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焦点:日銀利上げ、来年度にかけ1%も視野か 0.5%超えは難路

ロイター / 2024年7月31日 20時26分

日銀が追加利上げに踏み切ったが、日銀内には中立金利を意識し、来年度にかけて1%までの利上げを視野に入れる声も出始めている。写真は会見に臨む植田総裁。日銀本店で31日撮影。(2024年 ロイター/Issei Kato)

Takahiko Wada

[東京 31日 ロイター] - 日銀が追加利上げに踏み切ったが、日銀内には中立金利を意識し、来年度にかけて1%までの利上げを視野に入れる声も出始めている。植田和男総裁も、政策金利について2006年以降の前回利上げ局面でのピーク0.5%が「壁」になるとは思っていないとする。しかし、秋以降は米大統領選挙など日銀のシナリオを狂わせかねないイベントが相次ぐ。日銀財務への懸念も含めて、利上げ戦略は難路となりそうだ。

<今回の利上げ、実質金利がきわめて低い中での「少しの調整」>

植田総裁は31日、金融政策決定会合後の記者会見で、現状の実質金利が非常に低いことを強調し、0.25%への利上げでも実体経済への影響は出ないと述べた。

この日の声明文には、現在の実質金利が極めて低い水準にあるとの記述が2度登場し、利上げ決定を後押しした要因の1つだったことをうかがわせる。植田総裁は会見で、今回の利上げが実質金利が非常に低い中での「少しの調整」に過ぎず、「強いブレーキが景気等にかかるとは考えていない」と明言した。

植田総裁は、利上げの主たる理由として、経済・物価情勢が展望リポートで示してきた想定に沿って進捗していたことを挙げた。決定会合前、日銀では個人消費の回復がデータで確認できることが必要との声が根強かったが、総裁は「個人消費は底堅い」と発言。賃金上昇が個人消費を支えていくことに期待感を示した。

<年度内にあと2回利上げの声も>

日銀では、経済・物価情勢が順調に進めば来年度にかけて政策金利を1%まで引き上げておくのが望ましいとの声が出ている。7月の追加利上げを踏まえ、年内にあと1回、来年の春闘を見ながら来年1―3月期にもう1回利上げすれば、来年度冒頭に政策金利は0.75%になっているとの予想もある。

こうした見方はいずれも中立金利を意識したものだ。4月展望リポートで日銀は、中立金利導出の前提となる日本の自然利子率についてマイナス1.0―プラス0.5%の範囲と示した。もし、このレンジの下限マイナス1%に物価目標2%を足すと、中立金利の下限は1%になる。

決定会合で議論された展望リポートでは、生鮮食品およびエネルギーを除く消費者物価指数(コアコアCPI)の前年度比上昇率が26年度にかけて2%付近で推移するとの予想が改めて示された。

植田総裁はこれまで「見通し期間後半について、見通し通りであれば政策金利もほぼ中立金利の近辺にある」と述べてきたが、31日の会見ではこの発言を踏襲せず、「政策金利が中立金利付近に行った時、どこでストップするかは大きな課題として残っている」と話し、ターミナルレートがどこになるのかは「走りながら考えている」と語った。

<金利水準上がれば増す難度>

今後の利上げは、金利水準が高くなるに従って難しさが増しそうだ。0.5%は前回の利上げ局面のピーク、0.75%は中立金利の下限が迫り、金融緩和から金融引き締めへの局面転換を見据える水準となる。

日銀では、政策金利が中立金利の下限に迫ってくれば、景気の良好なモメンタムが利上げの必須条件になるとの声が出ている。この点は0.25%への利上げ判断に当たって、個人消費を示す経済指標の明確なピックアップまで待たなかったのと対照的だ。

日銀が0.5%を上回る水準に利上げすると「日銀の収益が悪化し始めるのではないか」(金融機関)との声もある。

大和総研の中村文香研究員によると、日銀が保有する長期国債の残高579兆円の表面利率は平均で0.57%。これに対して、所要準備残高を除く当座預金残高は約536兆円で、日銀当預の超過準備への付利金利が0.62%を超えると、利払い額が利息収入を超えることになるという。

植田総裁はこれまで「日銀の財務配慮のため必要な政策が妨げられることはない」と述べてきたが、日銀の収益性が悪化を始めた場合には国会での追及が一段と激しくなりそうだ。

<米大統領選、市場動向もリスク>

日銀の3月と7月の利上げ決断の背景には、海外経済の緩やかな成長もあった。しかし、11月の米大統領選は米経済や日本経済の先行きも左右しかねず、日銀でも警戒されている。

段階的な利上げが日本経済や物価、マーケットに思わぬひずみを生むのではないかとの警戒感も日銀では出ている。長くデフレ経済が続いた結果、段階的な利上げは絶えて久しく、さまざまなデータの蓄積がないのも事実だ。利上げの決断に失敗は許されず、慎重な対応が必要だとの声が、日銀では出ている。

野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミスト(元日銀審議委員)は今後の政策運営について「経済・物価動向ともに不確実性が高いため流動的だが、年内に1回、年明けに1回追加利上げして、1%手前の水準が最終到達点ではないか」と指摘する。「金融市場の波乱など経済・物価情勢が下振れる場合には、マイナス金利の復活ではなく、国債買い入れの拡大など量的政策で対応する公算が大きいとみている」としている。

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