焦点:中国EVスタートアップに活気戻る、好調なテスラが刺激
ロイター / 2020年9月30日 16時13分
[北京 25日 ロイター] - 中国で電気自動車(EV)を手掛けるスタートアップ企業が、活気を取り戻している。原動力は米EV・大手テスラ
中国では、テスラ車の滑らかなデザインと最先端技術への人気が高まっている。これに触発される形で、中国版テスラを夢見るスタートアップ企業の「第2陣」が今、資金調達や生産拡大、販売促進の動きを活発化させている。
中国におけるEVスタートアップの上海蔚来汽車(NIO)
4社のライバル、愛馳汽車(Aiways)は新規株式公開(IPO)を計画している。26日開幕の北京モーターショーを前に、フー・シャン社長がロイターに語った。
フー氏の上場意欲に火を付けたのは、小鵬汽車と理想汽車による米国でのIPOがひとまず成功を収めたことだ。
上海で2017年に創業した愛馳汽車が、これまで調達したのは「100億元にとどまって」おり、プライベートエクイティ企業やその他の投資家から、もっと資金を確保する必要があるとフー氏は言う。
「IPOも計画に入っており、進めていく考えだ」とし、中国国内で上場する可能性が高いとも述べた。
中国のEV市場は、政府の「新エネルギー車(NEV)」購入補助制度に後押しされ、世界最速の急成長を遂げてきた。しかし、昨年は補助金の削減が始まり、その他のEV促進政策も骨抜きになったことで、EV販売ブームは失速した。
これにより、拜騰汽車(バイトン)や奇点汽車(Singulato)といったEVスタートアップは不振に陥り、上海蔚来汽車の先行きにも暗雲が漂った。
だが、テスラの株式時価総額が膨れ上がり、中国での販売が急増したことは、同国の「EVドリーム」の終わりにはまだ、ほど遠いことを示している。
中国の自動車専門家、マイク・ダン氏は「EVスタートアップの命運は、テスラ株の行方とともにある。春には川のごとく資金流入が復活した。テスラがけん引役となり、思ったより早く、各社が将来に向けて動きだしそうだ」と話した。
<玄関を出たところ>
LMCオートモティブによると、テスラの中国販売台数は今年1―8月、コロナ禍にもかかわらず前年同期に比べ3倍近くに増えて7万3658台となった。
一部の中国自動車メーカー幹部は、中国におけるテスラ車の位置付けをアップルの初代スマートフォン「iPhone(アイフォーン)1」に例える。まだ、非常に多くの技術進歩が起こりそうで、中国メーカーに希望をもたらしているという。
愛馳汽車のフー社長によると、中国でEV人気が復活した一因は、多くの新モデル車が搭載し始めたインテリジェントドライブ機能(運転支援機能)や、インターネットに接続するコネクテッドカー技術の魅力にある。
フー氏は「現在のスマートカー、コネクテッドカーはまだ、スマートではない。やっと玄関を出たところで、初代のiPhone1の段階にあると言えそうだ」と説明する。
ただ、徐々に開発が進み「近い将来にiPhone8、9、10にたどり着けるだろう」と見ている。
また、燃料費の安さも、EV人気の重要な要素となっている。最近、ガソリン車から愛馳汽車のスポーツ多目的車(SUV)「U5」に切り替えた江蘇州蘇州市の男性は、自宅の車庫に充電設備を整えて使い始めたが「ガソリン車に比べると(燃料費は)無きに等しい」と語る。
<個人が保有>
中国のEVスタートアップ「第1陣」は主に、ライドシェア企業の滴滴出行や配車サービス企業に納入やリースを行っていた。EV促進政策の恩恵を受けていた企業だ。
しかし、愛馳汽車や上海蔚来汽車のトップは、今市場を引っ張っているのは個人や、EVへの純粋な関心だと実感している。
特に顕著な例は、テスラのセダン「モデル3」の好調ぶりだ。同車種は購入補助後の価格が27万元(3万9750ドル)と、多くの顧客が比較的手ごろと考える値段設定となっている。
拜騰汽車や奇点汽車のように、昨年の落ち込みからまだ、立ち直れない企業があるのも確かだ。
しかし、スタートアップ幹部らは、今年は昨年に比べて資金調達が著しく容易になり、自信も増してきたと語っている。
<需要は好調>
新エネルギー車の販売は1年余り前から落ち込み始め、今年6月まで12カ月にわたって前年同月比で減少を続けていた。だが、今年7月は19.3%増と反転し、8月には26%も増えた。
LMCオートモティブの予想では、新エネルギー車の乗用車の販売は今年8.9%減少するが、来年は48.4%増えて152万台に達し、全乗用車販売の7%を占めそうだ。
上海蔚来汽車の場合、第2・四半期に販売台数が急増して売上総利益率が黒字転換。営業損失も大幅に縮小した。
同社のリー最高経営責任者(CEO)は、ロイターに対し「需要は非常に強い。今わが社に新車を注文しても、納入まで相当長い間お待たせすることになる。わが社にとって、第4・四半期の一番の課題は生産能力の向上だ」と語った。
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