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アングル:組織に内通者か、指導者殺害許したヒズボラ 猛攻受け弱体化

ロイター / 2024年9月30日 17時12分

 9月28日、 親イラン民兵組織ヒズボラは、戦闘員らが所持する通信機器の一斉爆発からわずか1週間後に、指導者ナスララ師をイスラエルによる空爆で殺害された。写真は29日、イスラエルの攻撃で指導者ナスララ師が殺害されたベイルート近郊の現場で撮影(2024年 ロイター/Ahmad Al-Kerdi)

Samia Nakhoul Parisa Hafezi Maayan Lubell

[28日 ロイター] - 親イラン民兵組織ヒズボラは、戦闘員らが所持する通信機器の一斉爆発からわずか1週間後に、指導者ナスララ師をイスラエルによる空爆で殺害された。同師の居場所は厳重に隠されてきただけに、今回の攻撃により、敵対勢力による組織への浸透が深いレベルに及んでいることが浮き彫りになっている。ヒズボラはこれまで指揮官の素早い交代で組織的な危機を乗りこえてきたが、最近はイスラエルの猛攻による消耗が激しく、弱体化が進んでいる。

ロイターはナスララ師殺害の数日前から数時間後にかけてレバノン、イスラエル、イラン、シリアの10人を超える情報源を取材した。イスラエルの攻撃によりヒズボラが受けた損害、とりわけ補給線や指揮系統への打撃について具体的な情報を入手した。特別な配慮が必要な問題だとして、全情報源が匿名を条件に取材に応じた。

イスラエルの動向に詳しいある情報源は今回の攻撃前24時間以内の取材で、イスラエルは20年間にわたってヒズボラ情報の収集に力を入れており、ナスララ師をいつでも攻撃できると述べた。詳細には触れなかったが、イスラエルの情報活動は「卓越している」と胸を張った。

イスラエル当局者2人は、イスラエルのネタニヤフ首相と側近の閣僚がヒズボラ司令部に対する攻撃を承認したのは25日だったと明らかにした。

ナスララ師は2006年に起きた前回の大規模な戦闘以降、公の場にほとんど姿を現していなかった。同師の警備体制に詳しい関係者によると、常に警戒を怠らず、動静が外部に漏れないよう厳しい制限が敷かれ、面談する人物の範囲も非常に限られていた。この関係者は、ナスララ師暗殺はイスラエル内通者が潜入していたことを示していると述べた。

9月17日の通信機器一斉爆発以来、ナスララ師は一層慎重になり、イスラエルによる暗殺を懸念していたと、ヒズボラの内部事情に詳しい治安関係者が1週間前にロイターに語っていた。指揮官の葬儀を欠席し、数日前に放送された演説も事前に録音されたものだったという。

スウェーデン国防大学のマグナス・ランストープ氏は今回の攻撃について「ヒズボラにとって大きな打撃で、情報活動の失敗を示している。ナスララ師が他の指揮官と会議に入っているという情報がもれ、一気に襲撃された」と指摘した。

イスラエル軍によると、ナスララ師を含め今年ヒズボラの最高幹部9人中8人を殺害し、そのほとんどが過去1週間に実行された。この中には精鋭部隊「ラドワン部隊」の隊長も含まれる。

イスラエル軍のショシャニ報道官は28日の会見で、ナスララ師や他の指導者が集まっていることを「リアルタイム」で把握していたと述べたが、情報の入手方法には触れなかった。

また、イスラエルのハツェリム空軍基地の司令官であるレビン准将は「この作戦は入り組んでおり、練り上げるのに長い期間をかけている」と述べた。

<大損害>

ヒズボラは指揮官の差し替え素早く、ナスララ師の従兄弟のサフィエディン師が後継者と目されている。欧州の外交筋はヒズボラの指揮体制の特徴について「1人が殺害されても次の指導者が現れる」と述べた。

米国とイスラエルの推定によると、ヒズボラは最近の事態緊迫化前の時点で戦闘員が約4万人に上っていた。豊富な武器備蓄を持ち、イスラエル国境付近に広大なトンネル網も築いている。1982年にレバノンで設立されたシーア派の民兵組織であり、イランが支援する反イスラエル勢力の中で最強とされる。

イランから数年にわたり支援を受け、米国の推定によれば計15万のロケット弾、ミサイル、ドローンを保有。イスラエルの推計によると、保有武器の規模は2006年の10倍に達している。

しかしこの10日間で物的にも心理的にも弱体化が進んでいる。

イスラエルの最近の攻勢によるヒズボラの武器備蓄の被害状況について具体的な推計はほとんどない。中東のある西側外交筋は今月27日のイスラエルによる攻撃前に、ヒズボラは最近ミサイル能力の20-25%を失ったと述べたが、推計の基になる資料等は示さなかった。

イスラエルの治安当局者は、ヒズボラのミサイル備蓄の「かなりの部分」が破壊されたと述べたが、具体的な内容には触れなかった。

<イランの関与>

ナスララ師への攻撃前にイランの情報筋3人がロイターに対し、イランがヒズボラにミサイルを追加で送る計画を立てていると明らかにしていた。

初出のイラン情報筋は、提供される予定の武器にはイランの短距離ミサイル「ゼルザル」の他に中距離弾道ミサイル、精度を高めた改良型「ファテフ110」が含まれていることを明らかにしていた。

ナスララ師の暗殺後、これらの情報源には接触できていない。

イランの2人の情報筋は、イランはヒズボラに軍事支援を提供する方針ではあるものの、ヒズボラとイスラエルの対立に直接関与することには消極的だと述べた。

シリアの軍情報機関の幹部によると、ヒズボラは先週のイスラエルによる攻撃で破壊されたミサイルやドローン、ミサイル部品の補充が必要となっている可能性がある。

これまでイランからの物資は空路や海路でヒズボラに届いていた。しかしレバノン運輸省の関係者によると、イスラエルがベイルート空港の航空管制に対し、イラン機が着陸した場合には武力を行使すると警告したため、同省は28日、イラン機にレバノンの空域に入らないよう通知した。このイラン機の積み荷は不明だという。

イランの治安当局者はミサイルや部品、ドローンを輸送する最も良いルートはイラクとシリアを経由する陸路であり、両国の同盟勢力の支援もあると語っていた。

しかし、シリア軍関係者によると、イスラエルのドローンによる監視やトラックを狙った攻撃のため、このルートは危険になっている。ロイターは6月、イスラエルはヒズボラの弱体化を狙い、今年に入ってシリアでの武器庫や補給路への攻撃を強化していると報じていた。

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