焦点:コロナワクチン1人40ドル、米政府の契約が世界の指標に
ロイター / 2020年7月31日 12時30分
7月23日、米政府はこのほど製薬大手のファイザーとドイツのバイオテクノロジー企業ビオンテックから、1億回分のワクチンを約20億ドルで取得する契約を結んだ。1人当たり約40ドル。製薬業界のアナリストの間では、他のメーカーもこれに近い価格設定を求められる可能性が高いとの見方が広がっている。写真は7月15日、ボスニア・ヘルツェゴヴィナのサラエボで撮影(2020年 ロイター/Dado Ruvic/Illustration)
Carl O'Donnell
[23日 ロイター] - 新型コロナワクチンの価格にこのほど1つの指標が示された。
米政府は22日、製薬大手のファイザー
今回の契約は、ワクチンが承認されればというのが前提。1億回分のワクチンを1回あたり19.50ドルで調達することで合意した。
投与は1人につき2回行われる可能性が高く、1人当たり39ドルという計算になる。年1回のインフルエンザワクチン接種のコストとほぼ同じだ。有効な新型コロナワクチンの想定価格について、初めて具体的な目安を提供した。
製薬会社にとっては、新型コロナから人々の命を守る使命から利益を得られる可能性に道が開けた。新型コロナの犠牲者は世界全体で約62万人、その約4分の1が米国だ。
ファイザーとビオンテックは、今月開始予定の重要な大規模な臨床試験で安全性と有効性が証明されるまで、米政府から支払いを受けられない。米国を含めた各国政府は、コロナワクチンの開発を支援するため製薬会社と契約を結んでおり、なかには一定量の提供を保証するものもある。今回の契約は、ワクチンが完成した場合の価格の大枠を初めて示すものとなった。
公益医薬品センター(Center for Medicine in the Public Interest)のピーター・ピッツ会長は、インフルエンザワクチンの平均価格が約40ドルとした上で、「これと比較すると悪くない。合理的な範囲に十分収まっている」と話す。
みずほのバイオテクノロジーアナリスト、バミル・ディバン氏は、有力なワクチン候補は安全性・有効性という点でどれも似通ったデータを示していると指摘。どこか1社が他社より大幅に高く値付けすることはできないだろうと予想する。
世界経済に深刻な打撃を与えている感染症の大流行を克服するには、有効なワクチンが必須だと多くの専門家はみている。ワクチンは数十億人分が必要であり、製薬各社には巨額の利益を上げることは控えるべきというプレッシャーが相当かかっている。
SVBリーリンクのアナリスト、ジェフリー・ポージェス氏は、「(1人分で40ドルなら)製薬各社は確実に利益をあげられるだろう」と話す。地域によっては粗利益率60―80%になる可能性があるという。
だが、粗利益率には研究開発コストは反映されておらず、ファイザーによれば、同社のワクチンには最大10億ドルの研究開発コストがかかる可能性がある。
アナリストや薬価に詳しい専門家によれば、今回の価格は他の一般的なワクチンと同等であり、ニーズの切実さを考えれば、各国政府にとっては悪くない条件だという。
ポージェス氏は、「(米政府の契約は)新型コロナワクチンの価格設定という点で重要な指標になる」とした上で、ワクチンを開発する企業は世界中で同一の価格設定をめざすことになる可能性が高いと説明する。
ファイザー、モデルナ
各国政府や財団、基金などは有望なワクチンを確保しようと躍起になっているが、最終的に開発に成功すると保証はない。
ジョンソン&ジョンソン(J&J)
J&Jなど一部の製薬会社は、流行が広がっている間は利益の出ない価格でワクチンを販売する予定だと発表している。J&Jは価格の詳細については明らかにしていない。
アストラゼネカ
しかし、アストラゼネカは開発が失敗に終わった場合でも、この契約金で研究開発コストを埋め合わせることができる。
(翻訳:エァクレーレン)
*記事の内容は執筆時の情報に基づいています。
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