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アングル:米で激化する電力確保競争、巨大ITはマイニング施設に照準

ロイター / 2024年8月31日 8時10分

 8月28日、米巨大IT企業が、暗号資産(仮想通貨)ビットコイン採掘事業者からエネルギー資産を取得しようとする動きが広がりつつある。写真はペンシルベニア州ケナーデルの発電所の近くに設置されたマイニング施設。2022年3月撮影(2024年 ロイター/Alan Freed)

Laila Kearney Mrinalika Roy

[28日 ロイター] - 米巨大IT企業が、暗号資産(仮想通貨)ビットコイン採掘事業者からエネルギー資産を取得しようとする動きが広がりつつある。急拡大する人工知能(AI)やクラウド関連事業に必要なデータセンター向けの電力確保が目的だ。

米国の電力需要においてデータセンターは最も高い伸びを見せており、アマゾン・ドット・コムやマイクロソフトといった巨大IT企業は、さまざまな方面から膨大な電力をかき集めなければならなくなっている。

電力確保競争が、電力使用量の多い仮想通貨採掘業界を揺るがしている。一部の採掘事業者は、電力に接続済みのインフラを巨大IT企業にリースしたり、売却したりして多額の利益を手にしているが、本業に必要な電力を失ってしまう事業者も出ている。

ビットコイン採掘の上場企業ストロングホールド・デジタル・マイニングのグレッグ・ベアード最高経営責任者(CEO)は「AIの覇権争いは、世界で最も大きく資本力のある企業による戦いで、彼らは勝利のために命がけになっている。電力にいくらの対価を払うか気にしているかと言えば、恐らく気にしていないだろう」と述べた。

エレクトリック・パワー・リサーチ・インスティテュートが5月に試算したところでは、テック各社が情報処理拠点拡充に巨額の投資を進める中で、データセンターが2030年までに米国の発電総量に占める消費比率は最大9%と、現在の2倍を超える見通しだ。

国際エネルギー機関(IEA)によると、現在世界の電力消費におけるデータセンターの比率は約1-1.3%、仮想通貨採掘は0.4%前後だが、この差はこれから広がるとみられる。

複数のアナリストの見立てでは、27年末までにビットコイン採掘事業者の電力の2割が、AI事業に転換されるという。

過去1年では、ビットコイン採掘事業者とAI向けデータセンター所有者が同じインフラを巡って争う構図がより鮮明化したと、米国で上場している仮想通貨採掘企業の幹部6人以上がロイターに語った。

例えば事情に詳しい2人の関係者の話では、世界最大の上場ビットコイン採掘企業マラソン・デジタル・ホールディングスは、ペンシルベニア州にあるタレン・エナジー所有の原子力発電を利用したデータセンターに目を付けていた。

ところが時価総額でマラソン社の350倍以上となるアマゾンが3月にこのデータセンター買収を発表し、ニューメキシコ州のほぼ全家庭向け供給量に匹敵する電力を手に入れた。

<高まる関心>

自前の土地や電源を持つ多くの大手採掘事業者は、仮想通貨採掘への専念から、これらの不動産とエネルギーサービスをAIやクラウド事業に振り向ける形に戦略を転換している。

ニューヨーク州に最大770メガワット(MW)規模の施設を所有しているビットコイン採掘会社テラワルフのケリー・ラングレス最高戦略責任者は「アマゾンないしグーグルなど全て(のIT企業)がわれわれに関心を示している」と語った。

6月に仮想通貨採掘会社コア・サイエンティフィックが電力とつながった自社施設をエヌビディアが支援するコアウィーブに67億ドルで12年間リースすることに合意したと発表したのを契機に、複数の採掘事業者が施設のリースや、AIデータセンター開発の下請けの契約をまとめている。

これまでデータセンターの消費電力は約20MWが一般的だったが、最近では最大1000MW規模のものが建設されつつある。ただ、米国では新たな電力を確保できるまでには数年かかる場合がある。

そうした中で、採掘事業者にとって、自前のエネルギー資産をAIやクラウド向けに活用できれば、その資産価値は最大で5倍に高まることがモルガン・スタンレーの調査で分かっている。一方巨大IT企業は、採掘事業者から少なくとも100MWの電力を買収もしくはリースで調達すれば、データセンター立ち上げまでの期間をおよそ3.5年短縮し、数十億ドルの費用を浮かせられるという。

<高いハードル>

とはいえ、採掘事業者から巨大IT企業への電力や関連インフラの受け渡しは、大半はすんなりとはいかないようだ。

今後も仮想通貨採掘を中核事業にするというクリーンスパークのザック・ブラッドフォードCEOは「AIに進出すると言っているほとんどのビットコイン採掘業者は、実際にどうなるか本当に分かっていない」と話す。

ブラッドフォード氏によると、米国のビットコイン採掘施設の約90%は半年から1年で建設されるのに対して、より高度な技術が求められるデータセンターは3年かかる。また採掘施設をAIやクラウド向けに転用するには、特殊な冷却装置などを導入しなければならないという。

採掘事業者に設備やサービスを提供するEZブロックチェーンのセルギー・ゲラシモビッチCEOは、22年のビットコイン暴落以降に資金調達面で制約が大きくなった多くの採掘事業者にとって、AI向けデータセンター建設コストの高さがハードルになるだろうとの見方を示した。

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