G20、温暖化抑制へ有意義な行動促す 具体策乏しく
ロイター / 2021年11月1日 8時40分
20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は31日、地球温暖化の抑制に向けた「有意義で効果的」な行動を促すことを盛り込んだ首脳宣言を採択した。ただ、具体的な目標はほとんど示されず、環境活動家からは批判の声が上がっている。写真は議長国イタリアのドラギ首相、ローマで撮影(2021年 ロイター/Yara Nardi)
[ローマ 31日 ロイター] - 20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は31日、地球温暖化の抑制に向けた「有意義で効果的」な行動を促すことを盛り込んだ首脳宣言を採択した。ただ、具体的な目標はほとんど示されず、環境活動家からは批判の声が上がっている。
英グラスゴーで同日開幕した第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)に多くの作業を残す形となった。
バイデン米大統領は、より大きな成果をあげられなかったのは残念だとし、中国とロシアが気候変動対策でコミットメントを示さなかったと批判した。
G20は海外の石炭火力発電への融資を停止することで合意したが、国内での段階的廃止については時期を示さず、強力な温室効果を持つメタンの排出削減についても草案段階より文言を弱めた。
だが、議長国イタリアのドラギ首相は、世界の気温上昇を1.5度以内に抑えることの重要性について全てのG20メンバーが初めて合意したとして成果を強調した。
国連の専門家らは、干ばつや豪雨、洪水など異常気象の急激な増加を回避するには気温の上昇幅を1.5度以内に抑える必要があるとしており、そのためには2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにすべきとしている。
首脳宣言では「われわれは(気温上昇幅)1.5度での気候変動の影響が、2度の場合よりはるかに小さいことを認識している。1.5度を実現可能なものとするためには、全ての国による有意義で効果的な行動とコミットメントが求められる」と表明した。
温暖化ガスの排出を実質ゼロにする目標については、「今世紀半ばごろ、もしくはそれまで」に実現することの「重要な意義」を認識するにとどまり、草案段階で盛り込まれていた「2050年」の記述が削除された。
世界最大の二酸化炭素(CO2)排出国である中国は実質ゼロの目標を2060年に設定しており、インドやロシアなど他の大規模排出国も2050年の目標にコミットしていない。
ドイツのメルケル首相は、今回の合意はCOP26に向けた前向きなシグナルだと評価した。
一方、カナダのトルドー首相は「他のいくつかの国と同様、カナダが気候変動との闘いで他国より強い文言と強いコミットメントを望んでいたのは明らかだ」と述べ、より野心的な合意を望んでいたことをうかがわせた。
ドラギ首相は、各国が今後数年間で排出削減計画の改善を重ねていくとの見方を示し、中国やロシアなどの国がここ数日でかなり姿勢を変化させたことに驚いたと述べた。
首脳宣言では、今年末までに海外の石炭火力発電所への融資を停止すると明記する一方、石炭火力の段階的廃止については具体的な時期を示さず、「できるだけ早期に」との表現にとどめた。
草案段階では2030年代末までの実現を盛り込んでいたことから、石炭への依存が大きい国から強い反発が出たとみられる。
化石燃料補助金の段階的廃止についても時期を設定せず、「中期的」な実現を目指すとするにとどめた。
CO2より温室効果が強力とされるメタンの排出については、「(G20)全体の排出量の大幅削減に努める」としていた草案から文言を弱め、「気候変動を抑制する上で(メタン排出削減が)最も迅速かつ実行可能で、費用効率が高い方法の一つ」と指摘するにとどめた。
G20関係者によると、途上国の気候変動対策を支援するため先進国が2020年までに年間1000億ドルを提供することを約束した「気候ファイナンス」を巡っても激しい議論が交わされた。
先進国は約束を果たしておらず、途上国の間では不信感や排出削減加速に消極的な姿勢が生まれている。
ただ、ドラギ首相は、資金拠出の不足は200億ドル以下に縮小しており、今後さらに目標額に近づくとの見方を示した。
COP26は11月1─2日に各国首脳の演説が行われ、新たな排出削減目標などが示される可能性もある。
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