アラスカLNG開発、日本が支援の可能性議論 トランプ米政権が関心
ロイター / 2025年1月31日 19時20分
トランプ米大統領が意欲を示す440億ドル(6.8兆円)規模のアラスカ州のガス開発計画に、日本政府が支援する可能性を議論していることが分かった。写真はアラスカ州のケナイ湖。2021年11月撮影(2025年 ロイター/Shannon Stapleton)
Tim Kelly Yukiko Toyoda John Geddie
[東京 31日 ロイター] - トランプ米大統領が意欲を示す440億ドル(6.8兆円)規模のアラスカ州のガス開発計画に、日本政府が支援する可能性を議論していることが分かった。米国の貿易赤字を問題視する新政権との摩擦を防ぐ狙いがある。事情に詳しい関係者3人が明らかにした。
石破茂首相は近くトランプ大統領と初めて対面で会談する見通しで、日本の関係者らはトランプ氏が同計画を議題にする可能性があるとみている。トランプ氏は、同計画が米国の繁栄と安全保障のために重要だと述べている。
同計画はアラスカ北部のガス田と南部の港をパイプラインで結び、液化天然ガス(LNG)をアジアへ輸出しようというもの。パイプラインは800マイル(1300キロ)に及び、日本側には実現性を疑問視する声がある一方、米側から話を持ち掛けられた場合は検討していくことを伝える用意があるという。
関係者の1人によると、日本側は米国の対日貿易赤字560億ドルを削減し、トランプ政権から関税を課せられるリスクを払しょくしたい考え。米国からのLNG購入拡大、防衛力の増強、対米投資の強化といったトランプ政権と向き合う上でのカードの1つとして検討されているという。
ロイターは米ホワイトハウスと日本の外務省にコメントを求めたが、いずれも回答を控えた。
<日本への言及、ほぼなし>
トランプ大統領は1月20日の就任当日に多くの大統領令に署名。その一つに、「アラスカのLNGを米国の他地域と太平洋地域の同盟国に販売、輸送することを含め」アラスカの資源の潜在能力を解放することを約束するとの内容が含まれている。
トランプ氏は同プロジェクトを、安定的なエネルギー供給を模索するアジアの同盟国とアラスカ双方にとってプラスと位置付けている。しかし、日本はすでに十分なLNGを確保している。日本企業は2023年度、国内消費量の半分以上に当たる約3800万トンを他国へ販売した。
それでも、アラスカの計画が実現すれば、日本がLNG輸入量の約1割を依存するロシアのほか、中東から調達先を多様化するのにつながる可能性がある。
石破首相は31日の衆議院予算委員会で、日本は化石燃料への依存を減らす必要があるものの「安定的なエネルギー供給というものに対して、米国に要請すべきことはあると思っている」と述べた。アラスカのプロジェクトを含め、具体的な内容には踏み込まなかった。
政府関係者らはロイターの取材に、石破首相はトランプ氏との会談でアラスカへの投資を含めてLNGに関する確約はできないだろうと強調した。いかなるディール(取り引き)も価格が妥当であることや、日本側に転売を認めるなどの柔軟性が含まれている必要があると、前出と別の政府関係者は説明した。
大統領に返り咲いたトランプ氏は、カナダやメキシコ、中国への関税を公言しているが、日本との経済、安全保障関係についてはほとんど言及していない。しかし、日本にとって関税問題は重要なアジェンダ(議題)となっている。日本は米国の主要な同盟国であり、最大の投資国だが、1期目のトランプ政権では鋼材への関税や在日米軍の駐留経費などを巡る要求に揺さぶられた。
<トランプ氏の歓心>
トランプ氏の「身内」とさほど親密な関係を持たない石破政権は、ビル・ハガティ上院議員や保守系シンクタンクのハドソン研究所のケネス・ワインスタイン日本部長など、米国の議員や政策専門家に助言を求めている。
ワインスタイン氏はロイターの取材に、米国とのエネルギー関係を強化し、アラスカの計画を真剣に検討すべきと日本側に助言したことを明らかにした。ハガティ氏はロイターの取材に回答しなかった。
2016年の当選後にトランプ氏の政権移行チームに入った経験がある東京在住の実業家アド・マチダ氏は、日本がLNG購入を増やし、アラスカ計画への投資を申し出ることがトランプ氏の歓心を勝ち取る「おそらく最も簡単な」方法になるだろうと述べた。
マチダ氏はロイターの取材に、「トランプ氏は日本が何をしてくれるのかを知りたがっている」と話し、日本政府当局者に同提案について話したことがあると明らかにした。
LNGプロジェクトを管轄する州営のアラスカガスライン開発公社(AGDC)の広報担当者は、日本のエネルギー業界関係者と同計画について話し合ったとしたが、具体的な内容は明らかにしなかった。
トランプ政権1期目で承認されたこのプロジェクトは環境保護団体からの反対を受けたものの、20年に連邦エネルギー規制委員会の承認を受け、22年に最終的な法的承認を得た。
AGDCは先週、プロジェクトを推進するため米建設大手グレンファーンと合意に達したと述べた。
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