ソニー・ホンダ連合がEV開発に生かすプレステの知見「移動に新たな価値をつくる」 出遅れ挽回へトップが語った勝算
47NEWS / 2023年5月29日 11時0分
電気自動車(EV)の販売が世界で拡大している中、出遅れが目立つ日本勢の中で話題をさらったのが、ソニーグループとホンダの協業だ。ともに戦後間もない時期に町工場から出発し、世界へと羽ばたいた日本を代表する企業だ。変化への思いに共鳴し発足した共同出資会社のソニー・ホンダモビリティは、2025年にEV「アフィーラ」を発売する方針だ。後発組の老舗企業連合に勝算はあるのか。犬型ロボット「aibo(アイボ)」復活などソニーの人工知能(AI)やロボットの開発をけん引し、ソニー・ホンダモビリティ社長に就いた川西泉氏に聞いた。(共同通信=新井勇輝、佐藤拓也)
▽中国市場が急成長、世界販売の6割以上に
まずEVの世界市場がどうなっているのかをおさらいしよう。調査会社マークラインズによると、2022年の電気自動車(EV)の世界販売台数は約726万台となり、前年比66・6%増えた。ガソリン車を含む市場全体(約7621万台)のうち、EVの占める割合は前年の5・5%から9・5%に拡大した。
EV市場が急成長しているのが中国だ。2022年には約453万台と前年から約200万台増え、世界の6割以上を占めるまでになった。ドイツや英国など西欧は約153万台で、米国は約80万台だった。日本は軽自動車のEVが好調だったが、約5万台に過ぎない。
▽トヨタ、ホンダは世界上位20社に入らず
中国市場のけん引役は現地メーカーの「比亜迪(BYD)」だ。2022年の販売台数が約87万台となり、メーカー別の世界ランキングで2位に上昇。約127万台で首位を走る米テスラを猛追している。日本でも2023年に入ってEVの販売を始めたほか、タイでは海外初となるEV工場を建設中で、海外展開を加速させている。
上海国際モーターショーに出展されたBYDのブース=4月19日、中国上海市(共同)
メーカー別の世界ランキングで日本勢は日産自動車とフランス大手ルノー、三菱自動車の企業連合による約28万台の7位が最高だった。トヨタ自動車やホンダは上位20社にも入らなかった。
▽新しいチャレンジへの思いを共有
ここからソニー・ホンダモビリティの川西社長の話に入ろう。EVのアフィーラの発売を予定するのは2025年とまだ先だ。テスラやBYDに加え、EVへ大きくかじを切るフォルクスワーゲン(VW)など旧来の自動車大手とどう戦っていくのか聞いた。
インタビューに答えるソニー・ホンダモビリティの川西泉社長=3月6日、東京都港区
―タッグを組んだ経緯は。
ホンダから最初に声かけがあった。(自動車の在り方を)変えていきたいという思いが強かった印象がある。ソニーも新しいチャレンジをしたいとの思いがあった。共有する方向性があった。
ホンダは車両開発や量産への知見、アフタービジネスといった力を持っている。ソニーはソフトウエアやセンシング、ネットワーク、エンターテインメントの技術を持っている。総合力で新しいモビリティー(乗り物)をつくっていくのが協業の狙いだ。
―音楽や映画を車内で提供するのか。
そういったコンテンツの提供はある程度満たさないといけないと思っている。ただ、それだけだと家の中でスマートフォンでできる。移動の中に新たな価値を考えていくことが重要だ。(ガラケーと呼ばれた)旧来型の携帯電話からスマートフォンに移行した際には大きな変化があった。それはネットワークと半導体、ソフトの進化だ。自動車はこの部分が圧倒的に足りていない。足りない部分を満たすものを搭載するのが自分たちの狙いだ。人の思考を先回りする、おもてなしができるようなモビリティーに進化していくべきだ。
スパイダーマン仕様に設定されたソニー・ホンダモビリティのアフィーラ車内=1月5日、米ネバダ州ラスベガス(共同)
▽価格競争で勝負しない、実現したい世界観を提示する
―家庭用ゲーム機プレイステーションの知見も生かされるのか。
ハードとしてのモビリティーは必要だが、最終的にはサービスを考えることになる。プラットフォームづくりや運営の知見は、プレイステーションの経験がかなり役に立つ。プレステにはレースゲームが存在しており、親和性がある。車とゲームで業種は異なるが、新たな交わりができたらいいと思う。
―アフィーラは第5世代(5G)移動通信システムでクラウドと接続する計画で、カメラやセンサーなどが45個搭載されている。その理由は。
車内だけでなくクラウド上にあるソフトも含めてトータルで考えなければならず、そこを常に意識しながら開発している。ネットワークを駆使した世界をつくることになる。カメラやセンサーは車外では安全安心のために使うことになる。車内はドライバーのモニタリング機能もあるが、楽しさにも活用できる。人などの動きを検知するセンシング機能を使って楽しさを表現したいと思っている。拡張現実(AR)はその手段の一つだ。
―販売価格や自動運転への対応は。
性能などのレベルを落として価格で勝負していく方向に最初はかじを切りたくない。技術的に十分なものにしていきたい。自分たちの実現したい世界観を提示することが大事だ。自動運転の時代は一足飛びに来るとは思わないが、自動運転が導入される時点で考えましょうといった戦略では手遅れだ。先端技術に今から関わっていくことが重要だ。
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