アングル:有罪評決のトランプ氏、ゼロでない刑務所行きの可能性
ロイター / 2024年5月31日 15時52分
5月30日、トランプ前米大統領が不倫口止め料を不正に会計処理したとされる事件で、ニューヨーク州地裁の陪審が有罪評決を下した。写真は同日、裁判所に到着したトランプ氏(2024年 ロイター/Eduardo Munoz)
Luc Cohen
[ニューヨーク 30日 ロイター] - トランプ前米大統領が不倫口止め料を不正に会計処理したとされる事件で、ニューヨーク州地裁の陪審が30日に有罪評決を下した。これを受けて量刑を決める審理を7月11日に開くと決めた担当判事のフアン・マーシャン氏は、米大統領経験者で11月の選挙にも立候補している人物を、刑務所に送るべきかどうかという歴史的な決定を迫られることになる。
12人の陪審員は、事件に関する全部で34の罪状で有罪と判断した。
ニューヨーク州の場合、トランプ氏が起訴された業務記録改ざんで刑務所行きの実刑判決が出されることは滅多にない。
ただ、2009年に小切手換金に絡む業務記録改ざんの罪を認めた後で3年の執行猶予判決を受けた被告人を担当した弁護士のアンドルー・ワインスタイン氏は「今回の件は初犯のホワイトカラーの被告人が投獄の判決を受ける典型的なケースではない。しかし、トランプ氏に関しては全てが(通常とは)異なっている。彼は別の生き物である以上、過去の判例を参考にできるとは思わない」と語った。
トランプ氏は16年の大統領選直前、不倫関係にあったと訴える女性への口止め料として13万ドルを支払い、立て替えた顧問弁護士への弁済に当たって一族企業の帳簿や小切手で「法務費用」と偽った罪に問われた。
検察側はこの口止め料支払いが、選挙資金法や税法の違反というより重い罪の一部を構成していると指摘した。一方、トランプ氏側は無罪を主張し、不倫関係も否定。有罪判決が出た後に控訴することはほぼ間違いないだろう。
業務記録改ざんの量刑は、最高で4年とされている。
ロイターが取材した6人の法律専門家の話では、トランプ氏のような過去に犯罪歴がなく、業務記録改ざんだけの罪で起訴された人物がニューヨーク州で刑務所に送られることは極めて珍しく、罰金刑などがより一般的だ。
それでも収監される可能性はゼロではなく、現時点でトランプ氏がどのような処罰を受けるのか予想するのは時期尚早だという。
マーシャン判事は判決に際して、16年の選挙との関係を踏まえた業務記録改ざんの重大性や、トランプ氏が罪を認めずに法廷闘争の道を選んだ点を考慮するかもしれない。
トランプ氏を起訴したアルビン・ブラッグ検事は、実刑判決を求めるかどうかについてコメントを拒否した。
<初犯者で刑務所行きも>
検察側は昨年11月に裁判所に提出した文書で、トランプ氏を起訴する前に業務記録改ざんを理由とした起訴は437件あったと説明している。
ロイターはこれら全てを調べたわけではないが、法廷記録に基づくと業務記録改ざんの罪を認めた少なくとも4人の被告人が、1年ないしそれ未満の実刑判決を受けたことが分かる。このうちの3人は、トランプ氏と違って詐欺や重窃盗罪でも起訴されていた。
残る1人は15年12月に、収賄事件における業務記録改ざんの罪を認めた建設業界の企業幹部で、毎週特定の時間だけ刑務所で過ごすことを命じられた。具体的には月曜の夜から水曜の朝まで刑務所に入り、それ以外は自由な生活ができる。
元検事のタニシャ・パルビア氏は「業務記録改ざんの罪で被告人が相当な期間刑務所に送られるというのは、恐らくそれほど頻繁ではない。だが、この分野の判決は裁量の余地が大きいので、初犯者が刑務所行きという話がないこともない」と述べた。
<判決は芸術>
マーシャン判事もトランプ氏が投獄される可能性を認めている。4月16日の陪審員選任手続き時には「トランプ氏がこの事件で有罪だと判明した場合、実刑判決を受ける可能性があることは誰もが承知している」と指摘した。
他方、24時間警護を受ける大統領経験者で今回の選挙戦に出馬もしている人物を刑務所に入れるとなれば、未曾有の課題も生まれてくる。マーシャン判事は、裁判所関係者や刑務官、警護担当者らの負担への懸念も示しつつ「私にとって投獄(の判決)は本当に最後の手段だ」と語っている。
マーシャン判事が目を向ける可能性があるもう1つの要素は、トランプ氏が法廷で争う方針を採用したという事実だ。当然どの被告人にもその権利はあるが、責任を認めて悔い改める姿勢を見せた被告人は、裁判官の心証が良くなる傾向がある。
ニューヨーク・ロースクール教授で元検事のレベッカ・ロイフィー氏は、トランプ氏が投獄される可能性について「予測は難しいが、不可能でないという意見に賛成する。判決は芸術であり、科学ではない」と述べ、個別裁量余地が大きいとの見方を示した。
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