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焦点:米鉱物企業、政府融資の獲得急ぐ トランプ氏返り咲き警戒

ロイター / 2024年8月30日 12時43分

 8月29日、 バイデン米政権は、重要鉱物の国内生産拡充やエネルギー移行促進に向け、鉱物企業がエネルギー省の融資制度を活用できる仕組みを導入した。カリフォルニア州マウンテンパスのMPミネラルズの鉱山で2020年1月撮影(2024年 ロイター/Steve Marcus)

Ernest Scheyder

[29日 ロイター] - バイデン米政権は、重要鉱物の国内生産拡充やエネルギー移行促進に向け、鉱物企業がエネルギー省の融資制度を活用できる仕組みを導入した。共和党大統領候補のトランプ前大統領が返り咲けば、その制度が利用できなくなるのではないかとの警戒感が広がり、米国の関連企業や電池リサイクル業者が来年1月までに融資を獲得しようと大急ぎで作業を進めている。

今年に入ってリチウムやニッケルなど鉱物の価格が急落した上、電気自動車(EV)の販売が予想を下回ったため、民間の金融業者の間で不安が拡大。事業拡大や中国勢との競争で、保守的な鉱業界としては珍しく政府支援を頼りにするようになっている。

米エネルギー省の融資プログラム局(LPO)はバイデン政権下、リ・サイクル、アイオニア、リチウム・アメリカズ、レッドウッド・マテリアルズなど、電池リサイクルやEV向け鉱物加工施設の建設を予定する21社に計約250億ドル(約3兆6200億円)の条件付き融資を提供する方針を決めた。融資の実行には最終承認が必要で、それには時間がかかる。

韓国のQセルズなど太陽光発電会社やプラグ・パワーなど水素関連企業も条件付き融資を受けているが、こうした計画は部分的に国内の重要鉱物の供給に依存しており、鉱業への資金提供は米国のエネルギー移行にとって重要な意味を持つ。

LPOの平均融資額は10億ドル。融資を実行する前にLPOなどさまざまな政府機関から審査を受けなければならない。

ただトランプ氏が「EVの義務化を終わらせる」と宣言し、トランプ政権にいたメンバーらが政権奪還を想定してまとめた政策集「プロジェクト2025」にLPOの閉鎖計画が盛り込まれていることから、鉱業企業など関係者はバイデン氏の退任前に融資を締結しようと奔走。インタビューした20余りの業界幹部、コンサルタント、投資家、アナリスト、政策立案者によると、残された時間が短いため、間に合わない案件が出そうだという。

政府融資を受けられなければ国内で多くの重要鉱物プロジェクトが計画段階で凍結される恐れがある。そうなれば中国ライバル企業が安価な製品により金属市場でシェアを拡大する中、西側のEVサプライチェーン(供給網)が深刻な打撃を受ける可能性がある。

LPO融資が保留中となっている企業の幹部は、トランプ氏は「何をするか分からない」ため、来年1月の次期大統領就任前に融資を確定させたいと話した。

3人の消息筋によると、LPOのスタッフは融資の申請者に対して、プロジェクトの信用度などを厳密に審査する必要があるため、1月までに多くの未決案件を確定することはできず、ほとんどの案件は次期大統領が対処することになると伝えている。

LPOを管轄するエネルギー省の報道官は、こうした連邦政府のプログラムは政権が変わってもそのまま継続されると述べた。

LPOの職員数は現在、バイデン大統領とハリス副大統領が2021年1月に就任した当時の90人から400人程度に増強されている。

トランプ氏が政権第1期中に実施したLPO融資は、オバマ政権下でも融資を受けたジョージア州の原子力プロジェクト向け1件のみ。退任1カ月前に融資の指針を変更し、重要な鉱物プロジェクトの申請を受け付けるようにしたが、それ以外LPOの出番はほとんどなかった。

消息筋によると、トランプ氏復帰を巡る不透明さはインフレ抑制法(IRA)のLPO向け資金がどのように使われるかに集中している。LPOは議会が資金の決定権を握っているため、トランプ氏が勝手に閉鎖することはできないが、融資の承認プロセスを極めて遅らせることにより、申請者に利用を諦めさせようとする可能性がある。

<申請中のプロジェクト>

LPOは2010年にテスラを破産から救うために4億6500万ドルの融資を提供したことで知られる。LPOのトップは昨年、バイデン政権下で厳格な審査手続きを実施しており、申請者の3分の2以上が審査手続きを進めるのに支援を必要としていると述べている。

国内の鉱業プロジェクトで融資の実行が遅れれば、カソードや電池施設の製品供給計画が揺らぐ恐れもある。

ネバダ州では、アイオニアがリチウムプロジェクト(総費用10億ドル)向けに7億ドルのLPO融資を締結しようとしている。ゼネラル・モーターズ(GM)が支援するリチウム・アメリカズは、トランプ氏が退任5日前に承認した約30億ドルのリチウム開発プロジェクトに着手しており、同プロジェクトの資金の大部分はGMが12月までに締結する予定の22億6000万ドルのLPO融資で賄われる予定だ。

リサイクルのスタートアップ企業リ・サイクルとレッドウッドもLPO融資を締結しようと作業を急いでいる。レッドウッドは20億ドルの融資を条件付きで承認され、昨年に締結されるはずだったが、まだ実行されていない。

LPO融資を申請している別の経営幹部は、トランプ氏がEVの普及を理解していると信じていると話し、共和党員の中にもこうした見方がある。しかしトランプ氏が第2期に鉱業などの企業を支援することには価値があると考えるか、それとも「プロジェクト2025」の目標を達成しようとするのかを巡り、経営幹部の間では不安が渦巻いている。

融資を申請している3人目の幹部は、トランプ氏の発言が「レトリックなのか実際の政策なのかはっきりしない」と心配を口にした。

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