ステランティス、日産の利益を圧迫した。投資家はテスラの決算に失望。電気自動車(EV)の販売は鈍化しており、同社が大幅に過大評価されているとの見方が依然多い。
テスラや現代自動車にEV用バッテリーを供給するLGエナジー・ソリューションは今年20%以上の減収を予想。世界のEV販売が想定以上に鈍化していることが背景だ。ライバルである中国の寧徳時代新能源科技(CATL)も第2・四半期決算が13%の減収だった。
<高い期待がプレシャーに>
好決算を発表している企業も少なくない。
グーグルの親会社アルファベットはクラウドコンピューティング事業の売上高が好調で、今週決算発表を予定している他のハイテク大手企業にとっては良い兆候と言える。
3Mも決算発表を受けて株価が約2年ぶりの高値を付けた。ゼネラル・モーターズ(GM)とジョンソン・エンド・ジョンソンも好決算を発表。JPモルガンは過去最高益を計上した。
アジアの半導体メーカーも、人工知能(AI)ブームを背景に需要見通しに一段と強気になっている。
台湾積体電路製造(TSMC)の魏哲家会長兼最高経営責任者(CEO)は「AIは非常にホットだ。当社の全ての顧客がデバイスにAI機能を埋め込むことを望んでいる」と語った。同社の株価は今年56%値上がりしている。
こうした明るい見通しにもかかわらず、アジアの大手半導体メーカーには、市場の高い期待に応えるというプレッシャーがかかっている。これはエヌビディアの株価にも見て取れる。同社の時価総額は今年3兆ドルを突破した後、伸び悩んでいる。
BNK投資証券のアナリスト、イ・ミンヒ氏は「投資家の期待は非常に高く、期待に応えるのは難しいかもしれない。短期的には株価がそれほど上昇しない可能性がある」と述べた。
MSCIインターショナル指数は、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測などを背景に今年11%上昇。今月ピークを付けたが、その後反落している。
チェリー・レイン・インベストメンツのパートナー、リック・メックラー氏は「利下げ観測が続く限り、アナリストが全体として来年の業績予想を引き下げることはないだろう」と述べた。
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