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鍵がかかっているはずのドアから、ジャニー喜多川氏が入ってきた…13歳で性被害「忘れようとした」過去を告白し、乗り越えるまで 「ジャニーズ性加害問題」(1)

47NEWS / 2023年6月19日 10時0分

ジャニーズJr.だった14歳頃の橋田さん(橋田さん提供)

 ダンサーで俳優の橋田康さん(37)は1998年、12歳でジャニーズ事務所のオーディションを受けた。1年ほどたった頃、コンサートの出演でホテルに宿泊することになった。眠りについた深夜、鍵のかかっていたはずの扉から入ってきたのが、ジャニーズ事務所の前社長、故ジャニー喜多川氏だった。橋田さんの足元からベッドに潜り込み、マッサージが始まった―。
 喜多川氏の性加害について、ジャニーズ事務所は5月、めいに当たる藤島ジュリー景子社長が被害者やファンらに謝罪する動画と文書を発表した。ただ、事実認定については当事者が故人であることを理由に「確認できない」と避けている。実態はどうだったのか。(共同通信=前山千尋)


東京都港区のジャニーズ事務所


 ※ジャニーズ性加害問題については、記者が音声でも解説しています。以下のリンクから共同通信Podcast「きくリポ」をお聞きくださいhttps://omny.fm/shows/news-2/24-jr

 ▽先輩に打ち明けたら「おめでとう」と言われ…
 初めて被害に遭った当時、橋田さんは13歳。性交渉の知識もなく、何が起きたか分からず混乱していた。ただ、性器をもてあそばれた、湿った感触を覚えている。終始無言だった行為が終わり、喜多川氏が部屋からいなくなると、バスルームに駆け込んだ。体を洗い流しているうちに涙があふれ出した。
 翌朝、部屋にやってきた喜多川氏からバスルームで1万円を渡された。「会話もなく、これって感じで。自分の価値が1万円なんだなってショックでしたね」


ジャニーズJr.だった14歳頃の橋田さん(橋田さん提供)

 その日、舞台裏で先輩に、喜多川氏が部屋に来たと打ち明けた。返ってきた言葉は「おめでとう」。困惑したが「これから人前で、笑顔で振る舞わなきゃいけないから元気づけようとしてくれたのかな」。落ち込む気持ちを何とか前向きにしたかった。
 事務所に在籍したのは6、7年間。被害に遭ったのはこの時と合わせて2回だ。最初の被害の後は、身を守るために「試行錯誤」した。
 公演でホテルに宿泊する際は人がいて騒がしい部屋を選び、眠らないように気を張った。喜多川氏の家に行くこともあったが、いつも泊まらずに帰った。
 被害を「なかったことにしたい」と思う一方で、普段の喜多川氏は優しく、おじいちゃんみたいな存在だった。コンサートのリハーサルで周囲の空気がピリピリとするような時も、喜多川氏がやってくると場がなごんだ。性加害を除けば、多くのスターを輩出したプロデューサーとして尊敬している。
 高校を卒業する頃、ジャニーズ事務所を退所すると決め、被害に遭ったことを親に打ち明けた。親は多くは語らず「苦しかったね」と涙を流した。
 「親も応援してくれていたので、自分たちを責めたんじゃないか。その思いを想像すると今も胸が苦しい」


インタビューに答える橋田康さん=5月19日

 ▽「ジャニーズだけじゃない。同じ思いをする人をゼロに」
 ジャニーズ事務所を離れてからも、ふとした瞬間に過去が脳裏をよぎって落ち込んだ。自分のことを「汚い」と思うこともあった。気心の知れた人に被害を話せるようになったのは、30歳を過ぎてからだ。
 人に打ち明ける中で、優しい言葉をかけてもらったり、支えてくれる人が現れたり、そうした人たちに助けられ、だんだんと乗り越えてきた。
 現在は芸能プロダクションの経営者でもある。長く続けてきたエンターテインメントへの思い入れは強く、精神的に苦しい時も、人前で踊ることで生きる力をもらった。


インタビューに答える橋田康さん=5月19日、東京都渋谷区

 被害を公にすることなど考えたこともなかった。過去を「忘れよう忘れようとしてきた」からだ。しかし、週刊誌で顔を出し、実名を公表した上で明らかにした。「性被害者」とレッテルを貼られることにつながり、今後の芸能活動にプラスにならないことは重々承知している。それでも公表したのは、社会から性被害をなくしたいからだ。
  「ジャニーズだけじゃないと思う。芸能界も。それ以外も。(自分と)同じ思いをする人をゼロにしたい」


元ジャニーズJr.のカウアン・オカモトさんと橋田康さん(左下)を招き、国会内で開かれた立憲民主党のヒアリング=5月16日

 ▽「うやむや」がファンやタレントを苦しめる
 橋田さんは5月、日本外国特派員協会で記者会見を開き、児童虐待防止法の改正を求めて署名活動を始めたと明らかにした。現在の法律は、虐待の行為者を「保護者」に限定しているため、第三者による加害の未然防止や被害の早期発見につながらない。活動は同じく被害を訴えているカウアン・オカモトさんや二本樹顕理さんらと一緒に行う。
 被害を受けた人に向けた連絡窓口を設置したことも公表した。「同じ被害に遭った人間として、私が皆さんの話を聞いて事務所に届けたい」
 藤島社長は、おじによる性加害を「知らなかった」としているが、橋田さんはいぶかしむ。「内部でうわさがあった。目を向けなかったことはあったとしても、知らなかったということはなかったのではないか」
 うやむやにしたままでは、この問題が長引き、結局はジャニーズ事務所に所属するタレントや応援するファンを苦しめることになるのではないか。「ジャニーズ事務所はこの問題と向き合い、早く再出発してほしい」


児童虐待防止法改正を求める署名を与野党に提出後、取材に応じる元ジャニーズJr.の(左から)カウアン・オカモトさん、橋田康さん、二本樹顕理さん=6月5日

【連載第2回はこちら】「ジャニーさんに食われるぞ」13歳の自分には忠告の意味すら分からなかった
https://www.47news.jp/9480607.html

【インタビュー動画はこちらから】
https://www.youtube.com/watch?v=ZbuA0AwstlU

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